【クールな勇者とやさしい魔王8】終わらない世界の終わり方
※単独でも読める物を目標に書いていますが、シリーズを通して読んで頂けたら嬉しいです。
シリーズURL⇒http://ncode.syosetu.com/s6551d/
ノリと勢いだけで、どうにかこうにか続けてきた【クールな勇者とやさしい魔王】の完結作。
視点の移り変わりが激しいですが、読みやすい様に心がけましたので、最後までお付き合い頂けましたら、幸いです。
「・・・ふぅ。今日の政務もこれで終わりか。
オヌシのお陰で、ワシらは平和にやれておる。
じゃが、それが犠牲の上での事だと考えると、素直に喜べん。
などと、弱気は言っておれんな。
戻ってくるという言葉を信じるしかないのか・・・?」
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「やぁ。って、どうしたんだい?そんなに驚いた顔して。
望み通り、戻ってきてあげたんだ。
これで、魔族には危害を加えないんだよね?」
「――――――」
「ならいいんだ。
反故にするようだったら、わかるよね?」
「――――――」
「あぁ、そんなに怯えなくてもいい。
君達が約束を守ってる間は、大人しく実験にも付き合ってあげるから。
それじゃ、さっさと行こうか?
ボクに残されてる時間は、あまり長くないんだから」
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「そんな事はわかっておる!
じゃから、採掘場の予算を多めに出してるではないか!
アヤツのくれた時間を無駄にするでない!!」
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「あぐっ!っかは!?・・・はぁ、はぁ。
今回の薬も大した事はないんだね。
いや、ボクの感覚が鈍くなっただけなのかな?」
「――――――」
「はいはい。黙りますよ。
ちょっとくらい、お喋りに付き合ってくれてもいいじゃないか」
「――――――」
「なんだい?もう次の実験に移るのかい?
まぁいいけど、ボクが死なない程度に頑張ってくれ」
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「何度も言うておろう。
魔族との同盟は、オヌシらの害にはならん。
むしろ得になるはずじゃ。
なにせ、レアメタルが大量に確保できるんじゃぞ?
であらば、みすぼらしい兵も見れるようになると思わんか?
まぁ、交渉相手は他にもおる。
オヌシらが頷かんのであれば、そちらにいくまでじゃな」
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「あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
・・・・・・・・・・っは!?
・・・・・・っぐ!あがっ!?
・・・はぁ、はぁ」
「――――――」
「・・・何か・・・言った、かい?
どう、にも・・・耳の調子が、悪い、みたいだ」
「――――――」
「なんで謝ったりしてるのさ。
君は職務を果たしているだけなんだろう?
なら、何も謝る事なんかないんじゃないかな?」
「――――――」
「それでも、だって・・・?
なら、最初からやらなければ良かったんだ。
そんな自己満足にボクを巻き込むな!!
なんだ?言葉の通じるモルモットは初めてなのかい?
それで、あるかもわからない良心が痛んだとでも?
ふざけるなよ!君らの都合で、ボクという化物を造ったんだ!
だったら、最期まで化物として扱えよ!
今更、そんな言葉をもらっても、ボクが惨めじゃないか!!
最期まで面倒を見きれないなら、最初っからこんな事するなよ!!!」
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「よくやった!!
これで、隣接している国全てと同盟が果たせた!
今日は無礼講じゃ!宴の準備をせよ!!」
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「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ。
とうとう、目が霞んできたか・・・
残り時間は、もう、ホントに少ないって事かな?
まぁ、それでも、キミの役には立てたよね・・・?
あぁ、どうしてだろう?
キミの事は考えない様にしていたんだけどな・・・」
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「はぁ・・・。
オヌシが犠牲となった事は隠しておるが、限界が近いのかもしれんの。
なにせ、連日『勇者に会わせろ!』と詰め寄られるくらいじゃ。
最初はあれ程、毛嫌いしておったのに、おかしなものじゃな。
ワシはオヌシの望んだワシであれておるか・・・?
いかんな、オヌシを思い出すと止まらなくなってしまうわ」
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「キミは今、何をしているのかな?」
「オヌシは今、何をしておるのじゃ?」
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「・・・ぅ・・・・・・ぁ・・・ぁ?
・・・あぁ、もう、終わりが・・・大分、近いみたいだ・・・
まぁ・・・がんばった、方・・・だよね・・・・・・?」
「・・・ぃ!・・・んか!?」
「・・・・・・?
なにか・・・聞こえた・・・?」
「・・・けと言うて・・・うが!
キ・・・らの国なぞ、とうに滅んで・・・じゃ!」
「ふふっ・・・なんだか、懐かしい、ね・・・
幻聴だと・・・しても・・・・・・・
キミの・・・声で、送ら、れる、のも・・・、悪く、ない・・・かな?」
「・・・ここにおったか!!
