狂気のオルゴール
娑婆等技与和志は、オルゴールを描いて居た。しかし、絵画の才能は、天才級なのだが、世間の評価は、いまいちだった。そして、今回は、“茶柱計福”から買った“開けてはいけないオルゴール”をモチーフにしていた。
「茶柱の奴、中を見られたら不味いから、開けるなって、言っているのかなぁ〜?」と、眉を顰めた。曰く付きの物を売り付けられた気分だからだ。そして、「今度こそ、才能を認めさせてやる!」と、意気込んだ。
数時間後…。
「最高だ! 人生史上、唯一無二だ!」と、与和志は、満面の笑みを浮かべた。二度と同じ物を描けないものだからだ。そして、「明日、締め切りの日だったな。どうせ、オルゴールも、用済みだし、どんな曲か、聴きながら、寝るとしよう」と、オルゴールを持ち上げるなり、壁際の寝台へ、歩を進めて、枕元へ置くなり、蓋を開けた。
その直後、ソー・ザンスの“黒鳥”の曲を奏で始めた。
その瞬間、目付きが鋭くなり、物を壊したくて堪らなくなった。間も無く、目の前が赤黒くなり、意識が跳んだ。次に、気が付けば、滅茶苦茶になった室内だった。少しして、「絵が…」と、ズタボロになったキャンバスの前に、両膝を突いた。見るも無残な物と化したからだ。程無くして、「そうだ! 部屋を作品にしよう!」と、開き直った。絵画じゃなくても、出品出来れば良いと思い付いたからだ。
二週間後…。
与和志は、表彰されて居た。
「娑婆等技与和志殿。貴殿の作品“狂気”を、靄島芸術祭大賞を授与します」と、市長が、賞状を差し出した。
与和志は、どや顔で、一礼をして、受け取った。逆転劇だからだ。そして、左脇へ挟んで、踵を返した。程無くして、花道へ進入した。
間も無く、見覚えの在る男が、行く手を塞いで立って居り、「蓋を開けて、大賞を頂きましたねぇ〜」と、指摘した。
「不正はしていないぞ!」と、与和志は、毅然とした態度で、言った。
「ええ。間違い無く、あなたの才能ですよ」と、茶柱が、回答した。そして、「でも、絵画では、永遠に、評価はされませんよ」と、示唆した。
「難癖ですか!」と、与和志は、苛立った。さっぱりだからだ。
「つまり、絵画だけが芸術じゃないと言う事ですよ」と、茶柱が、仄めかした。そして、去って行った。
「何が言いたかったんだ?」と、与和志は、席へ着くなり、「まあ、良いか…」と、吹っ切った。取るに足らないからだ。
数年後、狂気をモチーフにした芸術で、評価されるのだった。




