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ルールのない人  作者: 小南葡萄
2/14

朝ごはん

小南葡萄です。私は米派です。

頭がいたい。状況が理解できず、時計を無意識に見ると。十時、十時?

パッと起き上がったら、綺麗だったはずのテーブルがまた汚れているのに気がつく。

夜中に、というか早朝に掃除したことを忘れそうになったくらいに。

おかしい。と思いながら重い瞼を上げつつ、今朝の続きをするように片付けて、あとはめんどくさくて諦めた。

ストン、ローテーブルの前で腰を落とす。Bは確実にさっきから俺に怒り続けている。

でも、それを冷静に聞けるほど、頭は回ってない。

「ていうかお前さ…まず電気つけながら寝るとかキモすぎるだろ。それとな」

ぼーっとしている俺の髪を掴んで揺らしながら説教された。

俺が掛け布団を苦労して出したのも知らずに、出した後汚れている部屋がさらに汚れて、Bに怒られまいと必死に片付けたのに、私の部屋が出る時よりも汚れていると、仕事への腹いせに俺を言葉で殴っているのか?元々汚しているのは誰だ?

反論が揺れながらポンポン浮かぶが、口を動かすのはめんどくさかった。

「ごめんなさいは?」

「ごめんさい」

全く心がない返事に懲りたのか、

「もうしない?」

と、女性特有の少し甘い声を出した。

「しない」

「よし」

と社交辞令が済んだら俺を勢いよくハグする。両手両足を使って座っていた俺にダイブして、俺の体を締め付ける。痛い痛い痛い痛い。

彼女はこれを仲直りのルールと言っている。お互いに改善点を話して分かり合ったら、許しのハグをするというルール。元彼と良くやっていたと酒で喉が焼けているBに、俺が転がり込んでからすぐに教えられた。

あと、俺も一緒にハグしないとまた怒られるという言われてないルールもある。

ハグの勢いが苦しくて毎回息ができなくなるから、何も言えずじまいになってしまった。いつもこうだ。

離した手をそのまま俺の頭に乗せたと思ったら、立つための原動力にされた。痛くて、ゔんっという声がでる。

Bが立ち上がるときにフワッと感じる女の匂いがより腹を立たせる。

いい匂いでウザい。

「じゃ、朝ごはん作って」

テーブルに寂しそうにしていたカップ麺をなかったかのように倒れている俺を覗き込んで命令した後、すぐに帝国の一部だった部屋着を取り出す。

俺は諦めて小さなゴミ屋敷みたいな冷蔵庫から食パンと牛乳と卵とソーセージを取り出した。

この家に来たときに課せられたルールの一つ。

【料理を頼まれたらすぐに作ること】

即席の契約書にそう書かれていた。サインをし終わった時に最初に下された命令でもある。

最初に見た時のキッチンの姿は酷すぎて今でも鮮明に覚えている。

帝国から続いていた街並みはとても栄えていて、俺の仕事は最初その整備から始まった。

料理をする場所がないと言ったら、なら作ればいいと、何も考えていない口振りで話されたのをよく覚えている。

そこだけはその日から常にキッチンだけは片付けていて、Bも流石に手を出せなくなっている。

カチッジジジジジジ。卵をフライパンに割ってソーセージも一緒に放り込む。

白く染色されてきたら水を追加して蓋を閉じた。ジュウウウウウと蒸発音を背後に、いつ壊れてもおかしくないオーブンにパンを一枚入れてスイッチを入れ、振り返ると、俺がさっきまで寝ていた布団にBがくるまって寝ていた。

布団には脱ぎ捨てられた上着とジーパンが布団の端に少し重なっている。

これだから片付かないんだ。私の物には洗濯の時以外触るなと言われているから片付かない。

ゴミになったらお前のものだと言ってくるから腹が立つ。

そんな溢れ出る不満にふけていると、さっきまで琥珀のように輝いていた卵黄が、固まった黄砂のようになっていた。急いでソーセージを返すと、しっかり焦げている。

やばいっ。コンロを消し、すぐにオーブンに手をかけて開けて見ると、小麦色の二枚のパンと焼き上がった香ばしい匂いとが同時に顔を見せた。

緊張していた顔が少し緩み、肩を上げていた焦りも少し落ちて、ふう。と漏れるようにため息をついた。

目玉焼きをパンの上に乗せ、一気に食べるなんてもったいない。と、思いながらも別にして怒られるのは俺なので、重ねてそばにソーセージを飾った。

ソーセージもパンの上に乗っけてと怒られたことを思い出して、ハサミで切ってボタンのようになったソーセージを目玉焼きの上に置くと、ポロポロ落ちてしまったので、一回目玉焼きを外してソーセージを並べてから目玉焼きを重ねた。

簡単なレシピなのに一人のわがままで手間がかかるなんて。と少しむすっとした表情のまま、テーブルの、Bにできるだけ近いところに置いた。

「どーぞ」

という言葉に反応してゆっくり起き上がるB。これじゃあ俺が犬なのかBが犬なのかわからない。

起き上がってテーブルに着く前にコップと牛乳パックをテーブルにおいて、牛乳を注いでからテレビをつける。無意識にできるようになった分、雑になり、牛乳の白い水玉模様がテーブルについてしまっている。

テレビでは、今シーズンのスポーツについてやっている。

「いただきます。」

彼女なりのこだわりなのか、こういう礼儀はしっかりする。不思議というよりも、鍵のかかってない箱に何かを隠しているような怖さがある。さほど気にするものでもないが、気になるととことん気になってしまう。しかしルールの中の一つ

「私のことはせんさくするな」

と言われているせいで聞けないから気にしないようにいている。なんで聞いていけないのかはさっぱりわからない。

「パンがサクサクしない」

1アウト。

「目玉焼きがトロトロしてない」

2アウト。

「おいしくない」

3アウトチェンジ。

しかし、ニュースではホームランを打つ瞬間でカキーンという音が部屋に響き渡る。

空気を読めないニュースよりかは俺は幾分かマシだと思った。

「ごめんね」

とない感情をパンを食べながらテレビに向かって言うと、

「ソーセージが中に入ってるのは好き」

なぜ散々貶した後に褒めるんだ。どっちの気持ちになってほしいんだ。

食べ終わったらすぐに食器を片付けないとまたゴミに埋もれてしまうので、俺も最後の一口をひょいと入れて、咀嚼しながら食器を片付けて台所に持っていきその流れで水を出した。

スポンジを水に湿らせてから洗剤につけ、ぎゅっぎゅっと泡立たせてから皿のラインをなぞる。

吸い込まれるように内側に向かって洗っていき、全体的に洗えたらあとは一気に水で流す。

その瞬間水が少し弱くなって、あ。と思って風呂場を見ると、電気がついていた。

Bの身体が淡いシルエットで見えている。

実はパスタが一番好き。

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