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麗しの歌声は、砂漠を潤す  作者: 水花光里
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龍神の宝

説明が長ーい! と、飽きずに読んでいただけると嬉しいです。

前世の愛を貫いて再び巡り合った二人。幕開けですー!

   (うるわしの歌声は砂漠をうるお

  龍神りゅうじんの宝


  広い、広い、とてつもなく続く砂漠。

 そこに、突然現れる緑に覆われた大地。

 その中心に、霧に煙る湖がありました。

 その湖は、一年に一度だけ起こる、不思議な現象があります。

 それは、湖を取り囲む霧が晴れると、何処へともなくサラサラと湖の水が引き始める。

 ざわざわとざわめきながら、湖の中から、かつてエメラルドの森と呼ばれた森が姿を現すのです。

 緑の木々は、日の光を浴びて煌めき、美しい姿を現します。

 しかし、人々は、決してこの森に近づくことはありませんでした。

 何故なら、この森に入って、帰ってきたものは一人もいなかったのです。

 日没になると森の中に入った人も、全てのみこんで、またサラサラと水があふれ、湖の中に消えていきました。


   ― * ―

 

 夜明けの湖は、濃い霧に覆われ、一寸先も見えないほどだった。

 一陣いちじんの風にまぎれて歌声が聞こえてくる。

 エルメリッド王国創生そうせいの歌。

 砂漠に住む龍神が、異国から来た美しい乙女に恋をして、砂漠にエメラルドの湖を創り、国を創った。

 その様子を歌につづった歌物語。

 どこか懐かしい気がする甘く切ない歌声に心を囚われる。

 何処から聞こえてくるのだろう?

 途切れ途切れにしか聞こえない歌声は、焦燥感しょうそうかんを誘い、

 求めずにいられなくなる。

 

    ― * ― * ―


 白いレースのカーテンが、風に揺れている。

 その奥に、長い黒髪の乙女が眠っていた。

 優しい面差しの、白い額には、うっすらと汗がにじんでいる。


     ***―***


 静かに佇む湖は、深いエメラルドグリーンの鏡面の様に美しい。

 その湖面が突然大きく揺らめき、盛り上がっていく。

 湖の中から、虹色に輝く銀のうろこ、金色に光る長い髭の美しい龍が姿を現した。

 そして、湖と同じエメラルドの瞳で見つめ、弱々しく訴える。

「私の藍潮あいしお、…愛する者よ…陽扉鑑ようひかんを探しておくれ…力が、抜けていく。ここは…苦しい…。早く、私を…ここから出してくれ…洪水が…世界が、滅びてしまわぬ…内に…」

 その姿は薄れて、今にも消えてしまいそうに見える。

「お許しください。龍神様、…私には、力が及びません」

 彼女が、幼いころから幾度となく見ている夢だ。

 いまにも消えてしまいそうな龍神を見るのは、胸が締め付けられるように切なく苦しい。

 助けてあげたいのに、薄れてゆく龍神の姿を、どうする事も出来なかった。

「…憎しみは、自らの心をも苦しめるもの…憎しみに囚われた者を…開放してやってくれ…」

 龍神は、長い金色の髭を震わせ、苦しそうに訴えた。

 龍神の言葉をかき消すように黒い影が、スルスルと湧き上がると、見る見る龍神を黒く染めてゆく。

抗うことも出来ず、苦しそうにあえぎ、龍神は頭を振り仰ぎ、すがるように足を伸ばすが、その体を無残に黒く染められていくのだった。

「やめて! お願い! 」 

 そう叫んで飛び起きた。

「アザリー様、お目覚めですか?」

 侍女のアインがカーテンを引いて部屋の中に光を取り込むと、長い黒髪が、流れる様にさらさらと揺れ、光を反射する。

 白い肌に大きな黒い瞳、愛らしい赤い唇が、印象的な美少女だ。

 額の汗に手を触れながら、蒼白な顔で立ちあがろうとして、ふらつく。

 あわてて、侍女のアインが駆け寄りささえた。

「アザリー様」

「大丈夫よ。ちょっと、めまいがしただけ」

 気丈にそういいながらも、顔色は青ざめ、手は氷のように冷たかった。

 まるで、生気を抜かれたかのようだ。

 龍神に襲い掛かっていたおぞましい黒い影が、自分にもまとわりついているかのように指先も、足元も冷たかった。

 しかし、手足の冷たさよりも、心の中を拭きぬける寂しさが、胸を苦しめる。

 何かが足りない。

 龍神の夢を見るたびに感じる、この気持ちは何なのだろう? 

 会いたい…。誰に…?

     

        ― * ― * ―


 湖を隔てたメリドで、ダハブ王子は、今日も突き止められなかった声の主の面影を思い浮かべて、虚しくため息をついた。

 何度霧の中を捜し歩いた事だろう。

 日が昇り霧が晴れても、その姿を見ることは出来なかった。

 ダハブ王子は、目を伏せ、沈んだ顔で、足元で風に揺れる草花を眺めた。

「ダハブ王子、あの声は、わが国の者ではないかもしれません」

「では、何処から聞こえてくるというのだ」

「おそらく…、湖の向こう側から、霧の影響で聞こえてくるのかもしれません」

「エルドから?」

「まれにそういうことがあると聞きます…」

「……。」


        ― * ― * ―


 アザリーは、侍女の、アインと二人で馬を走らせて、湖のほとりへ来ていた。

 馬を下りて、湖のほとりを歩く。

 湖は今日も濃い霧に覆われていた。

 一歩間違えば湖の中に飲み込まれてしまいそうなほど、足元も良く見えないくらい濃い霧だ。

 その濃い霧が余計に恐怖を生む。

 霧に覆われた湖面から黒い手が伸びてきそうな気がしてしまうのは、夢のせいだろうか…?

