2話 ソロモンの死闘 上
月日が流れ、国際情勢の悪化によりついに戦争が始まった。
最初は破竹の勢いであった日本軍であったが、
「一年から一年半は暴れて見せる、だがその後は保障できない。」と
連合艦隊司令長官が言っていたとおりに
約一年後にミッドウエー海戦で機動部隊を失ってから、
徐々に勢いを失っていく、そして敵の反攻の部隊がガダルカナル島に
上陸した時に艦隊に出撃命令が下る。
目標はヘンダーソン飛行場への艦砲射撃である。
ここを叩いて上陸した部隊への援護を行おうというのだ。
それと同時にガダルカナル島に上陸した味方に補給を行う必要もあり
多くの艦艇が動員されることになる。
その中には第八艦隊に所属している白雪たちの駆逐隊もあった。
彼女たちの任務は輸送部隊の護衛から、自身がドラム缶に物資を詰めて運ぶ
事までしており夜間にこそこそと行われることから{鼠輸送}と呼ばれていた。
当然敵も補給を絶つために攻撃隊を送り込んでくる。
その海域の名前を冠して{ソロモン海戦}が行われるのは必至であった。
最初の戦いでは敵に大損害を与えることができたが依然ガダルカナル島の
戦局は不利のままで上陸した陸兵たちへの補給もままならぬために
護衛の艦隊をつけて輸送を行うこととなった。
初雪は僚艦吹雪とともに青葉率いる第六戦隊に属して海域の警戒と飛行場への
砲撃任務を受けていた。
「左十五度艦影あり数3、進路南西距離100(一万メートル)」
見張り員の報告に戦闘準備をする青葉の艦長であったが
青葉に司令部を置く第六戦隊の指揮官は味方部隊と思い識別信号を送った。
だがそれに帰ってきたのは砲撃であった。
同士討ちを信じる司令部は「我、青葉、我、青葉」と繰り返したが
撃ってきたのは本当の敵艦隊であったのだ。
(あれは、敵!気が付いて!)
青葉の声は届かない、見る間に敵弾が彼女に殺到する。
そして初雪を置いて僚艦吹雪は艦隊の先頭に立っていたため敵の攻撃を真っ向から
受けることとなる。
8インチ砲と5インチ砲弾が数限りなく降り注ぎ艦上構造物を破壊していく、
そして致命的な一発が弾薬庫に命中し一際大きな爆発の後には
沈みゆく吹雪の姿があった。
(初雪・・・私はもう・・・)
(吹雪!)
吹雪の轟沈を目の当たりにして初雪の艦橋は声もない。
青葉も艦橋に命中した砲弾が司令部を壊滅させ無数の砲弾が命中したため
上部構造物をほぼ破壊された状態で何とか離脱しようとしていた。
その後ろにいた古鷹は青葉をかばって先頭に立つが集中砲撃を浴びて行動不能になり
その場に取り残される。
その後ろにいた衣笠と初雪は反撃を開始した。
(吹雪の敵討ちだ!)
猛烈な射撃の応酬の末に敵軽巡と重巡に損害を与えることに成功して、
戦闘はお互いが離れたために終わった。
(古鷹!)
初雪は古鷹のそばに急ぐがすでに手遅れの状態であった。
(初雪・・・もう終わりの時が来たようだ・・・乗組員を頼む・・・)
そう言って救援にきた初雪の前で転覆沈没して行った。
(古鷹・・・貴方のことは忘れないよ・・・)
乗組員を救助しながらそう誓う初雪であった。
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