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第62話

 同姓同名の別人…………という事でもないのだろうか?


 エルフのルーリアさんといえば、そこそこ大きな街の学園の講師をされていたお方で、オレが生まれた村から脱出したあと、4年ほどお世話になっていたお方だ。

 スリフィが千年後の未来から転生して来ている事を知る数少ない人物。

 オレが帝国皇帝に攫われ、原因であるアール様に文句を言った後、行方が分からなくなっていた。


 それがまさか、一国の王様になっていたなんて……


「エルフとか反則でしょ、ガチで戦って勝てる訳ないじゃな~い」

「でも相手は魔法職でしょ? 剣士なら接近戦に持ち込めば有利にならないかな」

「私もそう思ってたわよぉ、それが向こうも魔法無し、身体強化のみの剣術で完敗したってわけょぉ……」


 身体強化でロウさんより素早く動き、身体強化でロウさんより重い攻撃を当てる。

 中央値の値が違うだけで、先ほどの戦闘の焼き増しのようなもの。

 そんな状況を見下しているような男性に再現されたら、そりゃキれもするわな。


 魔力の大小で勝敗が決まるのなら、そりゃエルフには敵うまい。


「さすがに魔力が高いだけの素人には負けるつもりはないわよ、あんたもあのエルフも剣術を齧っているでしょ、それも結構な時間」


 いやいや、ルーリアさんの過去はしらないが、オレはまったく剣術など教わった事はないぞ。


 前世の中学・高校で剣道を習ったぐらい。

 さすがにその程度で剣術を齧ったとは言えまい。

 ルーリアさんは……あの人も剣を握った事すらなさそうだったんだけどなあ。


 家にも剣らしきものは一本も無かったし。


「リューリンにだって瞬殺されてたんだから、ただ単にあんたが弱いだけじゃないの」

「ああん、だったら今度はテメェで試しみっかぁあ!?」


 ロウさんがそう言ってファニスに歯を剥いて威嚇している。

 この人、普段はおっとり系だけど、ちょっとした事ですぐにキレるなあ。

 一応、そいつ帝国皇帝ってなっているから挑発するのは不味いと思うぞ。


「そんな事を言って、あのおチビだってその皇帝に雷を落としてたじゃない。一瞬、刺客かと思ったわよぉ」


 ああ、まあ、リューリンちゃんはなあ…………まあ、身内の様なものだし。


「普通は死んでるわよ、あんな雷魔法くらったら」


 丸焦げだったしなあ、アール様が居なけりゃ大参事だったのは違いない。

 刺客だと思ったからロウさんは、リューリンちゃんに向かって行った訳か。


「それはともかく、あのルーリアさんが新たな剣王かあ……ボクの知っている剣術の歴史が変わらなければいいけど……」


 スリフィの話では第六天覇王と名乗る人物が現れて、当時の剣王を打倒し、史上最年少で剣王となり、その地を剣の聖地と改名するはずだったと言う。


「その第六天覇王と名乗った女性は、身体強化が中心だった剣術の歴史を覆し、肉体と技術を鍛え、魔法はあくまで補助的な扱いに変えていったんだよ」


 身体強化と言えば、一気に全身の筋力を強化する魔法だが、第六天覇王は腕だけ、足だけと一部位のみを強化する。


 さらにそれに、風の魔法を使いスピードを上げたり、水の魔法で足場を崩したり、魔法と剣を複合的に用いるようにしたそうだ。

 また、防御面でも、全身を一気に硬化させるのではなく、剣の刃が当たる部分のみを硬化させるなど、魔力の消費を極限まで抑えて戦う戦術を編み出した。

 その結果、剣の実力を競うのに魔力の大小はあまり関係がなくなっていった。


 しかし、第六天覇王…………どっかで聞いた名前だなあ。


 きっとソイツ、どっかの国からの転生者じゃね?

 やっている事も、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ使う。

 ビジネスでよくある、ジャストインタイムを剣術に当てはめたような気がする。


「いや、簡単に言うけどねぇ、必要な場所だけ強化って、しかも戦いながらよぉ、ありえないわぁ」

「時代が変わるときは、そのありえない出来事が起きる時だって偉い人は言っていたよ」

「むう……そうやあのエルフ、私の使っていた身体強化となんか違う雰囲気があったような気が……」


 ルーリアさんが?

 まあ魔法のエキスパートであるエルフなら、そういう身体強化の使い方を知っていてもおかしくないか。

 それでもエルフが剣術を使うと言うのは想像できないけど。


「ねえファニス、今のその、なんだっけ、大宝国? の王様とアポとれない?」

「ほっといても向こうからなんか言ってくるわよ、なんたって、前王様が亡命してきてんだからサ」

「それはないわよぉ、もう、あっちは私の事には興味がないだろうし」


 敗者には興味がない、追手の一人も送り込んでくることはないだろうと。


「そんな卑怯者は剣王にはなれない、そういう国よ~、あそこは」

「そうだね、ルーリアさんもそこまでしないだろうし」

「ねえスリフィ、さっきから、今の剣王、ルーリア・緑の事を知っている様な口ぶりだけど、どっかで会った事があるの?」


 そういやファニスはオレ達とルーリアさんの関係を知らないか。

 オレとスリフィは、ルーリアさんとの関係をファニスに説明する。


「ふ~ん……ま、そうなら私の方から、なんらかの接触を図っておくわよ」


 ファニスはオレ達にそう言って、ヴィン王国の王都へ向かって行った。


 で、その日の夜、寝ているとなんだか体がユラユラ揺れる。

 さらに、波の音が耳に響いて来る。

 しかも、なんか重い。


 なんだろなって目を覚ますと……


「あら起きちゃったわね」


 そこには半裸のロウさんがオレに跨っていた。

 えっ、なんで?

 もしかして夜這い?


「別に大声だしてくれも良いわよぉ、むしろ、そっちの方が興奮するわぁ」


 辺りを見渡すと、知らない部屋だった。

 しかも、地面が揺れている。

 遠くから波の音の様な物も聞こえる。


 まさか…………船の中……!?


「剣の聖地、行きたいんでしょ? 私が連れてってあげるわぁ――――で、これは報酬ね」


 と言って、なぜかパンツいっちょになっているオレのお腹に指を這わす。


「………………」


 いやまあ、そっちが良いなら別にオレは構わないんですよ?

 ロウさんなら、見た目は幼くとも立派な大人らしいですし。

 ええ、まあ仕方ありませんですよね。


 でも終わったら帰してください。


「あら、すっかり萎縮しちゃって、大丈夫よぉ、優しくしてあげるからぁ」


 そう言いながらオレのパンツを脱がそうするロウさん。

 だが、…………


「あれ?、んんっ……? ん~~! えっなんで? 脱げない!?」

「えっ!?」


 オレの上から降りて、必死にパンツを引っ張っているがビクともしない。

 オレも脱いでみようとパンツに手を掛けたが伸びはするものの、腰の部分がぴったりくっついて脱げる気配がしない。


「「………………」」


 オレとロウさんは目を見合わせる。


 そいうやこのパンツ、寝る前にスリフィの奴が新作だよって、これなら大丈夫な奴だからって言って持って来た奴なんだよな。

 何が大丈夫なのか分からないが、まあ大丈夫なんだろうと思って履いたのだが。

 全然、大丈夫じゃなかった。


 ――――――やりやがったアイツ!!

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