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稀によくあるラノベのような・・・  作者: 神崎 かつみ
1/1

稀によくある即売会の日常

はじめまして!

神崎 かつみと申します~

そこはかとなく作品を投下する気まぐれ字書きです。

実は私自身も同人誌作家だったりもします。


絵を描き字を書き~創作活動が大好きな自分ですが、いかんせん気分屋(自分でイウナ)

頻度は低いですがどうぞお楽しみいただければ幸いです。

「パパ!」

そう言呼ばれ、俺は見知らぬ女の子に抱きつかれている。

うん、ナニがなんだか分からない。

もちろんオレ自身も分からない。


なんの変哲もない会議用のテーブルを挟み、

オレは可愛らしい女の子に胸を押し付けられ、

ナゼだか分からないが抱きつかれている。


いや、これはこれで「なんてエロゲ?」とか言いたくなるシチュエーションなのだが…決して嫌ではない。

むしろ「ありがとう」と叫びだしたい!


『稀によくあるラノベの様な――』


「んぉ!ちょっ!はるるん氏!」

「どうされました?ぽぽんサン」

暑い夏の日、脂ギッシュないかにもな方々が

その少女を目で追っていた。

「ちょっ運営仕事すれ!って感じの女子が!」

「おぉ…アレはアウトでしょ?」

「いやぁでもアレはアレで眼福」

「ローアングラーなカメ子突撃すれ!」

もちろん当の少女には、聞こえない音量で盛り上がる脂ギッシュ。

「アレは何のコスでしょうな?」

「う~ん、なんてエロゲ?」

そんな会話を他所に少女は、さも当たり前のように歩を進める。

時折パンフレットとスマホらしき機器に目をやりながら、ずんずんと、

そして堂々と少女は歩を進めるのである。


騒がしく、賑やかで、そしてアツく

天井の高い大きな…だだっ広い会場で――

【彼】は腕組みして気持ち良さそうに舟を漕ぐ。


「…ぱぃ」

あぁ実に可愛らしい声が聞こえる。

「…んぱい」

徐々に覚醒する意識の中、心地好い可愛らしい声が【彼】の耳に届いていた。

「先輩ってば!」

「…ん…ふぁぁ~」

階段を一段踏み外したときの様な、「ぴくっ! 」より「ビクッ!」という擬音がピッタリな、

そんな体の動きに合わせ【彼】の意識は浮かび上がってきた。

「んぁぁ~」

大きく伸びをして大欠伸。

「お疲れですね~」

「まぁ…巫女服の可愛らしい娘が、耳元で先輩呼びで起こしてくれるとか、どんなご褒美!?って感じだけどな」

「なんなら、ほっぺにチューぐらいしましょうか?」

「なにその童貞を惨殺するようなシチュ!」

「はいはい、とりあえず時と場所は選びましょうね♪」

上機嫌で話す巫女服と、だらしのないTシャツ。

昼を過ぎ少し落ち着いた喧騒の中、二人は普段通りの会話を交わしていた。

「んで?出来ればもそっと寝かしてほしいんだけど?」

「昨晩も激しかったですもんね♪」

「…ペーパーとオマケコピー本の製本に追われてましたがナニか?」

「あんなにボクを責め立てたクセに!」

悩ましげなポーズに上目使い、その動作はカンペキである。

「わぁったから、話が進まん。俺は眠いんだよ?完売して撤収なら喜んで帰るが?」

「もぅ!ノリ悪いですよ先輩ってば!やっと三分の一程度です」

悪態をつきながらも巫女服は、律儀に報告を織り交ぜる。

「三分の一……在庫?販売数?」

「売れたのが三分の一です」

「おやすみなさい」

「あぁー!ああぁーッ!待って!寝ないでください!」

【彼】は盛大に体をシェイクされ気持ち悪く体を揺らしている、

……【彼】の気分が悪くなったわけではなく、シェイクされる【彼】の[見た目]が気持ち悪かった。


