専属メイド
小南葡萄です。
Q.小南葡萄さんは普段どのように執筆活動をされているのですか?
A.えーーwうわーwwえへーへーwわかんなぁいwわかんなぁぁいwwって言いながら書いてます。
はっ。あの救世主の声を思い出し、外をみると、まだ明るい。
Bにブランケットをかけてあげて、少し、Bが気持ちよさそうに寝ているのを見ていたら、まだここにいたいと思ってしまう。
でも約束したことは守らなければならない。これもBに教わったことだ。
救世主が畳んでくれた服を着て立ち上がり、俺は玄関のドアノブを持って、振り返り、またBを見てしまう。
Bは気持ちよさそうに寝ている。惜しむ気持ちをドアノブに込めながら、こっそり捻り、ゆっくりと、外を出た。
古臭いアパートを離れ、高層マンションにまた首を痛くし、高級住宅街を横切ってコインランドリーに向かう。
だんだん、日が落ち始めているのが見える。昔のスマホを取り出して、時間を見ると、三時四十分と書かれていた。
コインランドリーが見えた時、同時に昨日見た黒い車が見えた。バッと車のドアが開き、あの救世主が堂々と襟を正しながら出てきた。昨日のことはあまり覚えていないが、昨日よりかはしっかりとした服を着ている気がする。ビルに出たり入ったりする時用の服装だ。
「十分前行動。サラリーマンとしては完璧だな」
「俺はゼブラです」
「ああ、ゼブラ。ゼブラだったね、さ、お入り」
と後ろのドアが開かれ、多少ダグラスに押されながらも、自分の意思で乗って、ドアがバンっと閉じられた。
車はバックしたあと、すぐに前進し始めた。後ろから押されて、前から押されて、これで体が揺れて、少し気持ち悪くなった。すると、窓が下にゆっくりと吸い込まれていき、強い風が吹き始めた。
「寒い…」
「嫌いか?シャツ一枚でよく過ごせるな」
窓が少し戻ってきた。いつもはこんなに風が吹いていないのに不思議だ。そっと左手を風に当てる。持っていた熱をすぐに奪われ、すぐに戻して右手で隠し温め始めた。
気づいたらもう、知らない街並みが、知らないまま過ぎ去っていく。どんどんビルが増えてきて、最後にはビルしかない街になってきた。Bは一人で大丈夫だろうか。あんなに強気な人だ。きっと大丈夫。昨日の姿が過ぎって、目頭が熱くなっていく。だめだだめだ。その前に決めたことなんだから。また具合悪くしてないといいけど。
「Bのこと、好きなのか?」
「え、ええ、ついさっきのことですけど」
「ほおそうか、はっはっはっ。殺し屋に恋する男か」
席に耳を当て寄りかかりながら、またBの顔を思い出す。なんでダグラスは急にそんなこと聞いてきたんだ。タイミングが悪い。
「Bが殺し屋って本当なんですか?」
「ああ。ライオンのような女だ。ライオンはな、オスは戦わないんだよ。基本狩をするのはメスの方なんだ」
テレビで見たことがある気がする。怖い顔した猫みたいなやつだ。髪の毛が顎まで繋がっていて、迫力がある。あいつは、戦わないのか。
「あなたはなんでBを知ってるんですか」
「私が、雇い主。私がお金を払って、Bが人を殺す。それだけの関係だ」
ガタンと車が揺れて、体も一緒に揺れていく。ダグラスがいる席を見ることができず、上にある鏡を見て、ダグラスの厳格な目を再度確認する。気持ち悪いのと、Bがいないせいで不安になってきた。
「なんで、俺を連れていくんですか」
「それは、きみが特別な人間だからさ」
これからネズミとして実験を受けて、テレビで流れていたように酷い目に遭わされるのだろうか。どうも想像しずらい。
「さあ、つくぞ」
気づいたら、周りには大きな水溜りの上の道路を走っていた。外だけに集中していると、まるで空を飛んでいるようだ。鳥たちも平行に飛びそのまま高く飛び上がった。前を見ると小さい島のようなものがあり、近づくたびにどんどんデカくなっていく。すると、急に前にある道が、下り坂になり、次に見えたのは透明な壁の奥にある、水溜まりの中の魚たちだった。それぞれが光沢を見せていて、自由気ままに泳いでいる。顔を窓にくっつけて、初めて泳いでる魚を見る。テレビで見るより全然綺麗。触りたいけど、まだ風が強くて手が出せない。少し前から押される感覚が弱くなったと思うと、風も弱まってきた。すると、前にある黒い壁が上下に豪快に開き、俺たちは吸い込まれるように入っていき、止まったかと思うと、次はぐるりと回り始め、今度は車ごと下に下がっていった。
「目がキラキラしているな。そんなに楽しかったか?」
ダグラスが座席に腕を掛け、振り向きざまに聞いてくる。俺は思わず頷いた。まるでアニメじゃないか。
下がりきると、同じ白と黒のふわふわした服を着た女の人が三人。どの顔も整っていて、花壇のように並んでいる。
「おかえりなさいませ、ダグラス様」
とお辞儀までシンクロしていた。ダグラスの上着と荷物を取り出し、二人は颯爽とどこかへ行ってしまう。
そして一人取り残された。この人も綺麗。彼女の顔を観察していると、ダグラスが腕を回し彼女の肩を掴む。彼女はダグラスの馴れ馴れしいそぶりに一切反応を見せない。
「こいつがお前の専属メイドだ。名はサンドラ。どこへ行っても働けず、ここで仕方なく働いている。不甲斐ないやつだが、仲良くしてやってくれ」
ダグラスのセリフがどうも臭く、やっぱり相当偉い人なんだと確信した。
「では、私は一旦これで。今日は疲れているだろうから、ゆっくり休みなさい。あとで夕飯を運ばせるから」
と、先へ行ってしまった。気まずい、あっちを見たりこっちを見たりして、爪をいじったりして、時々目を合わせては逸らしてしまう。
「シモ様。サンドラと申します。至らないとこもあるかと存じますが、どうぞよろしくお願いします」
まるでロボットのように持っているセリフを喋って深々とお辞儀する。ロボットを見たことはないが、多分こういう感じなんだろう。小麦のような金髪で、肩にかからない程度の髪が、女の子らしさを出している。そばかすがBに似ている、少し親近感が湧いた。袖がふわっとしており、白いフリフリのエプロンに黒いロングスカートがよく似合っている。
「あっでもシモじゃなくて、ゼブラだから」
サンドラは少し目開いて、俺を確認したあと、すぐに閉じた。
「ダグラス様にはシモ様と承っておりますが、かしこまりました。左様であればゼブラ様とお呼びさせていただきます。ではこちらへ」
やはりロボットだから心は開きづらいのかな。
最後までご視聴いただきありがとうございました。書くときの語彙力のせいで喋るときの語彙力がなくなるって、結構あるあるだと思うんですよ。
ご意見、評価、感想等々お待ちしております。次回は、ゼブラくんワクワク回です。お楽しみに。