 アザリーは、龍神がこの霧にむせぶ湖の底で苦しんでいるような気がしてしまって、いる筈のない龍神を探して、恐る恐る湖を覗き込んだ。


 今にも湖の中に入っていきそうな主人を心配してアインが声をかける。

「アザリー様、お一人で遠くへいかれては危険です」

「ねえ、アイン、メリドがどんな所か知っている?」

 いつもながら、唐突な主人の問いかけだった。何時もの事なので深く考えないことにしている。

 深く考えていたら、この主人の思考に振り回されて訳が分らなくなる事を、アインは、既に何度も思い知らせれ学んでいた。

「ぞんじません。ですが、…王子なら、たいそう美しい方だそうでございますね。まるで龍神の生まれ変わりのような方だそうです。一度でいいから、お顔を見てみたいものですわ」

 龍神の生まれ変わりの言葉に、少し、興味を感じたが、すぐに気を取り直す。 

 いけない敵国の王子に興味を持つなんて!

「メリドの王子様? 確か、ダハブヌールラエド・ナハルエルメリート・イウサール。切れ者で頭が良いけど意地悪で、抜目が無くて、人嫌いなんですって?」

「いいえ! 美しいと言う事は、其れだけで、世のため、人の為になるのです。美しい殿方は、その存在だけで幸せを下さるのですわ」

 美形好きなアインの何時もの口癖だ。

 苦笑いしながらアザリーはため息を一つついて、ポツリと呟く。

「やっぱり、メリドに行くしかないかしら」

 ほっこりと夢に浸っていたアインは、聞き捨てならない言葉を耳にして、とんでもない事を言い出した主人に驚く。

 この主人は、言い出したら聞かないところがあるのだ。

 かなり本気そうだと、長年の感があせらせる。

 慌てて、思いなおしてくれるように懇願する。

 アインは泣きそうな顔で必死に説得しようと試みた。

「メリドへ行くなんて、とんでもありません! それだけはおやめください!」

 アザリーは、呆れ顔でアインを見る。

「メリドの王子様に会いたいんじゃなかったの?」

 う! ホンワカしている様で、時々鋭い突込みをする主人なのだ。

 しどろもどろに言い訳をする。

「そ、それは、そうですが、メリドに行ってまで見たいなんて申しません」

「でも、陽扉鑑ようひかんは、メリドにあるのかもしれないのよ。エルドにはもう、何の手がかりも無いんですもの」

 アザリーは、また一つため息をつく。

「それは…、そうかもしれませんね。なにしろ、洪水の起こった時、メリドに攻め込まれて、エルドは壊滅状態で、エルメリッド王国時代からの秘宝も、殆どがメリドに奪われたそうですから! メリドは、危険な敵国です。何かきっかけがあれば、周りの国を巻き込んだ戦争を仕掛けようと狙っています! ですから、アザリー様、決してメリドに関わってはいけません」

 アインは、メリドへの怒りをあらわにして、忌々しそうに言う。

「メリドはダメなのに、王子様は良いの?」

 どういう思考回路なのか、ここが、アインの不思議な所である。

「そ、それは、美しいことに罪はありませんから!」

「うふっ、アインて、ほんとに不思議な子ね」

 アザリーが、笑いながらアインを見ると、アインは、渋い顔をして、開き直る。

「良いんですよ。変わり者といってくださって」

「でも、そこも、アインの魅力よね」

「そ、そうなんですか?」

「そうよ。どんな偏見もせずに、良いものはいいと言えることはすばらしい事よ」

 アインは、一応ほめられたので、気を良くして、嬉しそうにニコーッと笑った。

 アインの笑顔に微笑ましく思いながら、アザリーは、アインから視線を外して、霧に煙る湖を見つめた。

 アザリーにとって、湖は恐怖をそそるものであるにもかかわらず、同時になつかしさを感じていた。

 懐かしい何かを思い出しそうなのに…それが何なのか分らない。

 そのもどかしさと、胸の中を隙間風が吹き抜けていくような、寂しい気持ちを何時も感じる。

 時折その隙間風は冷たくキリキリと心臓を凍らせるようにアザリーを苦しめた。


 今日はなんだか湖が波立ってざわついている。

 湖を見つめながら、アザリーは胸騒ぎを感じていた。

「…龍神が、この地にエメラルドの湖を創って、エルメリッド王国を創る前は、ただの砂漠だったそうよ」

「龍神の力が失われてしまったら、砂漠に戻るのですか?」

「よく分からないの…。夢に現われる竜神様は、何時も苦しそうに陽扉艦ようひかんを探してくれと…、でも、洪水が起こるって言っているわ」

 アインには、理解できない状況に思えた。

 砂漠に戻るのではなく、洪水…。矛盾しているように思ったが、アザリーの顔がとても深刻そうに見えて、それ以上は聞くことが出来なかった。

 アザリーは、記憶の欠片を掴む事ができなくて、すっきりしない気持ちを募らせる。

 湖は、深い霧に覆われ、湖面は白く煙っていた。

 一陣の風が霧を払うと、剥き出しの湖が突然盛り上がったような気がした。

 湖の中から黒い影が伸びてくる…!

 夢の中と同じ幻覚が見える気がして、目をこすって、もう一度湖を見直す。

 湖は、変わらず霧に包まれているだけだった。

 アザリーは、また一つため息をついた。  

 アインは、主人を励ます言葉も見つけられず、自分の仕事に戻ることにした。

「アザリー様、馬を、何時もの場所に繋いでまいります。霧が深くなっていますので、お足元に、お気お付けくださいませ」

「ええ、アイン、あなたは濡れるから、そのまま、物見の小屋にいていいわ」

 アインは、心配そうに、何か言いかけたが、何も言わず、頷いて、静かにその場を下がった。

 アザリーが、こういう時は、一人になりたいと言っているのだから。

     ―*―

 物見と言っても、この霧では、一寸先も見えない状態だが、エルド、メリドの両国を二分する湖には、毎年必ず繰り返される森の出現。

 一年に一度だけ水が引き、同時に湖の中から森が姿を現す。

 かつて、エメラルドの森と言われていた、湖を取り囲んでいた美しい森だった。

 森は、夜明けとともに現れ、日没とともに湖の中に消えていく。

 美しい森だが、この森に近づく者は誰もいない。

 なぜなら、この森に入って、帰ってきたものは誰一人としていなかったからだ。

 この湖が、呪われていると言われる所以(ゆえん)だ。

 人々は森が現れるたび、戻らなかった家族の帰りを期待と諦めの気持ちで遠巻きに見守った。

 

