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<R15>15歳未満の方は移動してください。

追いかけられたので逃げたらあっという間に捕まりました

作者: オウル

初めて書きました

拙い文章ですがよろしくお願いします

2025.1.28 大幅加筆と修正しました

 「私のところにいれば少しはマシだと思うけど…でも時間の問題だとも思うわよ?」

我が国の王族で唯一の姫、王弟殿下の長女テネリア姫が呆れたように言う。


 高等部に入学した私は、幼馴染からの猛烈なアプローチにちょっと疲れていた。

 我が国は16歳になる年に高等部へ進学するとともに、準成人として認められて一部の夜会に出席できるようになる。そうした夜会やちょっとした遠乗り、街歩きなどに毎週のように連れだされ、その度に婚約を仄めかされるのだ。

 恋愛事に疎い私は、歳上の幼馴染が急に大人の男の人になってしまったように感じて、ドキドキし過ぎてどうすればいいかわからなくて、この所勉強や体調を理由にお誘いをお断りしているのだけれど、そろそろ言い訳のネタが尽きたので幼馴染のテネリア姉様に泣きついたのだ。

「なんなら飛び級して卒業してしまえばいいじゃない。そうしたらミリダスに連れて行けるけど?私の側仕えになればもう少し時間は稼げるわ。本当に逃げるつもりなら、ね。」

そう言うとテネリア姫は微笑んだ。


 そう、本気で逃げるつもりなら色々と伝手はある。でもそうしないのは…


 「好き避けも過ぎると捕まった時が大変よ?ライオネル兄様は昔からジュリアしか見えてないんだもの。もう諦めて捕まりなさい。」

テネリア姫は笑いながらそう言った

「そろそろお帰りのお時間です。ちょうどお迎えもいらしたみたいですよ。」

壁際にいた侍女のマアサさんも微笑みながら扉を開ける。その向こうには…ライオネル兄様がいた。


 「ジュリア、送って行くよ。」

さっと手を取られ、エスコートされる。

「それでは御前失礼致します、テネリア姫」

「ライオネル兄様、それくらいにしてあげて。ジュリアはまだ逃げたいお年頃なのよ。」

テネリア姫のからかいに顔が熱くなり、手を外そうとしたら反対の手で阻まれてしまう。

「姫の御忠告、しかと賜りました。まぁここまで待ったんです。焦って逃げられるような事は致しませんよ。さぁジュリア、リンゼス伯も馬車でお待ちだ。帰ろう。」


 城内を公爵家嫡男にエスコートされる学園の制服姿の私に、何故だかすれ違う王城勤めの方達は微笑ましい物を見るかのような表情をされるので戸惑ってしまう。視線を斜め上に向けると穏やかな笑みで

「どうした?」

と聞かれた。制服なのにエスコートは必要なのか聞いてみる。

「婚約者と歩くのにエスコートしないなんてありえないでしょ?」

えっ、いつの間に婚約?

「ジュリアが準成人になるのをずっと待っていたのに、テネリアに泣きついたと聞いて。先程内々でいいから婚約したいとリンゼス伯にお願いして承諾していただいたんだ。と言う訳で、もう君は僕の婚約者だよ。」

テネリア姉様に泣きついたのはついさっきなのに、なんで知っているの?王城に着いてから1時間も経ってないんですけど…


 その後馬車回しに着くとコルベット公爵家の馬車の前でお父様が待っていた。

「ジュリア、このままコルベット公のタウンハウスに向かうよ。皆あちらで待っている。」

お父様が寂しげに微笑み、ライオネル様から私の手を外し、馬車に乗るのを手伝ってくれる。その後ライオネル兄様とお父様も馬車に乗り込み、タウンハウスへと馬車は走り出した。

