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白銀に踊る ~四人の聖女達は愛に貪欲に生きることにした~【第1部連載中】  作者: tamn
第1部 落とされた四人の聖女達 七章 願いが集う夜に祈りを
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03 欲しいと思ったんだもの

 幌馬車の片隅、リーリア達から見えない場所で静は自分のノルマである食事をとった後、まだ皿に残っているスープをルイスに押し付けた。


「はい、残り食べて」

「……もう少し食べられないのですか」

「ちゃんと食べたし、ルイスに残り食わせるのに多めに盛ってもらってるんだからね?」


 変わらず背もたれの代わりになっているルイスは辟易した顔を見せ、とても時間をたっぷり時間を空けてからスープ皿を受け取った。

 寒さのせいでスープがすっかり冷めてしまっているが、銀の丸い板のような魔具の上に置けばあら不思議、中のスープが温まるものがあるから冷めても問題ないのだ。

 目下、問題なのはルイスに食事を取らせるということだ。

 残りを受け取ったルイスは温めるのすら面倒なのだろう、そのまま静が使っていた食器を手に、もそもそと残りを食べ始めた。


「おいしいよ。たぶん。お野菜も柔らかいし」

「リーリア殿は料理が得意ですからね」

「味覚が戻ってたらなぁ」


 戻らない味覚を恋しく思いつつ、静は少しずつ減って行くスープの量を確認した。

 エヴァンハイン家を出てから静はリーリアに伝えられたのだ。ある意味それは告げ口に近いようなものだが、知らなければいけないことだった。

 なにせ、ルイスが食事をあまりとらないのだ。

 どうやら王都からエヴァンハイン家に向かう道中に、それが発覚したらしい。ジェイク達がなんとか無理やりに皿に盛り付けたりして食べさせれば、その日の一食を抜くようになったという荒業までしてきたとか。

 元から少食なのかと思えば、ヴィートさえも道中、顔をしかめてしまうほどだったらしい。つまりは元からではないようだが、ルイス曰く、この方が動きやすいからだとか。

 確かに隠密的な動きをするルイスにとっては体重は軽いほうが良いのだろうが、ジェイク達はその倍は食べていて動けるのだ。これはもう何か理由があるだろうが、絶対に口を割ろうとはしなかったとか。


「食べたね」

「……はい」


 まるで苦行と言わんばかりに顔をしかめるルイスに、静は片手を伸ばして頭をわしゃりと一度撫でた。


「……犬扱いしないでいただけませんか」

「されたくなかったらちゃんと食べな」


 そしてむすりと口を閉ざしたルイスに、静は子供だなぁと思いながらもう一度頭を撫でる。と、少々生臭い匂いをまとったヨカゼが幌の合間からひょこりと顔を出してきた。


『ただいま、静』

「おかえり、ヨカゼ。お口、綺麗にしてもらってね」

『ええ、もちろんよ』


 そしてすぐに顔を引っ込ませ、おそらく外にいるリーリアの元へと向かったのだろう。幌馬車の外は簡易的な天幕を張っている。リーリア達はそこで料理し、食事を取っている。あちらのほうが火を使っていて暖かいのは分かる。

 だが、静が食事という作業を見られたくがないためにこうしてルイスを付き合わせて幌馬車で食事をとっているのだ。とはいえルイスからしてみれば、無理やり食べさせられるような状況から逃げられる為、これ幸いと付き合っているかもしれないが。

 食べられないわけではない。しかし、何かが理由で食事に対して拒否感を持っているのだろう。

 到着するまでの間にその理由が分かり、解決出来れば良い。と、どちらかと言えば願いのようなものを抱きつつ、静は幌の隙間から見える外の景色を見つめた。


「……ねぇ、ルイス。なんか、近くにいるよね」

「その感覚は戻られたんですね」

「雪が降っているからかな」


 幌の隙間からちらちらと雪が降っているのが見える。長く息を吐きだせばすぐに白い吐息が溢れた。それをため息と捕らえたのか、ルイスが姿勢を正したのを静は背中から感じ取った。