 湖の水が何時引くか解らないが、湖の呪よりも、この季節は油断が出来ない。

 水が無くなれば、メリドからの攻撃を受けやすくなるからだ。

 エルド、メリドは、湖がなければ隣接する隣国である。

 かつては龍神が作ったと言われるエルメリッド王国と言う国だった。

 しかし、何時しか、国は二分しエルド、メリドの間に激しい争いが起こる。

 メリドに攻め込まれたエルドの女王によって湖は大量の水を引き寄せ全てのものを飲みこんで、戦いは終結した。

 その後水は両国を二分する形で残り、今も両国を二分している。

 しかし、必ず一年に一度湖の水は引き、森が姿を現す。それがなぜなのかは、誰も知らない。


     ―*―


 アインが、やぐらの上の兵士に声をかけ、馬を繋ぎ、小屋に入ろうとした時、馬のひずめの音が聞こえてきた。

 馬に乗って現われたのは、白いクルタに身を包み、クーフィーヤをつけた長身の青年。マハムドだった。

「マハムド様、おはようございます」

「おはよう、アイン。アザリーは? 何時ものところか?」

「はい、あちらにいらっしゃいます」

「アザリーは、また、何時もの夢をみたのか…」

「はい、そのようです。その上、このごろは、頻繁に湖が増水していますから、増水をご自分のせいのように思っていらして…」

「ああ、朝方には引いているが、夜ごと農地を呑み込んでいる。だが、それがアザリーに責任が有るわけがない」

「そうなんです。ですが、アザリー様は、藍潮あいしおの名をいただくご自分が何も出来ない事に責任を感じられて…」

「藍潮か…龍神の妻となった、乙女の名というだけだ。王家に生まれた黒髪の王女なら、どんな者でも受け継ぐ」

「アザリー様は、唯一おひとりの世継ぎの王女様ですが、藍潮の名をいただくのは、龍神の力を強く受け継ぎ、龍神の宝を操る力を持つ証でした」

「龍神の宝など、とうの昔に失われた昔話だ」

 マハムド様は、そういって笑い飛ばすが、アザリー様を、今一番苦しめている原因はそれなのではないかとアインは思っている。

 しかし、アインには、それ以上の反論は言葉に出来なかった。

「アザリーの歌だ…」

 霧の中から、姿は見えないが、アザリーの声だとわかる。甘く、優しい歌声が聞こえてくる。

「龍神の夢を見られると、何時も、ああして湖に向かって歌われています。何も出来ない歯がゆさから、少しでも、龍神の心を慰めたいと、お思いなのでは…」

「ああ、そうなのだろう…」

「マハムド様、小屋へ入られませんか? 霧とはいえ、これだけ深い霧では、濡れてしまいます。アザリー様は、もう少し、ああしていらっしゃるでしょうから」

「解っている。邪魔をするなと言いたいのだろう」

「い、いいえ、そのようなこと…」

 アインは、慌てて首をふる。

 本心は、邪魔をするなと言いたいが、王様の姉君を母親に持ち、しかもご本人はアザリー様のご婚約者でもある。

 そのマハムド様に対して、そんな失礼な事は言えない。

 しかし、本心を、見透かされたようで、アインは赤くなってうつむいた。

「気にするな。解っている。アザリーは一人でいたいのだろう?」

「アザリー様は、ご自分の歌声が、未熟だと思っていらっしゃるのです。あんなに、すばらしい歌声なのに…。それで、人に聞かせるのを恥ずかしがられて」

「もっと、自信を持ったらいいのに。アザリーの声は美しい」

「はい、本当に。私は、何時も聞きほれてしまいます。そんな事を言うと、叱られてしまうのですけど」

「はは、アザリーらしい。もう少し訊いていたい所だが、びしょぬれになっていては、盗み聞きをしていたと、ばれてしまうな。姫君のご機嫌を損ねないよう、小屋に入っておとなしく待っている事にしよう」

 このときマハムドは、敵国の王子が直ぐ側まできていることなど知りもしなかったのだ。

 おそらく、あの時にアザリーを隠してしまえばよかったと後悔することになるとも知らず、妙な胸騒ぎを感じながら物見の小屋に入って行った。


  時を超えた出会い


アザリーが、草を揺らす気配に振り返ると、一瞬、湖がざわめいたような気がした。

 霧が揺らめいて突然流れ出したと思うと、払われた霧の先に人の姿が現われた。 

 スラリとした長身の男性。

 深くクーフィーヤを被って、淡い若草色のシャルワニを、翻す。

 そして、ゆっくり歩み寄る。

「霧の中に聞こえる、美しい歌声に引き寄せられてしまいました。突然の失礼を、お許しください。レディ」

 懐かしい声…? 顔も見えないその人に引きつけられ、視線が釘付けになる。

 これは何? 

 なんだか、声が遠くに聞こえる。視界がぼやけて、立っている感覚が無い。体がぐらりと傾く。

 彼は、サッと歩み寄り、倒れるアザリーを抱き止めた。

 アザリーの体は、霧にぬれ、氷のように冷たかった。

 白い肌。愛らしい面立ちの乙女。

 一目見ただけで、全身が震える気がした。

 今まで彼の中に沈んでいた思いが、あふれ出すようにわきあがってくる。

「ああ、やっと見つけた。私の伝説の乙女」

 アザリーは、懐かしく心に響く優しい声に、思い出せなかった記憶がよみがえるような気がした。

 抱きとめられた腕の温もりも、知っているような気がして安堵感をおぼえる。そのまま身体を預け、意識を手放していた。




 目の前で、パチパチとはぜる音と炎の揺らめきに、意識がひきもどされ、瞼を開くと、意識を失う前に見た美しい青年の顔が間近にあった。

 まだ、夢を見ている?

 ぼんやりしながら見つめる。

 炎の灯りが、影を作って、彫りの深い整った顔立ちを、より一層浮かび上がらせている。

 すっと伸びた、綺麗な鼻のライン、切れ長な二重の目に、長い金色のまつげ。その瞳はエメラルド。

 龍神様? 懐かしい優しい人…。やっと、会えた?

 それにしても、顔が近い。どうして?

