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マリア

ニコラ博士の実験室で、マリアに命を吹き込む実験が行われる。その実験に付き合うことになったパックだった。

 ホルンとパックが、ボーラン市へ行くと言う噂はぱっとひろまった。

 パックは村のあちこちでいつボーラン市へ行くんだと質問攻めに合った。

 だからニコラ博士からおなじ質問を受けたときうんざりして言った。

「だから、まだ判りませんよ。父さんはなにも言わないし……そうだ、隣町に図書館があるってそこに出かけたな。そして町のみんなにいろいろ訪ねて歩いているな……」

 ニコラ博士はうなずいた。

「そりゃあ、調べ物をしているんだ。ボーラン市にいって、市の担当者に会って話をするため証拠を集めているんだろう。そうか、今すぐというわけではないのだな?」

「まあね」

 ニコラ博士の家である。

 パックはいつもの地下室でニコラ博士と話していた。

 ニコラ博士はがりがりと髪の毛をかきむしりながら言った。

「それなら実験を手伝ってくれ! いまならうまくいきそうなんだ」

 パックは地下室の金属の少女を見やった。

「あれですか?」

「うむ」

 ニコラ博士はにやっと笑った。

 パックの顔は興奮でかがやいていた。

「そうかあ! ついにやるんですね!」

「やるか?」

「やりましょう!」

 ふたりは勢いよく立ち上がった。

 パックはボイラーの蓋をあけ、中へ石炭を放り込み火をつけた。やがて温度が上昇し、蒸気圧が高まっていく。

 ふとニコラ博士はパックの顔を見てつぶやいた。

「そう言えば、お前まだこのマリアの身体の中は、見たことなかったな」

「ええ、そうです」

「見たいか? ん?」

 博士がこう言うときはじぶんが見せたいときである。心得ているパックはにやりと笑ってうなずいた。

「ええ、ぜひ!」

 そうかそうか、と相好を崩した博士は金属の少女の身体のあちこちを外し始めた。

 人間そっくりの人形の前半分がぱっくりとはずれ、中身がむきだしになる。

 パックは目を瞠った。

「すごいや……」

 人形の体内にはぎっしりと複雑そうな機械が埋め込まれていた。その配置は、どことなく人間の内臓を思わせる。

 胸の部分には肺を思わせるふたつのタンク、心臓そっくりの形のポンプ、腹部にはうねりくねったパイプが詰め込まれている。

「ねえ、博士。このなかに詰まっている機械はなんのためにあるんです。何の役にたつんですか?」

「わしが開発した超小型の蒸気機関じゃよ。この胸にあるのはボイラー、こっちはピストン、こっちは水タンクじゃ! 燃料を入れれば独立して動力を供給できるようになっている」

 博士の説明にパックは目を輝かせた。

 しかしニコラ博士は沈痛な表情になっていた。

「今のところロボットは人間のように動き回ったり、考えたり、話すことはできん。そんなことをどうやって実現したらいいのか研究の端緒もつかない状態なんじゃ。しかしその日のくるまで、ロボットの身体の中に将来人間と同じような機能をする機械の雛形をいれておくことは必要だと思ったのだ。

 蒸気機関と人間の内臓は似ても似つかないが、生命活動であるということでは同じ意味を持つ。人間に流れている血液が蒸気であり、ボイラーは肺、ピストンは心臓という具合にな。

 ほれ、これを見い」

 そう言うと博士はロボットの頭の外板を外して見せた。

 頭の中には脳に似た金属のスポンジが詰まっている。

「これはイリジウムのスポンジなのじゃ。いつの日か、人間の脳と同様な機械が発明された日には、ロボットの頭部にはこういう形で装着されると思っておる。ほれ、スポンジからはこのように導線が繋がっておるじゃろう? これが人間で言うなら神経にあたるものじゃ」