お父様…と視線を向ければ

「ごめんね。ジュリアには言ってなかったけど、3年前からの約束なんだ。」

困った顔で答えるお父様。ライオネル兄様はご機嫌で

「我が家に着いたら両家で晩餐だ。母上が張り切って準備しているよ。フローラも楽しみにしてる。」

フローラ姉様…知っていて黙っていたのね。


 コルベット家に到着すると使用人総出のお出迎え、玄関に入れば公爵家の皆様が出迎えてくれた。少し奥にはお母様とアセリオ兄様の姿もある。

「ようこそ、我が家へ」

にこやかな公爵様からのご挨拶を受けた後、晩餐に相応しい服装にと夫人付きの侍女の皆さんに客間に連れて行かれる。そこにあったのはライオネル兄様の髪色のドレスと瞳の色のアクセサリーで、随分前から用意されていたんだと思い知らされた。

 支度が整った頃を見計らったようにライオネル兄様が迎えに来た。

「良く似合っているよ。」

晩餐室には前公爵様ご夫妻やリンゼスの大伯父様ご夫妻、リンゼス公爵様ご夫妻、前リンゼス伯爵であるお祖父様とお祖母様も揃い、にこやかに私達が入室するのを待っていてくれた。

「お待たせして申し訳ありません。」

ライオネル兄様に促され、ともに挨拶をして着席する。なんだろう、皆様祝福してくれているんだけど、お祖父様やお祖母様方はニヤニヤしているし、お父様・お母様方はホッとした感じ、兄様や姉様達はちょっと呆れた様子。

「それではこの目出度い日に」

コルベット公爵様の挨拶で晩餐が始まる。

「ライオネル、やっとだな」

「ジュリアも粘ったなぁ」

「ひ孫はまだ少し先かしら?」

「ジュリア、お父様達がミリダスに赴任されたらウチに来れば?一緒に学園に行けばいいじゃない!」

「いやいやフローラ、それはまずいぞ。ジュリアが卒業できなくなる。」

「今度はウチの中で追いかけっこか?それともかくれんぼか?」

皆様、言いたい放題である。本当に知らなかったのは私だけみたいで、置いてけぼりされた気分でいると

「ジュリアが逃げても、絶対捕まえるから」

ライオネル兄様…

「もう兄様じゃない。ライオネルと」

頬に口付けされた…

 晩餐後に、正式なお披露目はテネリア姫様の嫁ぐ前最後の夜会で、結婚は私の学園卒業後の春に決まった。お母様と公爵夫人は早速婚礼衣装の生地の手配や仕立て屋はどこにするかと話し合い始める。あぁ、もう逃げられないのね、もう逃げるつもりもないけど。


 翌日王城のテネリア姫様のところに伺うと、女官の皆様からも文官の方々からも祝福の言葉をかけられる。皆様、お耳が早い…

「幼馴染で親戚の2人の追いかけっこの結末を見届けないとミリダスに嫁いでも落ち着かないじゃない?」

やっぱり知っていた、というかグルだったのね。

「本当はジュリアをミリダスに連れて行きたかったのよ。幼馴染だし、ミリダスの事もよく知っているし。私の婚約が決まった時にお茶会でそう言ったらフローラから兄様に伝わってしまって。ライオネル兄様、まだ高等部卒業前なのに自分が卒業したらすぐ婚約させて欲しいって言い出して。ジュリアはまだ中等部の1年生の頃よ。さすがに早すぎるとコルベットの伯父様もジュリアのお父様も反対されて、私のところに直談判にきたの。ジュリアを連れて行かないでって。」


 小さい頃のアセリオ兄様は男の子と遊ぶのが好きで、一緒に行った私のお相手をしてくれるのはライオネル兄様。転んで泣いた時も、男の子達に意地悪された時もライオネル兄様が助けてくれた。当然、私の初恋はライオネル兄様で。

 だけどテネリア姉様の婚約が決まった頃に帰国した私は、久し振りに会うライオネル兄様と話すのが恥ずかしくて、ご挨拶だけして離れる事もよくあった。婚約の話がある事は知っていたけど、公爵家嫡男で女の子の憧れの的の兄様と私じゃ釣り合わないし…と。お父様達がまだ決まった訳じゃないけどよく考えなさいという言葉も本気にしてなかった。