 考える間も無く、さらに顔が近づいてくる。 

 これではくっついてしまう。と、思った瞬間。

 唇に暖かくて、柔らかい感触が触れる。 

 滑らかなこの感触を、知っているような気がした。

 舌先が、唇を割って入り込んでくるのと同時に、甘い液体が流れ込んでくる。

 とてもいい香りのする、とろりとした液体は、喉を通ると、体が、カッと熱くなった。 

 薬を飲ませてくれたのかしら? おぼろげな意識で、そう思う。

 しかし、唇は離れないままで、魅惑の世界へ誘うように戯れる。

 頭がしびれるような感覚を、初めて教えられた。

 だが、アザリーはまだ、口づけにこたえることを知らない。

 彼は唇を離し、それでも、まだ触れそうな位置で囁く。

「…あなたはまだ、口づけも知らない乙女なのか」

「…?」

 意識がはっきりしてくると、状況がわかってくる。

 さっきから感じていた心地良い暖かさは、彼の膝の温もりだった。

 膝の上に抱きかかえられて、一緒にマントに包まっていたのだ。

 おまけに、頬に手を添えられていて、顔のまん前には、彼の顔がある。まるで身動きが出来ない。

 かろうじて動く瞼を、パチパチと動かして考え込む。

 アザリーの動揺を悟ったように、 

 彼は、顔をはなして、優しく微笑んだ。

「気が付いた? 君は、霧の中で倒れたんだ。めまいでも起こしたのじゃないかな。体も氷のように冷たかったから、此処に運んで暖めた」

 美しい青年は、優しい声で言う。

 しかし、顔は、クーフィヤを深く被っていて殆ど見えない。

 さっき、彼の瞳が龍神と同じエメラルドの色をしていたように感じたのは夢でも見ていたのかしら? 

 それはともかく、どうやら、見ず知らずの人に迷惑を掛けてしまったようだ。 

 アザリーはニッコリ微笑んでお礼を行った。

「ありがとうございます。迷惑をかけてしまいました。此処は、何処でしょう?」

 アザリーは、周りを見回す。木々に覆われ、まるで洞窟のようになっているここは、見覚えがあるような気もする。

 すぐそばに、綺麗な黒い馬が、優雅に草を食んでいた。

 アザリーの笑顔に魅入られて、彼は一瞬言葉を失くした。

 間違いなく黒い瞳だった。

 やっぱり、捜し求めていた乙女に間違いないだろう。

 なんて愛らしい黒い瞳だろう。

 この特上の笑顔を自分だけに向けてほしい。

 心の底からわきあがるような欲望に支配されていく。

 彼は、思わぬ感情に戸惑いながら、少し間を置いて、言葉を繋いだ。

「…此処は、湖の地下通路の入り口だよ」

 彼の言葉に、アザリーは驚いて、警戒する。そうだ、地下通路の入り口は、木がおい茂っていて、人目につかないようになっているこんな場所だった。 

 今は湖の底に眠るかつての、エルメリッド城と、二つの出城、今のエルド、メリドだが、この三つの城を繋ぐ、地下通路があったことは知っている。

 しかし、一般の者には、秘密の通路である。誰もが知っている筈は無い。

 エルドでは、見かけない顔だ。地下通路のような、重要機密を知っている重臣の中に見たことが無い。


歌姫ガナー



「あなたは、どなた?」

 驚いて、じっと見つめるアザリーに、彼は余裕の微笑みを返した。


 彼女は地下通路を知っている。

 ということは、おそらくエルドの王族だ。それなら、伝説の乙女である可能性は高い。

「僕は、ナハル。君は?」

「わ、私は…」

 言葉に詰まるアザリーに、彼はさらりと言う。

「歌姫だから、ガナーだね」 

 あまりにもあっさり名前を聞いたことを、取り消してくれた。

 もしかして、この人は、私の身分を知っているのかしら? 

 まさか、囚われてしまった? 

 逃げたほうが良いのかもしれない。

 しかし彼は、驚き、逃れようともがくアザリーを、しっかり抱きしめて放そうとしなかった。

 もちろん、やっと見つけた伝説の乙女をみすみす逃がす気は毛頭なかった。

 か弱く力のないアザリーには、男の力に抗うのは無理な事だ。

 アザリーの困惑を他所に、彼は、優しい声で言う。

「もう少しこのままでいた方がいい。急に動いたら又、倒れるよ」

「私をどうなさりたいの?」

「君に、力を貸してほしい。洪水に苦しむ人々を救ってほしい」

 思いがけない、彼の言葉に力を抜く。

「…どういうこと?」

「私は、伝説の乙女を探していた」

 さっき、意識をなくす前に、耳元で囁かれた言葉を思い出す。

「伝説の乙女…?」

「龍神の宝を操る者だ」

「! 」

「龍神の宝! あなたは、陽扉艦ようひかんを持っていらっしゃるの?」

「陽扉艦?」

「あ、…龍神の宝ではなく、伝説の乙女を探しているなら、龍神の宝は、既に、 

 手元にあるのかと…」

「龍神の宝のある場所については、解っている。君は、陽扉艦ようひかんを探しているの?」

「私は、龍神の夢を見るのです。龍神は、私に、陽扉艦を探してと、何時も訴 

 える。とても苦しそうで、早くしないと、世界が滅びてしまうと…。でも、陽 

 扉艦の手がかりは、何処にもなくて…」

 龍神のことを思い出すと辛くなる。切なく、胸を締め付け、引き離された恋人を思うような感情が押し寄せてくる。

 何故だろう? 彼を見ると、よりいっそう切ない感情がわきあがってくる。

「そんな顔をしないで。僕が、探してあげるから。君の苦しみを、僕が引き受け 

 るよ」

 ナハルは、頬を寄せて、愛しそうに抱きしめてくれる。

 アザリーの思いつめた瞳から、涙が溢れ出した。

 今まで、誰にも言えなかった思いを受け止めてもらえた安心感だろうか? 