「少し泳がせていたのですが、気になるようなら排除いたします」

「うん、お願い」


 ルイスは空になった食器を持ったまま立ち上がり、幌の外へと顔を出す。


「ノーマン。狩って良いぞ」

「あ、良いの? それならヘクターにあげても良い?」

「構わない」

「ってか、ちゃんと食べたね」

「……今、その話はしてない」

「はいはい」


 最近、静は気づいたことがある。それはジェイク達相手だと、どうもルイスはさらにガキっぽくなるということだ。とくにジェイク相手だと、それが際立つ。それを四人とも気付いているからか、道中さりげなくそういう接し方をしてはルイスを不機嫌にさせている。

 おかげでその被害は静に向かってきている。とは言っても無言で暖を取る体で抱き寄せてくるだけだ。そのおかげで静の背中はだいたい暖かいが、それがまたガキっぽさを際立たせていることにルイスは自覚が無いらしい。


「ヘクター! 良いってさ!」


 ノーマンのよく通る声が幌の向こうから聞こえてきた。と、続けてノーマンの呆れた声が聞こえた。


「あー……、ジェイクも行った」

「……暇だったんだろ」

「暇ならついでに魔術の練習すれば良いのに。結局ちゃんと出来るの、空気固めてつくるナイフと紐っていうか縄だけなのにさぁ」

「凝固させるのは得意みだいだな」

「じゃあ、氷の魔術でも使わせてみようかな」

「良いんじゃないか」


 どうやらノーマンの暇つぶしが決定したらしい。

 しばらくリーリアが呆れた顔をしてジェイクをなだめるのだろうなぁと思いながら静はくわり、と欠伸をこぼした。白い息がもわりと広がり霧散した。


 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-


 北上するにつれて、土ばかりの大地は雪原へと移り変わり、より寒さは厳しくなっていった。

 その道中、立ち寄る町や村でフィルは商人の真似事をし、情報収集を兼ねて人々の話を聞いて回る。道のりは遅くなるが、今の季節に北上をするのはむしろこれぐらい慎重に進まなければいけないものだとルイスが説明してくれた。

 追手のこともあるが、むしろそれが些細になるほどに今の季節は魔物が活発に動き出すらしい。そのため、行く先でどこに魔物が出現しているか確認をすることは重要な手段だった。


「これちょうだい!」

「それはちょいと高いなぁ。買えるか?」

「……ちょっとまってて!」


 幌馬車の外で、子供の甲高い声とフィルの声が聞こえた。女の子だろうか、男の子だろうか、聞き分けるのは難しい。

 今日も静は、息を潜めるルイスを背もたれにしつつ、ぽつりと呟いた。


「子供がいるね」

「はい」

「……何もしてこなければ放置、かな」


 とは言え、やはりこういう時にこそ、相手はこぞって狙ってくるものなのだと静は知った。

 リーリアはジェイクとヘクターと共に買い出しに出ている。ヨカゼは運動不足になるからと、村の外で散歩中だ。戻ってきたら出発だが、それまでにどう相手が動くか。

 そう静が思っていた矢先、幌が大きく揺らめいたかと思うと合間から何かが投げ込まれた。


「っ……!」


 ルイスが静の顔を覆う直前、それは強い光を放ち、幌馬車の中が一気に白に染まった。


「静様、目は」

「うぅ……チカチカする……」


 すぐにルイスが目を覆ってくれたおかげで、強い光を直視することはなかったが、それでもあまりにも強すぎる光が目に入り込んだせいで視界が強く瞬いていた。

 幌馬車の外で大きな音と、馬のいななきが聞こえる。どうやら残っていたノーマンとフィルが捕らえたのだろう。すぐに音は消え去り、代わりに子どもの甲高い声が聞こえてきた。