「はぁ…んで、なんで起こしたんだ?何か問題でも?」

「はい、先輩の寝顔があまりにも気持ち悪くて」

「おぃ待て」

「あはは!冗談ですよジョーダン。マイケルっぽいアレです」

「俺はジョンソン派なんだょ」

「ジョンソン?綿棒ですか?」

「………もぅいい」


睡眠不足での寝起きに他愛ない会話。

彼等の日常であり、数年続く関係である。


「あの~先輩何か[やらかし]ました?」

「は?どゆこと?修正は問題無いし、提出もしてる…受付のお姉さんの胸元ガン見したぐらいか?」

「オマワリサンこちらです!そして今日の受け付けはお兄さんです。業が深いですね」

「すまんテキトー言った。マジでなんもしてないんだ」

「え~…さっき運営スタッフさんがですね…」

「え?マジで?なに?なにしに来たんだ?」

「ちょーっと怖い顔して「樟葉レオさん居ますか~」って来ましたよ?」

「げっ…マジでか、なんかしたっけなぁ?」

「なんでもレイヤーさんが先輩を探してるとかなんとか」

「は?なにソレ?俺オマエ以外ってかオマエの知り合い以外レイヤーに友達居ないぞ?」

「はい、友達居ないアピール来ました!」

「いやソコどうでもいいから、その俺探してるレイヤーがなんだって?」

「ズバリ注意勧告?ですかね?」

「は?意味が分からんのだが?」

「いやぁ~…露出が…アレなみたいで」

「露出狂かよ!ってか、そんな危ないレイヤーに知り合いは居ねぇよ!」

「まぁ…私の友人・知人・レイヤー仲間にもその手の人は居ませんね」

「クロあたりが海パンいっちょで歩き回ったんじゃねぇの?」

「あぁ…ありえますね、黒羽さんあたりならやりそうですけど、黒羽さんなら探すまでもなく

ココに来そうですし、先輩テル番とかアドレス交換してるでしょ?」

「…とりあえずライン入れとくは「早まるな!自嘲しろ!」っと…」

【彼】は手慣れた操作でスマホをポチポチと数秒。


――――ぼこッ!


【彼】はその瞬間太くて弾力がある「ナニか」に後頭部を叩かれていた。


「わぁぁ!めっちゃ可愛い!!」

そう言って巫女服がゆるキャラっぽいナニかに抱きついていた。

ゆるキャラっぽいナニかは意味不明な動きでソレに応え、今度は短い脚(?)で【彼】に蹴りを見舞っていた。

「くッ!やめろ!貴様クロだろ!」

見た目に反して、ゆるキャラもどきから低い声が聞こえてくる。


「だぁれが海パン一丁で歩き回るか!このクズがぁ!」

ゲシゲシゲシ…ここでローキック(?)の連打が火を噴く!威力も見た目も微笑ましいのだが。

「うぉ!おい!やめろクロ!それにソコのヨシノも同罪だ!」

「サクラちゃんは可愛いから許す!オマエダメ!きもいから!」

「ちょッ!まてコラ!サラっと人をディスるのヤメロ!」


午後は14時少し手前――

そこかしこに似たような情景を繰り広げ、騒がしく、賑やかで…そしてアツい夏


「はぁぁ…寝起きにハッスルさせんなよ…ったく」

「いやオマエが悪い」「先輩が悪いです」

「綺麗にハーモニー奏でてんじゃねぇよ!んで運営様は何の用だったんだ?」

「運営?なんだ?レオっちなんかやらかしたか?」

「それがですね…先日と言いますか朝までボクを…」

「よしコロス。今コロス。でも恥じらうサクラちゃんもうちょい愛でたい所存!」

「めんどくせぇ…ちゃきちゃき説明してくれよヨシノ」

「えぇ!?あの激しい夜を事細かに!?」

「おい。遺書の準備は十分か?この変態王!!」

「だぁぁ!クソめんどくせぇ!だからだな…」

ようやく【彼】がクロこと黒羽に事情を説明し終えると

「あぁ!アレか、さっき見たぞエロい姉ちゃん。多分運営のソレだわ」

「はぁ?女なのか?俺はこっち方面に女の知り合いとか居ねえぞ?