 何故、こんなふうに話しているのか解らない。

 ただ、腕のぬくもりが懐かしくて、心の隙間が満たされていくように感じている。

 ナハルがポツリと言う。

「僕は、君を迎えに来た。もう、一人で苦しまなくてもいい。一緒に行こう」

 唐突な言葉に、何のことか解らず、聞き返した。

「え?」

「君は、伝説の乙女だ。龍神の宝を操り、世界を救う者」

「…伝説の乙女? 私が?」

「宝を操れる者だからこそ、龍神は、夢というかたちで、君に救いを求めている 

 はずだ。そうだろう?」

「…そうなのかもしれない…?」

 湖の増水が起こっても、何時も何も出来なくて、民が苦しむのを救う事が出来ない自分を歯がゆく思っていた。

龍神の宝があれば、苦しむ民を救う事が出来るのだろうかと、何度思ったか知れない。

 彼は、アザリーの前にひざまづき、胸に手を当て、深く頭を下げる礼を取り、静かに言った。

「どうか、あなたの力で、民を救ってください。私はこの命を懸けて、あなたを護るナイトになると誓います」

 アザリーは驚いて、彼を見る。

今あったばかりの私に忠誠を誓うなんて本気なの? 

そう思うのに、気が付くと、右手を差し出していた。心の奥底で、彼になら全てを預けられる。そんな意識が働いている事に、アザリーは気づいていなかった。

「疑う事なき絆を繋ぎ、心を分かつものとし、私の全てを、あなたに預けます」

 彼は、差し出された、アザリーの手をとり、指先にそっと口づけして、その手を額に押し当てた。

「裏切る事なき絆を頂、全てあなたの為にあることを誓います」

 これで、ナイトの契約は成立する。

 絆を繋ぐ呪文であり、一度結ばれてしまうと覆すことはできない。

 事の重大さに気付き、戸惑うアザリーに、彼は、さらりと言う。

「これで、ナイトの契約が成立した。僕と一緒に行こう」

「…どこへ?」

「もちろん、龍神の宝が眠る場所、ロック砂丘の泉へ」

「え? ロック砂丘の泉って?」

「メリドの北にある」

「メリドへ行くの? ナハルは、メリドから来たの?」

「ダメだ! メリドになど行かせることは出来ない」

 声と共に、突然割り込んできたのは、マハムドだった。

 彼は、太くりりしい眉を寄せて、ナハルを睨む。

 その二人のやり取りにかまわず、アザリーはマハムドに話しかける。

「マハムド、おはよう! 私の事、探してた?」

一瞬で、その場の空気が緩む。

「おはよう。突然いなくなるから心配した。こんな処で何してるんだ?」

 アザリーに視線をもどし、歩み寄ろうとするマハムドの前に、ナハルが立ちはだかった。

 突然現われた男が、自分の伝説の乙女に気安く近寄る事は許せない。

 誰なんだ? 身分のありそうな男だが、彼女と親しそうなだけでも気分が悪い。


 マハムドは、気分を害してナハルを睨みつける。 

 どう見ても、平民の服装ではない。

 身分のある男だろう。メリドの貴族ということか?