 博士は説明を終えると、ロボットの外板を丁寧に元に戻した。それを終えると、天井を仰ぎあこがれるような眼差しになる。

「いつの日か……ロボットは自分で考え、行動し、人間の友になる……その日を目撃することはできんだろうが、けっして夢物語ではない! なあ、パック。そんな日が早く来るようお前も協力してくれよ」

 はい、博士とパックは答えた。

「よし、それでは始めるか!」

 ニコラ博士は地下室をあちこち飛び回り、そこらのスイッチや、ボタンをつぎつぎと動かした。

 蒸気のパイプを何本も金属の少女の身体に接続していく。

 しゅうしゅう……ごとごと……。

 地下室に生気が吹き込まれる。

 送り込まれた蒸気が、少女の身体のあちこちから噴出し、白い湯気をあげている。

 パックはニコラ博士に声をかけた。

「博士、それは?」

 ニコラ博士は見慣れない装置を地下室へ持ち込んでいた。

「発電機じゃよ! この前の実験では電力という要素が抜けていた。あのロボットを始動させるためには、電力という要素が必要だと研究の結果判ったんじゃ!」

 博士はダイヤルを一杯にまわす。

 ぴゅうぴゅうという不吉な音を立て、装置の天辺にある針金にばりばりという紫電が飛び交った。

 それを見てパックは背筋に寒気をおぼえた。

「だ、大丈夫ですか……」

「わしを信じろ!」

 ニコラ博士は陽気に叫んだ。

 蒸気圧が高まっていく。

 パックは計器を覗き込み、つぎつぎと変化する指針を読み上げていった。

「圧力七十パーセント……八十パーセント……九十……博士! もうすぐ百です!」

「百五十パーセントまであげろ!」

「そ、そんな……無理ですよ!」

「いける! わしの計算では百五十七までは安全のはずなんじゃ!」

 首を傾げつつそれでもパックは博士の指示通り圧力をあげ続ける。

 ごとごとごとごと……。

 まるで地震のように地下室は揺れ始めた。

 かたかたかた……。

 台の上の金属製の少女像がこまかく振動し始めていた。金属の身体と台が触れ合う音が、かたかたという音を立てている。

 ニコラ博士は目を一杯に見開いていた。

 びゅーん……!

 発電機の電力が上昇していた。

 ぴしっ!

 電光が飛び交い、地下室のむき出しの金属に紫電が放たれた。

 ぱしっ!

 ぱしっ!

 ばりばりばりばりっ!

 ふたりの髪の毛が静電気を受けたように逆立っている。緊張と興奮で、ふたりはそのことにまったく気づいていない。

 ころはよし、とニコラ博士は発電機から伸びているコードを掴んだ。

 コードの先端には端子がついていた。

 それを台の上に横たわっている少女に近づける。

 おおきく息を吸い、博士は端子を少女の金属の肌にくっつけた。

 びりびりびり!

「うおおおおっ!」

 コードを掴んだまま博士は絶叫した。

 数万ボルトの電流が流れ、そのショックで博士は跳ね飛ばされていた。

「博士っ!」

 パックは叫んでいた。

 博士はというと、白目を剥き、完全に気絶している。

 駈け寄ろうとしたパックであったが、ふと台の上の少女に目を留めた。

 かたかたかた……。

 彼女の全身はこまかく振動していた。

 パックは目を見開いた。

 少女が起き上がろうとしていた!

 ゆっくりとその上体が持ち上がる。

 ぱん!

 ぱん!

 豆がはぜるような音を立て、彼女の全身に繋がれているパイプが弾け飛んだ。

 ばしゅーっ!

 彼女の全身から白い蒸気が湧き上がる。

 その蒸気につつまれ、何も見えなくなる。

 どうしよう、とパックは迷った。

 博士はもちろん心配だ。

 しかし彼女をこのままにしていいのか?

 ごとり……。

 固いものが床に触れる音がして、金属の少女が台の傍らに降り立っていた。

 なんと彼女はじぶんの足で立っていた!

