1/2
プロローグ
今回も五話以下で終わる可能性大です。「集の話」全部まとめた話の主人公になるかもです。
すべてを焼き尽くす炎。その炎によって家は焼かれていた。その暑さは離れた場所にいる僕の元にも届く。
家には三歳の子供が取り残されている。助けに行く者は誰もいない。
消防署の人間も、誰も助けに行こうとはしなかった。
……ただ一人を除いて。
その人はただ一人、赤く燃え上がる炎の中に入っていった。
「危ないよぉ、お父さん、行かないでよぉ。」
僕は涙声でその人に言った。でも、その人は聞いてくれなかった。
「大丈夫だ、お父さんは絶対帰ってくるからな。」
そう言って僕の頭を撫でた、大きくて、頼もしい手で。
その人が家の中に入っていくとき、その背中は……
ノイズの掛かったように、赤いシルエットとなって揺れた。
それに僕は驚いて、目を擦って、もう一度見ると、頼もしい背中があった。
僕は安心して、周りの大人達に連れられていった。
その家が轟音を立てて、崩れ落ちたのは少し後のこと。