 彼が身に着けているのは、質のいい布で仕立てられた立派なシャルワニに、腰には、飾りの付いた長剣だ。

 顔は、深く被ったクーフィーヤで見えないが、妙に威厳のある態度だ。

「君は? 彼女を、こんな処に連れ込んでどうするつもりだ?」

「人に名を尋ねるなら、自分から先に名乗るのが礼儀だろう」

 無表情なままの顔で、しかし、その声には敵対心を混めた、威圧する響きがあった。

 その威圧感を感じ取ってか、何時も冷静なマハムドらしくなく、不愉快そうに名乗った。

「私は、マハムド・アブドラシキ。彼女の従兄で、許婚だ」


    譲れないもの   



「許婚?」

 その言葉は、衝撃だった。

 伝説の乙女は、自分の傍らにいるべきはずの女性だ。

 さっきも、まだ口づけも知らない清らかな乙女だと確信したばかりだ。

 婚約者の存在など考えてもいなかった。

 ガナーの方に振り返るが、彼女は否定するそぶりを見せない。

 事実らしい。

 戦線布告の姿勢で彼に向き直って名乗った。

「私は、ナハル。ガナーとは、今、ナイトの契約を交わしたところだ。君が、彼女の許婚であろうと、彼女に害をなすなら、私が排除する」

「ガナー…?」

「彼女の呼び名だ。彼女は、伝説の歌姫だ」

「歌姫? 何故君にそんな事が分る?」

「分るさ! 僕は、ずっと歌姫を探していた」

 ナハルは、許婚の存在に衝撃を受けながらも、許婚よりも、硬い絆があると、マハムドの前で示したかった。

 伝説の乙女は自分のものだ。他の男などに渡せない。

 婚約も、どうせ親同士が勝手に決めたのだろう。

 生まれながらに決まっていたという事に違いない。

 彼女が、この男を愛しているはずがない! いずれ解消させてやる。

 そんな思いのこもった宣戦布告だった。


 マハムドは、その思惑を感じとって不快になる。

 さらに、排除するの言葉にも、ムッとした。

 王族ではないが、現王の姉を母に持つ彼は、誰でも一目おく立場にいる。

 エルドでは、並ぶものがないと言われる、剣の使い手であることを自負している。

 マハムドにとって、自尊心を傷つけられる言葉だった。

 その辺の若僧に簡単に排除などされるものか! こんな言われは方は見逃せない。

「そう言うからには、相当な腕前なのだろう。私を軽く排除できないようでは、 

 ナイトなど役に立たない。名ばかりのナイトなど、迷惑なだけだ。恥をかく前 

 に、大人しく引き下がった方がいいのではないか」

「マハムド、私の恩人なの。傷つけないで」

「恩人?」

「倒れた私を、介抱してくださったの」

 アザリーは、二人を止めようと必死で言う。 

 ナハルは、そっと、彼女の肩に手を置いて止めた。

「これは、君のナイトの座を賭けての戦いなんだ。下がっていて」

 ナハルにうながされて、木の陰に下がる。

 マハムドの剣の腕前は、エルドでは右に出るものなどいない。

 マハムドが負けるなどと思ってもいないアザリーは、何時も冷静なマハムドが、いらだっているのが気掛かりだった。

 何時ものように、軽くあしらって終らせてくれれば良いけれど…。

 何時も温厚おんこうなマハムドが、むやみに人を傷つけるようなことはしないと信じて見守る事にした。

 ナハルが、金色の柄に手をかけて、スラリと剣を抜く。

 光りのしずくが銀色の切っ先から柄に向けて流れるように光る。

 細くしなやかなそりを持つその剣は、繊細で美しい見たことも無い剣だ。

 ナハルの剣を持つ立ち姿がとても綺麗だった。

 剣を構えたナハルと向き合った瞬間、マハムドはハッと息を呑む。

 彼の隠された瞳が、煌めき、ゆらりと、揺らめいたように見えたからだ。

 思ったより出来る。

 マハムドは、急いで剣を抜く。

 それは、あまりにも一瞬の出来事だった。

 マハムドが剣を抜くのを待ち構えていたように、息を吹き込まれたナハルの剣は、マハムドの剣をからめ取る。

 彼の剣が、マハムドの腕に、突き刺さるように向けられていた。

 彼は、動きを止めて、クルリと剣を裏返してゆっくり押すように、マハムドの腕にあてる。

 マハムドは、腕に痺れを感じ、剣を落としてしまった。

 次の瞬間には、マハムドの喉元に、剣が突きつけられていた。

 油断をしたとはいえ完敗だ。

 しかも、裏返された剣には、マハムドを殺す気が無い事を表した、ナハルの余裕のあらわれだった。

 それは、マハムドにとって、この上ない屈辱だ。

 こんな敗北は初めてだった。

 しびれる腕を押さえ、屈辱に膝をつくマハムドを見下ろしながらナハルは、表情も変えず淡々と言う。

「これで、ナイトの座は、認めてもらえるのだろうね」

 マハムドは、激しい屈辱と、敗北感に言葉も出ない。

「……」

「マハムド!」

 アザリーが急いで駆け寄った。

 目の前の光景は信じられない出来事だった。

 まさかと思っていたマハムドが、こうもあっさり負けてしまうなんて。

 しかし、勝敗より、今はマハムドの怪我が心配だった。早く手当てをしなければと思った。

 ナハルは、剣を納め、さっきとは違う静かな瞳で二人を見下ろしていた。

 マハムドは、面目を失ってうなだれる。

「すまない。私の負けだ」 

「腕は? 大丈夫? 見せて!」

「切ってはいない。腕の腱を刺激しただけだ。じきに戻る」

 マハムドの代わりに、ナハルが答えた。

 アザリーは、マハムドに怪我が無いとわかると、ホッとした。

 だが、それとは別に、何かを思い出しかけていたような気がして、思い出せなくてもやもやする。


 マハムドは、落とした剣を拾い、鞘に納め、まだしびれる腕を押さえながら、ナハルの剣が、腕につきたてられたときの事を思い出していた。

 あの時彼は、剣を止めた。

 止めていなければ、マハムドは、二度と剣を持つことが出来なくなっていただろう。

 自分には彼の動きも、剣の道筋も読めなかった。今まで味わった事のない、完全なる敗北だった。

 

    伝説の乙女と龍神の宝


 マハムドは、ナハルを厳しい表情で見上げる。

「君の望みを言え。だが、私の命に代えても、彼女は渡せない!」

「君の命はいらない。私を、ガナーのナイトと認めろ」

「そんな事に意味があるのか?」

「ある。ガナーには、このままロック砂丘の泉へ、一緒に行ってもらいたい」

「そんな危険な処へ行かせる訳にはいかない!」

「大丈夫よマハムド、私、ちゃんと見つからないように行くわ」

 こんな緊迫した状況で、マハムドが拒絶しているにもかかわらず、アザリーはすっかり行く気満々で、のんきにまだ考えてもいない先の話を振る。

 マハムドは、頭を切り替えなければならなくさせられて、一瞬固まる。

「…、そういう問題じゃない! そんな無謀な事はさせられる訳が無い」

「早く、陽扉艦ようひかんを見つけないと、世界が滅んでしまうわ!」

 ガナーは悲観的に訴えるが、マハムドはなだめようとしかしない。

「そんな事は、現実には起こらない。そんな危険をおかしてまでする事じゃないだろ! 君にもしもの事があったら、君だけの問題ですまないことは分っているのか? 自分の立場を考えなさい」

「なるほど、君の許婚殿は、君の苦しみを理解していないようだ」

「なんだと? 君に、ア…彼女の何がわかるというんだ! ただ、彼女を連れて 

 行きたいだけだろう! 大体にして、其処に陽扉艦ようひかんがあると言う確証は無い」

「龍神の宝は三つ。龍神の命を封じたと言われる、源命艦げんめいかん。水を 

 操る擢翠艦てきすいかん。そして、神通力を操る陽扉艦ようひかんだが、

 その、どれかは、解っていない。だが、手がかりがあるなら、試してみる価値

 はあるのではないのか? 君は、彼女を私に奪われるのが怖くて、彼女の苦し

 みに目を背けて、何もしないと言うのか」

 マハムドは、図星を付かれて言葉に詰まる。

「……」

 二人が、言い争っているのを他所に、アザリーは、さっきからのもやもやが気になっていた。

 ナハルの、あの剣を見たことがある?  

 分らない。きっと、めまいを起こしたばかりだから、頭がボーとしているのね。少し休もう。

 アザリーが、その場に座り込むと、直ぐにナハルが気が付いて駆け寄ってくる。

「どうしたの? ガナー、具合が悪い? もう少し、火の側で休んだ方がいい」

 彼はアザリーを抱き上げると火の側に座らせ、マントを掛けてくれる。

 マハムドは、目の前で、自分の婚約者が他の男に抱き上げられている光景を、あっけに取られて呆然と見ていることしか出来なかった。

 ナハルの行動はあまりにも素早くて、マハムドが思い至る前にすでに動いていたからだ。

「ありがとう」

 アザリーは、お礼を言いながら、じっと、ナハルを見つめてしまう。そして、ポツリと言う。

「私、あなたに会ったのは今日が初めてよね?」

「うん、そうだね。初めてだと思うよ」

「なんだか、ずっと前から知っているような気がするの」

「僕もだよ。懐かしい気がして、側にいるとホッとする」

「そうなの、おかしいわね…」

 アザリーは、ニッコリ笑う。

 ナハルは、心臓を打ち抜かれた気がして思わず胸を押さえる。

 もちろん、胸には、矢も、何もささってはいないが、アザリーから目が離せない。 

 見詰め合う二人に、いらだったようにマハムドが口を開く。

「君がやろうとしている事は、どれだけ無謀な事だか解っているのか」

「解っているわ。マハムド。それでも陽扉艦ようひかんを見つけたいの。陽扉艦があれば、私は、私の役割を全うできるかもしれないのよ。増水に苦しむ民を救う事ができるかもしれない」

