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第4話

「シフ・ソウラン、彼はこの国の第4王女と恋仲であったそうだよ」


 それはそれは、とてもロマンチックなシンデレラストーリーが描かれて、農村で生まれたみすぼらしい男の子が、王女様のハートを掴むまでの経緯を後世ではいろいろと作られたらしい。


 第4王女か……確かに面識がある。

 さすがに農村の子せがれが王女様に取り入るのは無理があると思っていたのだが……

 ただ、あのままあそこで暮らしていたとなると、王女様ぐらいに取り入らないと生きていけなかったかもしれん。


 貴族にだって目をつけられていたしな。


「とまあ、第4王女と婚姻を結び、夫婦になった所までは良かったんだよね~」


 そこはまではハートフルなストーリー。

 後世でも人気の物語が多数生まれたそうだ。

 まさしくシンデレラの様な物語だったのだろう。


「しかし、物語はそこで終わっても、人の人生はまだまだ続いていくんだよ」


 そう、シンデレラだって王子と結ばれる所までしか描かれていない。


 その後の彼女は幸せだったのだろうか?

 彼女は王妃として立派に勤めを果たせたのであろうか?

 そもそも、顔だけで后を選ぶような王子様が王様になれたのだろうか?


 ハッピーエンドは終わりじゃない、次のハッピーエンドを目指すための始まりなのだ。


「さて、絶世の美男を手にした第4王女、するとまあ欲も膨れる」


 世界一の美男を手にしたのだ、そんな自分がなぜ、上の姉たちに劣ると言うのか。

 という不満が日々、膨らんでいった。

 それは遂に、国の簒奪を考えるまでに至ったのだ。


 水面下で帝国と手を結び、情報を流す代わりに次の王を自分にしてもらう約束を取り付ける。


「最初は帝国もその約束を守って、第4王女のクーデターに協力しこの国の王を第4王女にした」


 だがその後、とある条件を突き付けて来た。


 絶世の美男と言われるシフ・ソウラン。

 彼女の夫である彼を帝国に差し出せと言って来た。

 帝国皇帝がシフ・ソウランに一目惚れしたのだそうだ。


 モテますねえ、その世界線のシフさんは。


 きっとソレ、オレの事じゃねえわ。

 誰かがオレの名前を使っていたんじゃないかなあ。

 前世でもモテない女性はモテなかったのと同じように、例え人口比が少なかろうと、モテない男はモテないんですよ?


「しかし第4王女は圧倒的な戦力差があるというのにそれを拒否、帝国との全面的な戦争が始まる」


 最終的に第4王女は斬首、シフ・ソウランは帝国女帝の側室になったのだった。


 そして今度は帝国の没落の始まり。

 絶世の美男を手にした帝国皇帝は彼に首ったけになり、政務もおろそかになり、毎日、彼の元に入り浸りになる。

 当然、他の夫達の不満もたまるし、正夫など毎日が荒れて手の付けられない状態になっていたそうだ。


 亜竜を呼び起こし、帝国に反逆を始めた者がいると聞いた時は、これで女帝も目を覚ましてくれる、と誰もが歓迎したほどだ。


 そしてそれが裏目になる。

 中央からは何の指示もない。

 亜竜に対する対抗手段も持ち上がらない。


 小さいうちにたたいて置けばまだしも、気が付けば、手をつけられなくなるほど巨大な組織になっていく。


 全てが手遅れになった事を気づいた時にはもう遅い。

 シフ・ソウランに骨抜きにされた皇帝もカリスマをすっかりなくしていた。

 ろくな抵抗もできず、次々と落とされていく主要都市群。


 最後は帝国皇帝も第4王女と同じ斬首の憂き目にあうのだった。


「なるほど……傾国と言われるだけの事はある」

「いやいや、傾国の伝説はここから始まるんだよ。まっ、ここからは真実かどうか分からない事もいっぱいあるんだけどね~」

「えっ、まだあるの?」


 傾国の美男、それが虜にするのは人だけはなかった。

 そう、亜竜ですらも虜にしてしまったのだった。

 帝国が滅んだ後、シフ・ソウランの身柄は軟禁状態にあった。


 正直、新たな王となった男性も、彼の取り扱いにひどく悩んだそうだ。


 彼のおかげで帝国を倒せたと言っても過言ではない。

 帝国の系譜として一緒に斬首するには忍びない。

 また、そうする事による市民の反応も怖い。


 かといって無罪放免で放出する訳にもいかない。


 結局のところ、後宮に軟禁しておくしか手がなかった。

 ああ、良いな、そう言うの。

 要は食っちゃ寝して過ごせるんだろ?


 もうそれで良いよ、それで終わりにしてほしいよ……でも続きがあるんだろ?


「亜竜がシフ・ソウランに惚れてしまってね、王の言う事を聞かなくなったんだよ」


 そこで嫉妬に狂った王は、勢いに任せて、シフ・ソウランを斬首してしまう。


 えっ、オレが死んじゃうの?

 全然、始まりなんかじゃないじゃん。

 終わってんよ。


「いやいや、ここからが凄惨な物語の始まりなんだよ~」


 それを知った亜竜が狂ったように暴れ出す。


 王はおろか、王都の住民を一人も残らず血祭りにあげ、それに飽き足らず、周辺の町を襲い次々と血の海に変えていく。

 そうしながら亜竜は、とある場所を目指して進んでいく。

 その、とある場所とは邪神が眠るとされている場所。


 亜竜は邪神にシフ・ソウランを蘇らせてもらおうと懇願しに向かったのだ。


「そこで邪神は亜竜に告げる、この世界に住む、半分の人間の魂と引換にシフ・ソウランを蘇らせてやろうと」


 後の世に邪神災害と言われるその事件。

 当時、本当に人類は半分に減ったと伝えられている。

 えっ、怖いどころの所業じゃねえんですけど。


 もしかして、シフ・ソウランさんは本当に蘇ったので?


「蘇ったよ、不老不死のアンデッドとなってね」

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