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第3話

「だからボクは、これからこの世界で起きる出来事を知っている!」


 そう言って、ズィっと顔を近づけてくる。


「どう、ボクと一つ取引をしな~い?」


 未来の出来事を知りたくないかい? と言ってニッコリと嗤う。


 オレはごくりと唾をのみ込む。

 いったいどんな取引をしようと言うのだ。

 未来の出来事を知る代償など、オレは持っちゃいないぞ。


「ボクと一緒にお風呂に入ってよ」


 は?


「あ、いやいや、さすがにソレは高望みしすぎだよね。じゃあさ、裸の見せあいっことかどう?」


 どう? と聞かれましても。


 前々からちょっと思っていたんだが。

 いや、自分の教え子に対して言う様な言葉じゃないんだが。

 コイツ、結構なおバカさんなんじゃ?


「良いじゃないか少しぐらい、減る物じゃないし」


 今、君がやっている事はですね、前世で何歳だったか知らないけど、良い歳したおっさんが、12歳のいたいけな少女に向かって、裸の見せあいっこをしようって言っているのと同じなのですよ。


 完全な事案ですわ。

 いやまあ、それで未来の出来事を知れるなら安いモノなんでしょうが。

 それに、こっちはこっちで精神が大人なので、いたいけな少女には当てはまらないんだけどさ。


「裸を見せるぐらい構わないぞ」

「ほ、ホントに? だったら、ついでに今、履いてるパンツも頂戴よ」

「調子に、のるな」


 良いじゃない減る訳じゃないし、などと言っているが、そっちは明確に減るぞ。


 あと、下着は貴重品なんだから持って行くのはよしてください。

 実はこの世界、男も女も下着を履くと言う習慣があまりない。

 この世界の女性連中は、上だろうが下だろうが、異性に見られても恥ずかしいと言う概念を持っちゃいない。


 たとえスカートだろうが、その下はマッパだったりする。


 衛生上、よろしくないんじゃ、とは思うのだが、その衛生面も魔法でなんとかする人種だ。

 わざわざ、窮屈な下着を履く必要性も感じられないみたいだ。

 まあ、おかげで眼福ではありますが。


 そして男性の場合は、単純にズボンを履いているから別に良いじゃない精神だ。


 産業の中心となる女性が下着をあまり履かないので、下着その物が流行らない。

 売っていると思ったら、大体、エッチな下着ばかり。

 なので、オレの下着は特注品だったりするのですよ。


「この時代では下着を履いてる男性が少ないからね、貴重品なんだよ」


 だから、その貴重品を持って行くなと言っているんだよ。


「それじゃあ、まず、とっておきの情報から出すね」


 おい、まだ下着の件は了承していないぞ。


「この国、たぶんあと5年ぐらいで滅びます」

「へっ……?」

「ボクさ~、歴史とか苦手でさ~、詳しい年代を覚えていないんだけど、まもなく帝国が攻め込んできます」


 それから僅か2年の間に、国土は蹂躙され、王都は陥落するのだと言う。


「まっ、その帝国もさ、そっから2年後には滅ぶんだけどね」


 この国を制圧した帝国は調子に乗って、さらに周辺国をも侵略していく。

 あちこちで恨みを買いながらどんどん大きくなっていく帝国。

 そんな恨みが募り募って、とある国の生き残りが亜竜を目覚めさせ、その亜竜の力を用いて帝国に反逆を開始するそうだ。


「その亜竜を従えた人物は男性だった。その人は帝国を討ち滅ぼし、巨大国家を立ち上げたのだった」


 その男性が国王となり、帝国を滅ぼした勢いに乗って、瞬く間に周辺国も併合していく。

 それは歴史上で、最も広大な版図を持つ国家に成長するのだと言う。

 だが、その国家も長くは続かない。


「えらい戦国時代だな」


 オレがそう言うと、なぜかジッとオレの顔を見つめてくる。

 何、オレの顔に何か付いてる?

 天使は穴が開くほどオレの顔を見つめたかと思うと、ふと、問いかけてくる。


「先生の生まれた村ってソウラン、であっていますよね」

「そうだね」

「そして先生の名前はシフ、であっていますよね」


「…………そうだよ」


 他にオレの村でシフと言う名前の男性は居たか、と聞かれる。

 いや、いないよ。

 そもそも、人に付けるような名前じゃねえんだわ、ソレ。


 この世界でシフと言うのは、死と布。


 ようは赤子を間引くときにつかう、濡らしたタオルを指す。

 何て名前をつけてくれるんだよマミィ……

 せめて逆にして不死とかにしてくれれば、まだマシだったのに。


 毎回、自己紹介の時に、えっ? て、聞き返されるよ。


「シフ・ソウラン、千年後の未来までこの名前は、歴史上、最も有名な悪男として語り継がれている」


 えっ!?


「数々の国を破滅に導いた、傾国の美男、その人の名がシフ・ソウランであったのです」


 オレが――――――傾国の美男?


 いやいや、そんなはずがないだろう。

 そんなイケメンならもっとイージーな人生を歩めたはず。

 女尊男卑の世界であろうとも、イケメンは別なのですよ。


 オレが生まれた村でも、イケメンは女たちに囲まれて、何不自由のないハーレムの様な暮らしをしていた。


「まっ、そうなんだよね~、ボクも最初に見た時、えっ、なんか違う、って思ったよ」


 それで初めて会った時、ガッカリしてやがったのかコイツ。

 というかオレを名指して呼んだ理由もそれだな。


「いやほら、傾国の美男と同じ時代に存在したら、そりゃ、一目、見てみたいと思うじゃな~い?」


 まあ、確かに。

 オレもクレオパトラや楊貴妃などが実在する時代にタイムスリップしたら、絶対に見に行くわ。

 それでなに?


 オレはこの先、一体、何をやらかす事になっているの?

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