「…、そんなにしてまで…、いや、それなら、私も一緒に行こう」

 この様子では、アザリーは何を言っても聞かないだろう。

 マハムドはあきらめたように、ため息をついて、ナハルに問う。

「私は、彼女の婚約者だ。同行する事に異存は無いだろうね」

「歓迎はしないが、異存は無い」

 彼は、無表情に、そっけなく言う。

 まったく持って、歓迎はしない。

 邪魔くさいのが付いてくるのは厄介だ。

 だが、しかし、旅の間にこいつから彼女を奪うなら、いてくれたほうがやりやすい。

 堂々と奪ってみせるとたくらんでいた。

「ところで、ロック砂丘の泉で、彼女に何をさせるつもりだ」

「伝説の乙女は、癒しの歌声をもっている。その歌声によって、龍神の宝を導きだせるはずだ」

「え! う、歌?」

 ガナーが、うろたえたように、目を見開いて声を上げる。

 大きな黒い瞳がこぼれ落ちてしまいそうなほど目を見開いて驚いている。

 もしかして、彼女は、歌が得意ではないのだろうか。

 少し以外に思いながら尋ねてみる。

「さっき、湖のほとりで歌っていたのは、君だろう」

「そうよ…。でも、無理よ!」

 必死で首をふるアザリーを、マハムドが、ほくそ笑んだようにしながら見ている。

 アザリーは、頑固だ。どんなになだめても、人前で歌う事を拒む。

 彼がどうなだめるのか、高みの見物を決め込んだ。

 しかしナハルは、余裕の表情で、アザリーに話を始める。

「君は、胸の奥に、陽だまりのような暖かさを感じる事はない?」

「え? …」

「それが癒しの心なんだけど。ともし火のように、淡く輝く光を感じる事は?」

 アザリーは、考えるように目を閉じる。

 龍神を思うとき、胸の奥に感じる暖かな光がある。

「あるわ。時々、胸の奥に暖かな光がともる事が」

「良かった。それなら話が早い。心を開放するだけで、癒しの力を、歌声にのせ 

 ることができる」

 歌姫のように、歌う事が私にも出来るというのかしら? 

 名前に負けない歌が歌えるようになりたいと何時も願っていた。

 アザリーは、不安そうにナハルを見上げる。

「大丈夫。僕が、教えてあげるから」

 今まで、誰にも教わる事もできなかったのに教えてもらえるなんて、なんて幸運。

 彼がニッコリ微笑めば、アザリーは嬉しそうに頷く。

「はい。お願いします」

 何なんだ、その反則技は! 顔も見せないくせに、笑って見せるなんてありか?

 あまりにも簡単でマハムドは、唖然とする。 どうして? 如何して、こんなに簡単に決着が付くんだ? 

 もっと、彼が苦戦すれば良いと思っていたのに。全くの期待外れだった。

 こんなに簡単にアザリーを納得させるなんて、今までアザリーの側にいて、アザリーのことなら何でも解っているはずの自分の立場が無い。

 マハムドは、内心あせった。ナハルに、アザリーを取られるかもしれない。そんな予感に襲われる。

 彼は、不機嫌そうに、二人の間に割り込んで、八つ当たり気分で、ナハルを問い詰める。

「それで、宝をどうやって見分ける? もし、陽扉艦ようひかんでなかったら?」

「伝説の乙女が、手に触れればわかる。緑に輝くのが、擢翠艦てきすいかん。赤く輝くのが、陽扉艦ようひかんだ。もし、ロック砂丘の泉にあるのが、陽扉艦で無かったとしても、もちろん、ガナーの望みはかなえる。彼女の苦しみを、僕が引き受けると約束した。たとえ、世界の果てにあろうと、かならず、陽扉艦を見つけ出して見せる」

 マハムドは、ナハルの言葉に、ますます立場をなくし、奥歯をかみ締めて我慢する。


    伝説の乙女


「では、導き出した宝が、陽扉艦ようひかんだった場合は、彼女にゆだねると言うんだな」

「僕が持っていても、何の役にも立たない。もちろん、洪水から、人々を救って

 くれるのが前提だが、龍神の宝は、伝説の乙女に属する物だ」

「ロック砂丘の泉? メリドの国内だ、監禁されれば、逃げられない」

「そんな事はさせない! ナイトの契約がある。彼女に危害を加えるような事は、

 命に代えても阻止する」

 ナイトの誓いといわれ、さっきの完敗を突きつけられたようで不愉快に成る。

「口では、何とでも言える」

「口先だけの誓いだと言うのか!」

 又だ! 何なんだ! 隠されて見えないはずの瞳がゆらりと、揺らめき立ったように見えた。

 その瞬間、マハムドは、何もいえなくなってしまった。

「マハムド。私ね、メリドと仲良くしたいの」

 アザリーは、二人の激しいやり取りを、聞いていたのかいないのか、突然無邪気に言葉を挟む。

 ハッと、我に返ったマハムドが、かろうじて自分を立て直し反撃を試みる。

「ア、ガ、ガナー、メリドの奴なんかを信じるのか?」

「私、彼の前で倒れたの。捕らえる事は簡単に出来た筈でしょう? それなのに、私を介抱して、ナイトの誓いまでしてくださったのですもの。信じるわ」

 マハムドは、ため息をついて、ナハルに向き直る。

「それで、百年前の恨みを水に流せと?」

「悪くない話だろう?」

 敵国の人間であるナハルが、しかも、相当メリドでの権力もありそうなやつがアザリーのナイトになると言うなら、とりあえず、アザリーに危害は加えないだろうか? 何故か、ナハルは、相当自身がある口ぶりだ。

 しかし、敵国に、王女であるアザリーが単身乗り込むなどと、危険この上ない! もし見つかれば命はない。

 たとえ、ナハルの腕前がずば抜けていたとしてもアザリーを護りきれるだろうか? 

 彼も、アザリーが、王女だということを気づいているのか? 