「きみ……」

 パックはおもわず口を開いていた。

 いってからしたうちをした。

 あいてはただの金属の少女像である。

 人間ではない。

 返事など期待していなかった。

 と、少女の目が見開かれた。

 パックは驚いた。

 彼女はパックをじっと見つめている。

 そして声がもれた。

「あたし……」

 たしかに彼女は口をきいていた。

 そう言って両手をあげ、じぶんの顔にふれる。

「あたし……だれ?」

 パックはニコラ博士が名づけた少女の名前を思い出した。

「マリアだよ」

 彼女は顔をあげた。

「マリア?」

「そう、きみはマリアだ。そしておれはパック」

「パック?」

 マリアは首をかしげた。

「そう、よろしくな」

 パックは手を差し出した。

 マリアはその手を見つめ、自分の手を伸ばした。

 ふたりの手が触れ合った。彼女の手は金属なのに暖かい。蒸気のせいだ。パックはぼんやりと思った。

 マリアはパックの手を握った。

「痛え!」

 パックは悲鳴をあげていた。

 マリアの握ったちからは思ったより強く、パックの手は万力につかまれたような痛みを伝えてきたのである。

 怯えたようにマリアは手を引っ込めた。

「大変、あたし傷つけてしまった!」

 大丈夫だよとパックは無理に笑顔を作って見せた。

 そのときニコラ博士が目を覚ました。

 ううん、とうなり首をふる。

 パックはニコラ博士のところへ跳んで行った。

「大丈夫ですか、博士?」

 ぶるっと顔を左右にふり、ニコラ博士はずれた眼鏡を調整して目を見開く。

 ぼんやりとした視界が戻ったのか、かれは立ち上がっているマリアを見た。

「あれは……」

 パックはおおきくうなずいた。

「そうです、博士! 成功です!」

 むう、とひと声唸ると博士は立ち上がった。

 つかつかとマリアに近づくとまじまじと見つめた。

「信じられん……」

 パックは首をかしげた。

「どうしてですか? 成功したんですよ。マリアはこうして立っているじゃないですか」

「それが信じられんというのだ。わしはマリアを動かすための研究を続けてきた。が、このように自立させるまでは考えておらん」

 パックはさらに判らなくなった。

「どういうことです?」

 ニコラは腕をふりまわした。

「わからんのか! このロボットが何のささえもなく立っておることを。二本の足でだぞ! とても信じることはできん!」

 パックの顔色を見てあきらかに理解していないことを悟り、博士はため息をつき説明をはじめた。

「お前は自分の足で立っているからそれがどんなに困難なことかわからんのだ。いいか、人間が二本の足で立つと言うことは大変なことなんだぞ。それをなんの意識もない、人間の姿に似せたロボットにさせることはとても出来んことだ」

「でもマリアは話します」

「なんじゃと?」

 博士は大声をあげた。

「マリア」

 そう言ってパックは彼女にむけ指を立てて招いた。

 マリアは無言でパックの側に立った。

「きみの名前は?」

「マリア」

 彼女の声にどうです、とパックは博士を見た。

 博士は卒倒しそうだった。

「こ……こ、こんな馬鹿な! ありえん!」

「でも彼女は博士の研究でしょう。自分で言ったじゃないですか。いずれロボットは人間と同等の知能を持ち、会話するようになるって」

「未来の話しじゃ! 遠い、未来ならそんなこともありうるじゃろう。じゃが、いまではない。わしはその未来のため、基礎研究としてロボットをとりあえず蒸気のちからで動かす研究をしていたのだ。今日できるのは彼女が自分で身を起こすくらいのことじゃった。それだけでも十分成果があると考えていたんじゃ。自分で話すなど、わしの研究の範囲を超えておる! こ、こやつには知能がある!」

