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52話「二年生」

 始業式も終わり、晴れて俺達は二年生となった。

 そして恒例の学科見学会の真っ最中。


 とは言うものの―――


「退屈だ・・・・・・。」


 あれよあれよと言う間に最終日。

 ちなみに一日目、二日目ともに来客数ゼロであり、今もその記録を更新中だ。

 教室の窓の外は大いに賑わっているようだが、不人気筆頭の魔道具科には関係ないらしい。


 魔道具科の教室にはアンナ先生すらも居ない。

 俺達にこの場を任せ、さっさと食べ歩きの旅に出てしまったのだ。

 確かに去年もあちこちの売店で見かけたが・・・・・・。

 あれから随分と時間が経っている。


「ボクも食べ歩き行きたかったなー。」

「あちしも行きたいにゃー。」


 だらだらとした雰囲気。こういうのも悪くないが如何せん・・・・・・、退屈だ。

 机に突っ伏していると、フラムに声を掛けられる。


「あ、あの・・・・・・アリス。」


 声の方へ顔を向けると、フラムが勉強道具を持って隣に立っていた。

 どこか分からない所でも出て来たのであろう。


「うん、良いよ。どこが分からないの?」


 フラムは真面目だ。

 分からない所があれば理解できるまで頑張るし、諦めない。

 最近は何かコツを掴んだのか、メキメキとその実力を伸ばしている。

 フィーともよく一緒に勉強するようになった。

 まだ少し及ばないが、並ぶのも時間の問題だろう。

 フィーはフィーで、同じくらいの実力の相手が出来て張り合いが出ているようだ。


「ボクは何か作ってみよーかな。」


 そう言ってニーナは机の上に大きな紙を広げる。

 ニーナにも、もう少し勉強を頑張って欲しいところだが、意外にも魔道具作りの才能があった。

 元々手先が器用なのもあるが、授業で色々作っている内にどうすればどう動くのか、というのが直感的に分かるようになってきたみたいだ。

 それも、アンナ先生が驚く程のレベルで、である。

 ただまぁ、そうやって作った魔道具の理論を本人が全く理解してない、というのが珠に瑕だが。


「あちしはこの日の当たるとこで寝るにゃ・・・・・・。」


 サーニャは・・・・・・そろそろ買い物くらいは出来るようになって欲しいが、年齢的には俺より一つ下だし、長い目で見ようと思う。

 サーニャの年齢が発覚したのは俺の7歳の誕生日だった。

 この世界では誕生日を祝う習慣が庶民レベルでは無いので、自分でケーキを買ってきて皆で食べていた時だ。

 皆の年齢の話になった時、サーニャは指折り数えて「今は6歳にゃ!」と言い放った。

 フィーやニーナと同じくらいの体格だったので、年齢もそれぐらいだろうと思っていた俺達には寝耳に水である。


 獣人は早熟、というのはファンタジーよくある話だが、おそらくそれに当て嵌まるのだろう。

 最初はフィーやニーナと同じくらいだった背も、いつの間にか追い越している。

 数年後には、その時のヒノカやリーフと同じくらいになっているかも知れないな。


 ヒノカの剣術は相変わらず冴え渡っており、剣だけでは到底敵わない。

 戦術科で実戦形式の訓練を積んでいるおかげか、泥臭い闘い方も様になっている。

 まぁ、あのジロー先生を相手にしていれば嫌でも慣れるというものだろう。

 成長期に入ったようで、最初に会った頃よりも身体が丸みを帯び、女性らしい身体付きになってきている。


 リーフの魔術科での成績はあまり芳しくない。

 座学の成績はトップ組だし、魔術戦だって弱い訳ではないのだが・・・・・・魔力量の低さがネックとなっているのだ。

 魔術戦や実習なんかではそれが顕著に表れ、成績に響いているのである。

 フィーの様に魔力を暴走させて魔力量の底上げも試したが無駄だった。

 そもそも暴走しないのだ。

 幼少の未熟な時期ならいざ知らず、親や師を伴って練習していれば五歳にもなれば暴走の危険はぐんと下がる、らしい。


 らしい、というのは普通の状態が俺には分からないのだ。

 俺の場合は魔力が腐るほどあるし、フィーはその幼少期の頃から魔法連発で暴走させまくっていたのである。

 勿論、親には内緒で・・・・・・だが。

 今思えば、随分と危ない橋を渡っていたと反省している。

 あの頃は単に魔法を使える事が嬉しくて、楽しかったのだ。


 そしてフィー。

 未だ夢でうなされる事はあるが、概ね良好だ。

 こちらも戦術科で揉まれているおかげで、強化魔法を使えばヒノカですら敵わない。

 技術面ではまだまだニーナとヒノカには一歩遅れている感じだが。


 俺はといえば・・・・・・あんまり成長した気がしないな。


*****


 フラムの勉強を見ていると、教室の扉がガラリと開いた。


「やぁやぁ、待たせてしまったようだね、諸君。」


 我らがアンナ先生だ。

 両手には屋台で買ってきたであろう食べ物が満載されている。

 ガバッ!と音を立ててサーニャが起きた。


「ごはんにゃ!」

「今日も屋台が多くてね、ついつい遠くまで足を運んでしまったよ。ふふふ。」


「あんまりサボってると怒られますよ、先生。」


 そう言いつつも俺達はサッと机の上を片付け、それぞれの机をくっつけて大きなテーブルを作る。

 この三日間ですっかりと慣れてしまった。


「まぁまぁ、その時はその時だよ、アリス君。」


 テーブルの上にドサドサと買ってきたものを並べていく。


「今日もボウズです、先生。」

「今年はゼロか・・・・・・。なぁに、去年は4人も来たんだ。その反動だろう。」


 サーニャは生徒じゃないです、先生。・・・・・・その言葉は飲み込む。


「もう食べていいにゃ!?」

「勿論だとも。今日は最終日だからね、盛大にやろうじゃないか。」


 結局、魔道具科宛ての願書は一通も無く、二次三次募集でも無し。

 今年の魔道具科志望者はゼロという結果に終わった。

 つまり後輩は・・・・・・。

 戦術科や魔術科は例年通り、大盛況だったようである。


 こうして、俺達の学院二年目の生活は始まった。

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