 「ジュリアを連れて行かない代わりに、私が嫁ぐまで婚約は無理強いしないって約束させたの。」

3年前からの約束って、この事だったのね。

「で、今回婚約が早まったのはジュリアが私についてミリダスに行くかもしれないと兄様が焦ったからという事ね。まぁ、そう仕向けたのは私だけど…」

黒幕はテネリア姉様だったという訳ですか。

「ジュリア、お互いの事をよく知っている相手からこれ程望まれて嫁ぐ事ができるのは幸せな事よ?私は兄様にも貴女にも幸せになって欲しいの。」

姉様も幸せになる為に望まれて嫁ぐんですよね?と呟いたら

「そうよ。そして私もローレン様を幸せにして差し上げるの。もちろんミリダスとグレースビットの国民の幸せも得られるように頑張るわ。」

姉様は幸せそうに微笑んだ。


 そして姉様の最後の夜会。私は兄様のパートナーとして並んで入場する。淡いグレーの礼服とドレス、兄様のピンとカフスは緑の貴石、私のアクセサリーは金のバラに青い貴石があしらわれた物。もう既に婚約した事は知られているけど正式なお披露目はこの日なので、お母様達の気合いがすごかった。

 王族方が入場され、最後に姉様とローレン公子殿下が入場された。今日もまたお互いの色を身に纏っていらっしゃる。国王陛下のお言葉の後、主役のお2人のファーストダンス。今回は2曲めから新しく婚約を結んだカップルもダンスをするよう言われていたので、私と兄様の他に第3王子のシリウス殿下と従姉妹のルナベル・リンゼス公爵令嬢、ランデル・ファムビル公爵令息とフローラ・コルベット公爵令嬢が主役のお2人と一緒に踊る。その後王族へのご挨拶をして婚約のお祝いの言葉を頂き、それぞれの家族の元に戻る。

「今日の一番の見せどころは終わったから2人とも少し休憩してらっしゃい」

コルベットのお義母様…こう呼ぶよう言われている…に促され、フローラと私は公爵家の控室へ。お義母様の侍女さん達がお茶を入れてくれる。そこへマアサさんがお菓子を持ってきてくれた。

「この後テネリア姫がお見えになりますので、しばらくこの場でお過ごし下さい」


 姉様は明後日ミリダスに出発される。おそらく近くでお話しする最後の機会だろう。程なくルナベルが小さな包みを持ってやって来た。私とフローラも預けていた包みを受け取り姉様を待つ。

 マアサさんの先導で姉様が入室された。

「ごめんなさいね。少しの時間しか取れないけど、みんなとちゃんとお別れしたかったの」

姉様は今日の主役で、お輿入れ前で忙しいのは知っている事。それぞれ思い思いの品をマアサさんに預ける。姉様からも私達に包みが渡される。

「手紙を書くわね。結婚式の絵姿も送るから、みんなも送ってね。ミリダスは近いから遊びに来てね。私がこちらに来る事は何かと難しいと思うの…」

本当に時間がないらしく、贈り物を交換すると姉様は席を立ち、最後に

「みんなの幸せを願っています」

と夜会へ戻っていった。



 あれから3年。今日私は兄様…じゃないライオネルの元へ嫁ぐ日がやって来た。

白いドレス・白いベール…今日はライオネルの瞳の色じゃなく、姉様から頂いた真珠のアクセサリーをつける。あの日私達に贈られたのは、結婚式でつける為の真珠のアクセサリーだった。私より先に式を挙げたフローラもルナベルも姉様の真珠をつけていた。

 お父様のエスコートで聖堂の奥へと進む。祭壇の前には白の正装を着たライオネルと司祭様。これから参列者の皆様と神の前で婚姻の誓いをとり行う。やっぱり姉様の参列は叶わなかったけど、祭壇の上の丸窓から見える空へと思いを乗せる…



…姉様、捕まったまま逃げれなかったけど、幸せです



 

 


 


 

 








何度も行きつ戻りつしてしまいました

頭の中の話を文字にするのってなんとも難しい

テネリアの物語を書いているうちにエンディングが物足りなくなり、書き足しました


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