「どうなさいますか」

「……子供かぁ……」


 はなせ、はなせ。と、しきりに聞こえた声は、すぐに消えた。どういう手段で静かにさせたかは不明だが、好きにして良いとは許可を出していないため、無事なのは確かだろう。しかし子供一人だけなのかは疑問ではあるが。

 静はようやく視界のちらつきが収まりつつある中、さすがに子供相手には普段のような判断が出来ず、ルイスに一つお願いすることにしたのだった。



 場所は村の外の森だ。

 どうやら襲撃にあった時、ヘクターがいつもの勘を働かせて戻ってきていたらしい。おかげですぐに二人を捕らえ、森の奥へと素早く移動させたとのことだった。もちろん無傷で。

 何せ、相手が本当に小さな子供と、女性だったからだ。


「……子供に女の人って、初めてだっけ」

「そうですね。見ての通り、こちらには男が五人もいるので、それを考えたら下手に使えません」

「けど来たよ」

「……人手が足りなくなったか、焦っているのか。それとも両方のおそれがあります」


 なんとも世知辛い理由だ。確かにこちらは襲われたら、静の知らぬ所で良いように後始末をしてもらっているのだ。そんなことを繰り返しているのだから当然人が減るのも致し方がのない話だった。

 ただ静は、どのように後始末をしているのかは知らないので、生きていたら良いなぁの気持ちではいる。一応。

 しかし、だからと言ってこんな小さな子供まで使ってくるとは予想もしていなかった。

 静は真後ろにルイスを控えさせつつ、冷たい雪の上で魔力の縄によって動きを封じられている薄い金の髪を持つ子供と目線を合わせるようにしゃがみこんだ。


「こんにちは」


 子供は分かりやすく顔を歪め、青いまんまるの瞳をぐっと細めて睨むように静を見る。その隣にいるとても短い赤い髪の女性は、唇を噛み締め顔をうつむかせていた。

 静はぼんやりと眺めていると、横からヨカゼが寄り添ってきた。威嚇するように僅かに牙を向いているヨカゼに、大丈夫だと言うように静はその鼻先を突きつつ、子供に問いかけた。


「ねぇ、お名前ある?」

「なんで聞くの」

「なんとなく」

「へんなのー」


 そう言えば、彼らは名前があるのだろうか。それとも、ジェイク達のように番号なのだろうか。

 その子供。よくよくと見れば幼い男の子はよく分からないというように大きく首を傾げつつ、素直に教えてくれた。


「リオンっていうの。こっちはエリカ。エリカは話せないから」


 静は赤髪の女性、エリカを見やり、すぐに縄を持っているノーマンを見上げた。ノーマンは自身の喉元を指し、そして小さく首を横に降った。

 喉に、何かをされたという意味なのかもしれない。

 静はまた再度エリカの姿を見て、小さく息を吐き出し、リオンにまた問いかけた。


「わたしを狙った理由は?」

「やれって言われたから」

「誰に?」

「おとーさん」

「おとーさん? 本当の?」

「ううん。けど、そう呼べって」


 小さな子供らしく、舌っ足らずのまま素直に答えてくれる。危害を加えようとしないと分かったからなのかも知れないが、あまりにも素直過ぎて静は逆に心配してしまいそうになった。

 が、すぐにリオンが答えてくれたその内容を聞き、静はつい、舌打ちをこぼしそうになった。

 父。父として、育てていた人。その人が、やれと命令した。なんて、胸糞の悪い話であろうか。


「……エリカが話せないのって、どうして?」

「おとーさんがおしおき……って」


 リオンが、お仕置きと自ら言った言葉で、青い瞳が大きく揺れた。

 その気配に気づいたのか、エリカがすぐにリオンに体をぴたりとくっつけ、静を見つめた。明るい緑の瞳。何かを訴えるかのように、こんな状況だというのに力強い瞳に、静は安心させるように微笑みで答えた。


