2、再びあの場所へ
俺は無事パイプ椅子をゲットし、部室に戻ろうとした。
うわ……またあの女と二人きりかよ。
あいつ顏はいいけどなんかヒドイし冷たいんだよなぁ。
そうこうしているうちに俺は部室前まで到着していた、ドアを開けると中にいたのは慶菜唯と星野空だった。
「ちょっ、なんであんたがここに居んのよ!?」
「俺はここの部員だっつーの」
慶菜は驚いた顔でこちらをジッとみてくる。
……こいつ……結構かわいいな。
そんなにこっち見られたら照れるじゃん?
「キッモ、え?何?ソラ、こいつ部員に入れたの!?ありえない!なんで私に言ってくれないかなぁー」
「別に、いちいちそんなこと言わなくてもいいでしょう?」
「ちょっと待てよ……なんでここに慶菜がいるわけ?」
「友達だからよ!」
「なんでこの部活には入ってやらないんだ?」
「あ……いや、それは別に」
そうだ、と思い出してさっき気になったことを言ってみる。
「なんでさっき学習室にいたんだ?」
ゲシッ。
「いってえええ!」
足のスネを思いっきり蹴られた。そんでもって顔を真っ赤にさせていた。
「べ、べべっべ別にあんたなんかに関係ないでしょ!?」
なんでそんなに照れる必要があるんだ……?
「私はあそこに用があるからこの部活に入れないの!わかった!?」
へいへい、と返事だけしておく。
*
翌日の昼休み。
「けーいっすけ!」
俺の名前を元気そうに呼び、俺の机の上に弁当を置いて前の人の椅子を借りて座り始めたのは、俺の唯一の友達である結城玲だった。
その容姿は一瞬見ただけでは男だと認識できないような微かな可愛らしさがある。
おそらく髪の毛のせいだと思う。
少し明るめの茶髪で、男としては少し長く女にしてみればちょっと短いなーくらいの長さ。
ちなみにこいつ、男女混合の陸上部に入ってやがる。
先輩たちとよくキャッキャウフフしてやがる。
……クソッリア充め。
「慶介?どうしたの?」
「あ、いやぁリア充マジ死ねって思ってただけ」
「なんで今!?」
……部活入ったこと言わないとな……あと星野がすげえ冷たいやつだってことも。
その時、玲が来るまで感じなかった視線をふいに感じた。
視線を感じたほうを見たら、男子2人女子2人のグループのうち1人の女子───慶菜唯と目が合った。
慶菜は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
え?何?もしかしてあいつ俺のこと好きなの?
男の子は皆そんなふうにされたら勘違いしちゃうよ?
「慶介何見てるの?」
「うわっ、あ……」
なんか一気に現実に戻された感ハンパない。
「そうだ、俺部活に入ったんだよ」
「あの慶介が!?」
「うん……星野に誘われたから」
「そっか……可愛い女の子に誘われたから……」
「俺がバカだったよ……」
俺はタメ息を吐く。
「何か……あったの?」
星野の正体を話す俺。
その間も何度か慶菜の方から視線を感じた。
……やっぱ好きなの?俺のこと。
*
俺は部室に向かうために廊下を歩いてた。
……入部して2日目だけどもうすでに部活行きたくなくなってるんですけど、ナニコレ。
とか思ってるうちに部室前。
ちょっ……近すぎねぇか?心の準備がだな……。
ガラッ。
「こんにちは」
星野は1人用ソファに座って読書をしていた。
「……こんにちは」
「えっ」
返事が返ってきた!えっえっ何で!?
「えっ、て何よ」
「返事を期待してなかったから」
「あっそう」
……99パーセントの冷たさと1パーセントの温かさで彼女はできている!
しかし、することがないのは昨日同様。変わらない。
そうだ。
「ちょっと、行ってくる」
……どこに?とか聞いてくるかなとか思ってたわけじゃないんだからね!
とりあえず俺は目的地に歩き始める。
今日は窓から差し込む光はあまり赤みがかかっておらず、時間は3時43分となっていた。
───そう、目的地は昨日と同じ学習室だ。
学習室は昨日同様鍵は掛かっていなかった。