ヨシノの知り合いって線は無いのか?」

「ん~サクラちゃんの知り合いなら俺もある程度知ってそうだが、見ない顔だったな」

「はい、ボクの知り合いの方ならボクを飛び越えて先輩を探すことは無いと思いますよ?」

「ますます分からん…ヨシノの知り合いでもなく変人クロでもない…詰んだ」

「いうかオマエけしからんな!サクラちゃん侍らしておいて、あんなエロかわいい娘まで!」

「いや待てマジで知らねえし…ってか可愛いのか?おっぱいなのか?」

「うむ。見事なおっぱいだ!しかも挟めるレベルのおっぱいだ!」

健全な男子トークに花を咲かせ、ゆるキャラもどきのコスプレをした黒羽がクネクネと動く。

実に気持ち悪いのだが【彼】もまたちょっと人にお見せできないレベルで破顔していた。

「ねぇ?お二人ともボクに喧嘩売ってます?今なら言い値で買いますよ?」

「え!?あッ!そうそう俺まだ行くところあったわ!すまんレオ!骨は拾ってやる!」

ゆるキャラもどきが爽やか(?)に右手を上げて脱兎のごとく…いや結構普通に去って行った。

「…まったく先輩も黒羽さんも、おっぱいおっぱいと公衆の面前で…ブツブツ」

「なぁ…ヨシノ」

「なんですか先輩」

「諦めろ」

「…あの先輩?ドヤ顔でなに言ってるんですか?真面目に腹立つんですけど?」

「ふん!賭けてもいい!ヨシノの胸が成長することなどありえん!何故ならおmぇ…ふがッ!?」


「パパ!」

「ふがッふぉご!?」

「やぁん!パパってば若ーい♪あぁんもぅやっと会えた~!」

「あのー…お取込み中申し訳ありません。どちら様で先輩とのご関係は?」

「は?あなたバカなの?さっきから「パパ」って言ってるの聞こえないの?」

「先輩は貴女ぐらいの娘さんが居るような年齢じゃありませんし、金銭的なパパさんができる人でもありません」

「いうかこの巫女オンナ誰?まさかママ…なワケないよね~あはは」

「あの…初対面で人の胸元見て笑い飛ばすとか宣戦布告ですか?いえ…この場合下剋上ですか?」

竜虎相打つ…いや、控えめに言ってもリスとハムスターが牽制し合っている程度の微笑ましいモノだが…

「ぶはッ!良いお胸でした!じゃなくて!」

「うわー先輩マジで引きます」

「やん♪もっと埋めていてもいいわよ♪」

「では!お言葉に甘えて!」

「まてぇい!先輩話が進まないのでやめて下さい」

「がはッ…良い左持ってるじゃねぇか…いうかお前がソレ言うんじゃねぇ…」


「はぁ…言うかソコの裸Yシャツさん、とりあえずコレ羽織って下さい」

ごそごそと荷物を漁り芳野がパーカーを取り出して謎のコスプレイヤー(?)に手渡したが

何故だかキョトンと首を傾げ、自分の携帯の様なもので自分を映し出した。

「…へ?」

「まぁ…そうだな、その恰好じゃ確かに運営もすっ飛んでくるわ、って自撮り?撮ってやろうか?」

「…な…なななな…」

「な?」

【彼】と芳野がキレイにハウリングした瞬間

「なんじゃこりゃぁぁぁぁーーーーーーーーッ!」

耳をつんざく大声に周囲の人間が一斉に彼女に注目したが、数十秒でその静けさは掻き消えた。

件の彼女は大粒の涙を目じりに溜めてしゃがみこんでいる。

「ほら、とりあえずコレ羽織ってください衣装だけどスカートもありますから、ね?」

「うッ…うぅ~ありがと…ぐすッ…」

「はい。泣かないでください、ちゃんとお話し聞きますから」

「アンタ…良い人ね……なまえ…名前は?」

「私は染衣 芳野【ソメイ ヨシノ】あだ名はサクラちゃんですよ♪」

「いやコスネームだろお前は…」

「初対面でいきなりリアル名前バレとか無いですよ~ねぇ?樟葉レオ先輩♪」

「ヨシノ…?ヨシノ?どこかで…」

彼女は呟くように何度か「ヨシノ」と復唱していたが何度か頭をぶんぶんと横に振って

溜息を二三度ついて【彼】と芳野に向き合った。


「すぅ~…はッ!はじめまして!私は九重千尋【ココノエ チヒロ】九重誠士郎と八尋の娘です」

「は?」

「へ?」

「母、八尋に会う為にこの時代にやってきて、まずパパの誠士郎に接触する為ココに来たの」

「先輩?ご親戚に同じ名前の方が居るのですか?それとヤヒロさんって誰ですか?」

「まてまて待て!確かに俺は九重誠士郎だ!だが八尋ってのは…八尋って知り合いは…一人しかしらねぇ…」

「あら先輩ってば浮気者ですね、そのお名前は心当たりがあるんですね?」

「あぁ…あるよ」

誠士郎は俯いたままゆっくりと答える。

千尋はじっと誠士郎を見つめ先を待ち、芳野はいつもの調子で誠士郎を肘でつんつんしていたりした。


「母さんの名前が『八尋』だ、それ以外の『ヤヒロ』さんはしらねぇ…」

「あ…」

誠士郎の言葉に借りてきた猫の様に芳野はシュンとなり口を押えた。

千尋は誠士郎にしがみつくように顔を近づけ――

「そんな…どうして!ママがお婆ちゃん?なんで?どうしてッ!」


――コミックマーケット98を閉会いたします――

そんなアナウンスと共に会場内が拍手で埋まっていった――

最後までお読みいただいてありがとうございます。

「稀によくある~」の1話です。

ゆっくりとですが続きを書いていきたいと思いますので、

どうぞお付き合いお願いいたします!

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