「ね、ルイス」

「……何でしょうか」

「欲しい」


 頭の上から大きなため息が聞こえてきた。何を今更、そんな反応をするのか。一番静の側にいて、一番静を理解しているというのに、その反応はちょっと失礼ではないかと思いつつ振り返り見上げれば、ルイスは目元を強く押さえていた。

 そしてその後ろからジェイクがルイスの肩に手を添えながら大きく笑った。


「諦めろって、ルイス」

「静様がこう言ったら従うしかねぇだろ?」


 ジェイクに続き、フィルもルイスの肩に手を置き、笑いかける。誰も彼も仕方がないと言わんばかりにルイスに同情の視線を向けている。その中でリーリアだけが嬉しそうに微笑んでいるのが見えた。

 ちなみにヨカゼもまた、仕方がないと言わんばかりにきゅうと鳴いていた。不本意である。


「……お前達、分かっているよな?」

「おー、ちゃんと世話すりゃあ良いんだろ?」

「むしろ僕達の方が慣れてるから任せてよ」


 手をおろしたルイスは、疲労がにじみ出る声を発し、ヘクターが片手を上げて答える。そんなルイスを見てか、ノーマンが二人の面倒を請け負ってくれるとのことだった。

 確かにルイスよりも、ノーマン達が見てくれたほうが相性を考えても良いのは一目瞭然だった。

 静は改めてリオンの顔を覗き込み、笑顔を向けた。


「ねぇ、リオン。わたしと一緒に来ない?」

「な、なんで」

「欲しくなったから」

「なんで? だってぼく達」

「うん。けど、欲しいなって思った」


 意味が分からないと言わんばかりに、リオンが顔をしかめる。

 静は少し思考を巡らせ、横目でエリカを見てからもう一度問いかけた。


「リオン。エリカと一緒に生きたい?」


 リオンはまん丸い青い目を輝かせ、白い頬は徐々に赤みを増し、そして満面の笑顔を浮かべた。


「うんっ」


 話は決まった。

 静はノーマンに目配せして縄を解かせようとしたが、その前にノーマンがさっさと縄を解いた。これで良いのだろうと、逆に視線で問われる始末だ。静は苦笑を漏らしつつ頷き、エリカに抱き着くリオンに手を伸ばした。


「何すんの……!」

「頭撫でてる」


 小さな子供が不満げに頬を膨らませ、片手で軽くぺちぺちと静の手を叩く。けども全く痛くなくって、本当に先ほどまで命を狙ってきたのが嘘だったかのように思えてしまうくらいだ。

 エリカはそんなリオンを慌てて止めようと、その手を下ろさせ、首を横に振った。


「ね、リオンは今、いくつ?」

「……わかんない。エリカ、ぼくいくつ? たぶん五歳!」

「ちっちゃいねぇ」


 エリカが首を傾げながら五本の指を立てる。曖昧な反応を見るに、二人は縁もゆかりの無い、偶然一緒になっただけの関係なのだろう。けどもエリカもリオンも、お互いを一等大切にしているのは誰が見ても分かることだった。