っ!?なんと・・・なんと、惨い・・・」
「なん、だい・・・?
今日、の・・・幻聴は、ずい、ぶんと・・・ハッキリ、聞こえる・・・ね?」
「幻聴などではない!!
ワシじゃ!ワシは、たしかにココにおるぞ!!
じゃから、目を開けよ!ちゃんとワシを見るんじゃ!!」
「・・・・・・あぁ、キミ、か・・・
ダメ、じゃないか・・・。
仕掛けるなって・・・言った、ろ?」
「あぁ!あぁ!じゃから堪えたさ!!
オヌシの言葉がなければ、立場なぞ捨てて、すぐに駆けつけたとも!
じゃがそれでは、オヌシが望んだワシではない。
そう思ったればこそ、筋を通したのじゃ!」
「・・・・・・?」
「よい。そのような事どうでもよいのじゃ。
オヌシのくれた時間を活用した。ただ、それだけなのじゃから」
「なん・・・だ・・・
やれば、できるじゃ・・・ない、か」
「当然であろう!ワシは魔王じゃぞ?偉いんじゃぞ?」
「ふふっ・・・そう、だった・・・ね。
でも、ごめん・・・
キミの、声も・・・姿、も・・・
もう、よくわからないんだ・・・・・・」
「よい!そのような事、オヌシが気にするでない!
さぁ、帰ろう。ワシらで立て直したあの場所へ」
「そう・・・だ、ね。
帰り、たいなぁ・・・・・・・・・」
「おい?どうした・・・?
目を開けんか!?ワシを見ろ!!
許さんぞ!この様な結末、断じて許さんぞ!!
ほれ!いつもの様に毒を吐いてみんか!?
ダメじゃ!オヌシが居なくなれば、ワシはどうすればよい!?
オヌシまでワシを置いて逝くのか!?またワシを独りにするというのか!?
ワシは断じて認めんぞおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
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「・・・あれから、どれだけ経ったんじゃろうな?
世界は随分と様変わりしおった。
なにせ、魔族と人族が本格的に友好関係を築いたんじゃからな。
それもこれも、オヌシが道を作ってくれたからこそなんじゃぞ?
ほれ、魔族も人族も、みな笑顔で通りを歩いておる。
侵す事無く、侵される事もない。
ワシが望み、オヌシが支えてくれた世界が今、目の前にあるんじゃ・・・
オヌシもこの光景を見ておるか・・・?」
「・・・・・・あいた!?なにをするか!」
「人を勝手に殺さないでくれないかな?」
「そ、そんな事はしておらんじゃろ?
ただ、ちょっと感傷的になっておっただけじゃ!
・・・それより、身体の方はもう大丈夫なんじゃな?」
「またその話?これで何度目なんだか・・・」
「し、仕方なかろう!?
あの時、たしかにオヌシは死んだんじゃからな!!」
「まぁ、あまり楽しい経験ではなかったね。
でもまぁ、実験ってのは、何が起きるかわからないもんだね」
「なにを暢気に言うておる!
あの時は奇跡としか言い様がない程、偶然が重なったんじゃ。
あんな想い、二度とゴメンじゃからな!!」
「うん。それはゴメン。
けど、まぁ、一回死んだお陰で、体調は頗るいい。
それに、キミと同じ魔族になったんだ。
これで、キミも遺されずにすむんだから、よかったんじゃない?」
「よいわけあるか!
人族が魔族になるなど、聞いた事がない!
長い歴史を持つ魔族の蔵書にも、その様な記述はない。
つまりじゃ!また実験と称して連れ去られるかわかったものではない」
「わかってるよ。
けど、そんな事が起きない世界を作ってくれるんだろう?」
「当然じゃ!友の為じゃからな」
「はぁ・・・。
そこで照れなければ、完璧だったんだけどな・・・」
「うぐ!?し、仕方なかろう?
恥ずかしい物は恥ずかしいんじゃ!!」
「はいはい。まったく・・・
これからもよろしくね?魔王さま」
「ふん!言われるまでもない。
こき使ってやるから覚悟せい!勇者よ!」
ここまでお付き合い頂き、まことにありがとうございます!!
どうにかこうにか、シリーズ完結までこぎつける事ができました!
さてはて、個人的には実験的側面がありつつも、お気に入りとなった本シリーズではありますが、読んで下さった皆様は、どうお感じになられたのでしょうか?
一応、このシリーズは本作で完結となりますので、これ以上お話を続ける予定はございませんが、勇者と魔王はこの後も、なんやかんやと言い合いつつも、仲良く暮らしていくのでしょう。
もしかしたら気まぐれで、この二人の事を書くかもしれませんが、その時はまたお付き合い頂けましたら幸いです。
それでは皆様、まことにありがとうございました!!