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50話「ネコミミファイブ」

 今日は選抜者達がギルド試験を受ける日だ。

 ゾロゾロと猫耳ヘアバンドを付けた5人のおっさんを引き連れてギルドの扉をくぐった。


 彼らはヒノカが「まぁ、良し。」と判断した5人だ。

 流石に10人は迷惑だろうからな。

 とりあえずマシなのを連れて来た、と言ったところである。


 中肉中背のヤツがネコミミレッド。

 一番細いヤツがネコミミブルー。

 一番太いヤツがネコミミイエロー。

 一番地味なヤツがネコミミグリーン。

 一番ガタイの良いヤツがネコミミピンク。


 通称ネコミミファイブ。

 猫耳ヘアバンドの色がそれぞれの名前に対応している。


 ちなみにハゲ魔人隊長殿はヒノカ先生の試験に落ちて留守番だ。

 今頃扱かれている事だろう。


 ギルド内の注目を集める中、試験の手続きを行い、試験会場へ入った。


 試験官はドリーグだ。

 何かと縁がある。


「またお前か・・・・・・朝っぱらから何だ?昇級か?」

「いえ、今日は彼らの冒険者試験をお願いします。」


 ドリーグが並んだ男達を見る。


「お前、友達は選んだほうがいいぜ?」

「いえ、友達じゃないので。」


 ただの部下だ。


「うおおおおおん!!何故ですか団長おおお!!自分はっ!!自分は哀しい!!!」

「よせ、レッド。暑苦しいぞ。」

「お腹空いたんだなぁ。」

「・・・・・・。」

「あらん、ドリーグさんって良く見るとイイオ・ト・コ。」


 キャラ設定は赤が熱血、青がクール、黄が食いしん坊、緑が無口、桃がオネェ系である。

 ピンクがすり寄るとドリーグが後ずさった。


「な、なんだコイツ!気色悪ぃ!」

「何だとコラァ!俺だって好きで―――――」


 元に戻ったピンクに注意する。


「おい、戻ってるぞ。」

「あ、あらん。イヤだわ。ドリーグさん、つれない事言わないでぇん。」


「なんか・・・・・・すまねぇ。」


 気を取り直してドリーグがリングに上がった。


「とりあえずソイツらを見れば良いんだろ?さっさとかかって来いよ。」


 まずは打ち合わせ通りレッドから突撃。


「うおおおおお!!!行くぜええええええ!!!!」


*****


 ―――結果は全員惨敗。

 ではあるが、何とか一人だけ合格を拾う事に成功した。


 元々勝敗は関係ない試験だしな。

 相手は本職の冒険者。勝てる方が珍しい。


 で、その一人がピンクである。

 事前に打ち合わせた作戦がなんとか上手くいった。という感じだ。


 一番ガタイが良くてタフなピンクを最後にし、他のメンバーでドリーグのスタミナを削るというものだ。

 最後にドリーグにボロボロにされながらも彼にキスを迫るピンクの姿は中々笑え・・・・・・鬼気迫るものがあった。


 グリーンが地味に活躍したのも功を奏しただろう。

 ちなみにレッドは一撃でやられた。


 ドリーグが顔を拭いながら舌打ちする。


「くそっ!きたねぇ!色んな意味できたねぇぞ、テメエら!」

「でも、合格は合格ですよね?」


「はぁ・・・・・・。まぁ、そんだけ頑丈なら殺しても死なねえだろうしな。」


 歓喜の声を上げる5人。


「うおおおおお!!やった!!やったなピンク!!!」

「フッ・・・・・・信じていたぞ、オレは。」

「これでご飯食べられる!?」

「・・・・・・。」

「ワタシの事はピンク様って呼んでいいのよ、アナタたち。」


「他の奴らはあと一歩ってところだな、赤い奴を除いて。」

「そんな!!!何で自分だけ!!!」


 ワンパンだからだと思う。


 ギルドの受付へと戻り、ギルド証を受け取ったピンク。

 更に残りメンバーの見習い登録も済ませる。

 興奮冷めやらぬ彼らに一言。


「よし、じゃあ最初の仕事だな。」

「「「「「えっ。」」」」」


 最初の仕事といえばアレだ。俗に言うチュートリアルクエスト。

 俺も冒険者になった時、最初に受けた仕事だ。

 昔を思い出しながら受付に声をかける。


「初心者用の薬草採取の依頼書、ありますよね?」

「はい、御座いますよ。」


 そう言って受付が一枚の依頼書を取り出した。

 その依頼書を受け取り、ピンクに見せる。


「おい、ピンク。これが読めるか?」

「え、え~とぉ・・・・・・く、草?5つ・・・・・・?」


 はぁ、とため息をつく。

 先に文字を勉強させる必要があったようだ。

 だがそんな時間が無いのも事実。

 それは後回しにし、春休み中はギルドの仕事の経験を積ませることにする。


「フイカク草5株の採取。報酬は銅貨5枚だ。」

「フイカク草・・・・・・あぁ、アレの事ね。分かるわ、団長サマ。」


「なんだ、知ってるのか。」

「お金の無い時はアレを採ってきて食べるのよん。」


 とても食えるような物ではなかったと思うが・・・・・・、それだけ切実ということか。

 それに、不味くても毒では無いからな。

 栄養価は知らないが、薬に使う様な草だから悪くはないのだろう。


「あんなのでもお金になるのね、知らなかったわ。」

「この依頼は一度だけだ。それより、さっさと行くぞ。」


「だ、団長サマ、ワタシ達もうボロボロだし・・・・・・。」


 レッドを除いて皆満身創痍だが、蹴りで活を入れつつ街の外まで連れだした。


*****


 フイカク草は早々に集め終わったので、ここで稽古の続きと洒落込む。

 俺は鞄に入れていたドッジボールくらいの大きさの土のカプセルを取り出した。


「団長サマ、それは・・・・・・?」

「お前ら、剣を構えろ。これから集まってくる魔物を倒せ。」


 魔力を流して土のカプセルを崩すと、中から肉が現れる。


 ・・・・・・臭っ!


 いつかの仕事で使った、ヴォルフを誘き寄せる為の肉だ。


「うおおおおお!!臭い!!臭すぎる!!」

「くっ・・・・・・酷いなコレは。」

「これ食べられる?」

「・・・・・・ぉぇっ。」

「うげええぇ!臭っ!だ、団長サマ、どういう事!?」


「遊んでる暇はないぞ、お前ら。周りをよく見てみろ。」


 一頭、二頭とこちらを窺うヴォルフの数が増えていく。

 数が10を越えた辺りで肉を焼失させた。

 奴らが仲間を呼べばもう少し増えるだろう。


 俺は木の上に待避し、五人に声を掛けた。


「まぁ、死なないようには見ててやるから、死ぬ気で頑張れ。」


 ヴォルフ達が一斉に五人に襲い掛かる。


「「「「「ギャアアアアアアア!!!!」」」」」


 陽が紅く染まるまで五人の悲鳴は続いた。

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