 エリカがわずかに唇を動かし、無音の息を吐きだす。リオンはそれが何を意味しているのか分かるのか、ことさらにきゃあきゃあと喜んだ。

 その姿が妙に胸を締め付けてくる。だから、静は身勝手にもそれを治させることに決めた。


「リーリア。エリカの喉、治してくれる?」

「はい」


 これはエリカの意向は無視したものだ。もしかしたら不必要な行為かもしれないが、静の知ったことではない。

 リーリアが素早く駆けより、エリカの肩に触れる。エリカは大きく肩を跳ねさせ、さらに大きく首を横に振って逃げようとする。が、それを防いだのはなんとリオンだった。


「なおるの?!」

「かもしれないってだけなんだけどね。エリカを逃げないように抑えてくれる?」

「わかった!」


 素直に返事をしてくれたリオンは小さな体全体を使い、エリカの動きを抑える。エリカは何かを訴えるように静を見てくるが、静は笑顔を返すだけだ。

 その間にもリーリアはエリカの手を取り、祈るように両手で握りしめる。と、小さな白い光の粒子のようなものがエリカの首元に散じたのを静は目にした。


「……い、如何でしょうか?」


 その光が見えなくなった後、リーリアはエリカの様子を伺う。エリカは空いている片手で喉元に触れ、小さく唇を動かした。


「――ぁ」


 無音の吐息の最後に、小さな発声が静の耳に届いた。

 エリカはぱっと目を見開き、自身のことだというのに目を大きく丸くしてリーリアを見る。リーリアは安堵したように微笑み、無言でエリカに抱きついたまま動かなくなったリオンを手で指す。エリカはすぐにリオンを見つめ、そして頬を引きつらせながらも必死に笑顔を浮かべた。


「お……、りぉん。……リオン」

「エリカ……!」


 エリカは迷いなく、リオンを呼ぶ。リオンは小さな両腕を広げ、エリカの首に抱きつけば、エリカもまた強くリオンの小さな体を抱きしめ返した。

 二人は幾度も互いの名を呼ぶ。その声はどちらとも震えているように聞こえたが、気づかないふりをしたまま静はルイスの手を借りつつ立ち上がり、そっとその場から離れる。

 ご機嫌そうなヨカゼは大きく尾を揺らし、頭を静の足に軽くぶつけてくる。静はそんな悪戯っ子の頭を思い切りかき乱しつつ、横にいるルイスに告げた。


「ルイス。リオンが言う、そのおとーさんについて、聞いといてね」

「はい。承知しております」


 偶然。そう、もし偶然出会ってしまっても良いように。あくまでも保険のつもりで。けど、もし偶然出会ってしまったら。

 その時は、静の知らないところでルイス達が好きなようにしてくれるから何も問題は起きないだろう。

 静はふと、ネーヴェにどうしてか話したくなった。些細な、本当にとりとめのない話をして、そして強く抱きしめたくなった。

 さむいなぁ。

 音もなく呟いた白い吐息は、白銀の綿雪の中に消えていった。



 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 揺れる幌馬車の中は、とても賑やかなものへと変わった。


「ねぇねぇ、静様! 聞いてよ、ヨカゼがね!」

『違うわよ。リオンったらね』

「うんうん、後から順番に聞くからね?」


 最初こそ、ヨカゼが話すことに驚いていたリオンとエリカだったが、とくにリオンはすぐにヨカゼに懐いた。のは良かったが、この子供と狼の相性が良すぎたことだ。

 良い遊び相手を互いに得たのは良いことだが、ちょっとしたことで言い合いになり、結果として静が仲裁に入ることが多くなった。

 今もまた、ヨカゼの前足が思ったよりも強くリオンにあたったらしく、文句を言い来るし、ヨカゼはそれに反論しようとする。とても元気で良いことだが、今は少しばかり静かにしてほしいとついつい思ってしまった。

 というのもだ。


「ルイス、ごめん。起こしたね」

「……いえ」

「ほらぁ、ルイスが起きちゃったでしょ?」


 あまりの騒がしさに、さすがのルイスも起きてしまうほどなのだ。

 慌ててリオンとヨカゼはすぐに口を閉じ、こそこそとお互いの顔を見合わせて、そっちのせいだと言い合い始める。

 本当に元気だ。


「まだ寝てな。ルイス」

「……はい」


 それでも寝付きが良いおかげで、すぐにまたルイスの寝息が聞こえてきた。が、さらに腹部に回っている腕の締め付けが強くなった。

 これ、絶対にわざとだなぁと呆れつつ、静はこちらの様子を伺うリーリアとエリカに、大丈夫だと伝えるように笑ってみせた。

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