 パックはぼう然となった。

「それじゃマリアは?」

「わしの研究の成果ではない。それだけは確かだ! 第一、人間がどうやってものを見、考えるかなんて誰もわからん。蒸気のちからで……」

 そこで博士は口をあんぐりと開けた。

 蒸気のちから……とつぶやく。

「そうだ、そうかもしれん……それならホルストの身の上におこったことも説明がつく……」

 ぶつぶつつぶやくとポケットからメモを取り出しペンを走らせた。もうパックとマリアのことも念頭から消えているようだ。

 どうしたものかとパックはぼんやりと立っていた。

 と、地下室の階段の上から人影がさした。

 見上げるとホルンの顔と目が合った。

「父さん……」

 ホルンはうなずき、口を開いた。

「お前を探していたら、博士の家に行ったと聞いたものでな……。おい、明日出発することになったぞ!」

 パックは声をあげた。

「ボーラン市にかい?」

 そうだ、とホルンはうなずいた。

 ひと飛びでパックは階段を駆け上がり、叫んだ。

「じゃ、ミリィの行方を捜しに出かけられるんだね?」

 ホルンはうなずいた。

 が、ちょっとパックの背後を見て声をあげた。

「パック、お前の後ろにいるのは……?」

 え? と、パックは背後をふり返る。

 マリアがすぐ後ろにぴったりと寄り添っていた。

「マリア……きみ?」

 ん? と、ニコラ博士が顔をあげた。

 パックはマリアにニコラ博士のほうを指さして見せた。

「きみはニコラ博士のところへ戻るんだ」

 マリアはゆっくりとかぶりをふる。

「どうしてさ? きみを作ったのはニコラ博士だぞ!」

「わたしはパック様にお仕えします。そう決まっているのです」

「ええっ!」

 パックは驚いて声をあげていた。

 

 博士の一階の居間で、パック、ホルン、マリアは机を囲んで椅子に腰をおろしていた。

 博士の工夫したちいさなストーブには湯沸しが載っていて、湯がたぎっていた。

 ニコラ博士は手ずから器用に湯沸しから湯をポットに移し、紅茶を淹れていた。

「パックは砂糖が三つとミルクたっぷりだったな。ホルンさんあんたはどうだね?」

「砂糖はいらない。ミルクだけ、ちょっぴりいれてくれればいい」

「ふむ。わしは砂糖もミルクもたっぷりいれれるのが好きでな……マリア、お前はもちろん飲まんだろうな?」

 そう言うとひとりくっくと笑い出す。どうやらひどく面白い冗談を言った気になっているらしい。

 すっかり用意ができるとニコラ博士はトレーに紅茶を揃えて持ってきた。

 居間に紅茶の香りがただよい、三人は黙って啜った。

「どうもわしの思いもかけなかった出来事がおきたらしいな」

 ニコラ博士が宣言した。

 パックとホルンはじっと博士の次の言葉を待っていた。

 博士は首筋に両手をあて、くきくきと首の関節をならしていた。

 やがてぽんと両手を膝に戻し話しはじめた。

「わしはずっとロボットの研究を続けておった。もちろん、いずれロボットは人間と同じように考え、行動し、やがては人間のもっとも役に立つ存在になると思ってのことだ。しかしそれが実現するのは早くても数十年後、もしかしたら百年後になるかもしれんとも思っていた。

 しかしいまのマリアはわしの思っていないようなことになっている。なんとこのマリアは自分で考え、喋り、行動する。なぜこんなことがおきたのか?」

 ニコラ博士は口をひき結んだ。

 その顔色がじょじょに赤くなった。

 つぎに言い出したときはいかにも言いたくなさそうな表情になっていた。

「これは……もう、魔法としか言いようがない……!」

 博士の顔は苦渋そのものだった。

「こんなこと言うのは科学者として断腸のきわみじゃよ! なんと、わしの口から魔法などという言葉が出るとはな!」

 ホルンが口を開いた。

「どうしてです、博士。魔法がどう、この件に関わってくるんです?」

「この空中には魔法があふれておる! パックが封魔の剣にふれ、あのヘロヘロと言う魔王を解放した瞬間から、魔法が蘇ったのじゃよ! それしか考えられん。マリアの身におきたのはその結果なんじゃ!

 パック、ヘロヘロが現れてからホルストの魔法が急に強くなったと言っておったな。あのときから世界には魔法があふれたのじゃろう。おそらく、ヘロヘロは魔法のちからの源なのかもしれん」

 ぼくが……と、パックはじぶんの顔を指差した。そうだ、そう考えるとホルスト老人の魔法のちからが増したのも説明がつく。

「マリアを設計したときわしは意図的に人間の臓器を模した器官をその内部に配置した。まあ将来の設計のための雛形としてのものじゃが、偶然にも本物の器官として働きはじめることになったのじゃ。

 魔法の中に相似の法則というのがある。つまり似たものはおなじ働きをする、というものじゃな。

 たとえば心臓の形に似た野菜は、人の心臓の働きを強める薬草になるという言い伝えじゃよ。

 マリアの中にあるものは人間の臓器に似せた器官じゃ。したがって似たものは同じ働きをするという法則から、人間とおなじように考え、行動するちからが吹き込まれたのじゃろう。わしはそういった魔法のちからの源を”魔素”と呼ぶことにした」

 ホルンはあたりを見回した。

「このなにもないところにも”魔素”というのがあるんですか?」

 博士はうなずいた。

「そうじゃ。しかもどうやらこの”魔素”のちからは蒸気が加わることによって増加するらしい。わしはちょっとした実験でそれを確かめてみた。

 マリアの中に吹き込まれた蒸気のちからによって増加した”魔素”のちからで、彼女は人間と同じように行動できるようになったかもしれんな。

 なあ、マリア」

 と、博士はマリアに向け優しく話しかけた。

 マリアは博士を見た。

「お前、パックに仕えると言ったな。なぜだい」

 マリアはちょっと小首をかしげた。

「わかりません。ただそうしなければならないと思っただけです」

 ふうむ、と博士は腕を組んだ。

 じろりとパックを見る。

 パックは首をすくめた。

「わしが気絶している間に、パックがマリアに話しかけた……そうじゃな?」

 はい、とパックはうなずいた。

「それが原因なのじゃろう。おそらく、雛鳥が最初に見たものを親と思うように、最初に話しかけられた人間にしたがうようになっているのかもしれん」

「それじゃマリアは……?」

 パックはマリアを見た。マリアはパックをじっと見つめている。

「そうじゃ! マリアは動き出したその時からパックに従うよう運命付けられているのじゃ」

「そんなの……」

 パックは困惑した。

 これからミリィを探す旅に出なくてはならないというのに、こんなの連れては行けない!

 マリアの存在は、どう考えても重荷としか思えなかった。

 くすり……と博士は笑った。

「あきらめろ。わしをさしおいて、話しかけたからこうなったのじゃ。マリアはもう、お前の責任のもとにある。彼女を頼むぞ。それに彼女は厄介だけではないかもしれん。もしかしたら、お前を助けてくれることになるかもしれんしな」

 そうかなあ、とパックは天井をあおいだ。

 ニコラ博士はホルンを向いた。

「ホルンさん。ところで明日、ボーラン市に出かけるそうじゃな?」

「ええ、まあ」

「わしも一緒に行くよ」

「あなたが?」

 ホルンは居住まいを正した。

 ニコラはうなずいた。

「ああ、こうなったらマリアはパックについてゆくじゃろうし、わしも彼女については観察の機会を無駄にしたくはない。ボーラン市へ行く途中でのマリアの行動を観察することによって、これからの研究の道筋が判るかもしれんしな。

 パック、いいな? わしも一緒に行くぞ」

 へっ、とパックはうなずいた。しかたない。博士がこうと言い出したときは決して後には引かないことを知っていた。

 ホルンは困ったように顎をかいていた。

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