 ナイトの誓いは、覆す事はできない。

 一度交わしたら、たとえ、親、兄弟を敵に回そうとも、一生護りぬかなければならない誓いだ。

 ある意味、婚姻の絆より深い絆だ。彼自信も、無傷ではすまないだろう。

 いや、もし、彼にアザリーを護りきれる身分があったとしたら?…

 大体にして、こんな顔も見せない奴を信用していいのか? いや、彼はどうして顔をみせない? 見せられない理由があるなら、それは…?

 何より、彼女がナハルを信じきっていることもなんとなく釈然としない。

 アザリーは元々人を疑うような娘ではないが、以外にも人を見定める目はある。その見極めを間違えた事は今までにない。

 このまま、彼の思惑通りなら、アザリーを奪われそうな気がする。

 しかし、それは口にできず、しぶしぶ、承諾するしかなかった。

 悔し紛れに、ナハルを問い詰める。

「ロック砂丘の泉に、龍神の宝があると言うのは、確かなのか?」

「アルバーン王の手記に書かれている。あの戦いの中で、神殿に攻め込んだ時に、

 赤い光に包まれ、前衛の兵士は、動かなくなったが、かろうじて、その時の宝 

 は、エルドの女王の手から奪い、王の元に届いた。王は、自分の娘達に、宝を

 試させたが、誰も、宝を操れるものはいなかった。王も、その時の光の影響か、

 足が、動かなくなったようだ。その時、ロック砂丘の城に逃げ延びていた王は、

 宝の力を恐れ、ロック砂丘の泉に、宝を沈めてしまった。と、記されている」

 マハムドは、納得したのか頷く。

「そのまま、宝は眠り続けていると?」

「ロック砂丘の泉は、聖域だ。泉に踏み込む事などはできない」

「宝を取り出せるのは、伝説の乙女とやらだけだと? 彼女になら、それができると言うのか?」

「試してみる価値は十分あると思う」

 マハムドは、ため息をついて考え込む。

 アザリーは、歌姫の再来の言葉に少し戸惑いを感じてはいたが、ナハルが、指導してくれると言うのだから、大丈夫と思い込むことにした。

 そんな二人にかまわず、ナハルは、サッサと話を進める。

「それで、ルートだけれど、一番の近道は、地下通路だが、女性連れの旅には向かないだろう。湖を右側へ迂回して、グリーム、イレックの、国境沿いに行くのがいいと思う」

 確かに、呪いの湖の下を通るのは気が進まない。ナハルの提案に賛成するとアザリーは思った。

 マハムドも、同じ考えだったようだ。

「それで、ガナー? と、私は許婚同士の旅行でいいが、君が付いていく理由は?」

「いや、ガナーは、僕の婚約者にしよう」

「なんだと!」

 さすがにマハムドは苛立ちをあらわにした。 

 しかし、ナハルは平然と言う。

「君たちは元々、いとこ同士だ。見た目的にも兄妹で通る。だが、僕は、ガナー

 に似ていない。兄妹以外の、側にいて不自然でない男は、婚約者しかないだろ

 う。男をはべらせているなんて思われたら、彼女の名誉に関わる」

「……」

 大切なアザリーが、ふしだらな女と見られるのは我慢できないマハムドは、ナハルの案を受け入れるしかなかった。

 どうせ、姿を見せないのだから関係ないと、このときのマハムドに思い至らなかったのは、アザリーがふしだらな女と思われるかもしれないということに動揺していたからだろうか?

 とにかく、グッと奥歯をかみ締めて、言葉に詰まっていると、横から、険悪な雰囲気を、まるで感じていない、のどかな声がした。

「マハムド、アインを見なかった? アインを連れて行ってもいいでしょう?」

「あ、ああ、探してこよう。君の身の回りの支度をさせるから、君は、もう少し休んでいなさい。まだ、こんなに手が冷たい」

 マハムドは、アザリーの手を包み込む様に握った。

 その二人を見つめる、ナハルの瞳が再び揺らめく。嫉妬に燃える炎だ。

 マハムドが行ってしまうと、ナハルは、ガナーの側に来てすわり、焚き火に木を足しながらポツリと言う。

「君は、彼と結婚するつもりなの?」

「え? そうね…」

 アザリーの中で、マハムドとの結婚は、疑う事もない自然な事と思っていた。

 改めて訊かれると、何も考えていなかった自分に気が付いた。

 けれど、そこに不安も何もないのだから、それで良いと思う。

「彼を愛しているの?」

「…尊敬しているわ。優しくて頼りになる人なのよ」

「それは、愛なのかな。だって君たちはまだ、口づけもしていない仲だろう」

 ガナーは驚く。そんな事、一言も言ってないのに、やっぱり、どこかであったのかしら?

「如何してそんな事分るの?」

「さっきの、君の様子を知れば分るさ」

 顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。 

 さっきの唇を重ねた感覚が蘇ってきた。

 口づけは、あんなにも優しく、甘いものなのだ…。

 ハッと、我に返る。ちがうわ! 慌てて否定する。 

 あれは、口づけなんかじゃないんだから。違うわ! 顔を真っ赤にして固まるアザリーに、彼は又、胸を押さえる。

 やっぱり、矢は刺さっていなかったが、もし、目に見えていたら、一体、何本刺さっているだろうかと苦笑いする。

 やられてばかりではいけない。少しは反撃をしなければ、と試みる。

「君の唇に触れたのは、僕が初めてだ。ちがうかい?」

「違うわ。さっきは、薬を飲ませてくれたのでしょう? そんなの違うわ」

 小声で戸惑うガナーが可愛い。嬉しくて、ちょっと、意地悪をしたくなる。

「薬ね、確かに、少量なら薬になる。だが、量を増やせば、恋の媚薬だ」

「そんな…」

 ガナーは、ビックリして眉を寄せる。彼は、不適に微笑みながら、ガナーを見つめ、彼女の手を取る。

「残念だったね。もう遅いよ。君は、僕の虜になる運命だ」

 ガナーは、頬を染め、動揺を隠せない。

「嘘よ、魔術師じゃ無いんだから、そんな事……」

 ガナーは、彼の言葉が、暗示のように、心の奥に響く気がして、動揺しながら、手を振り払う。

 彼は、懐かしいものを思い出させるようで目が放せなくなる。

 どうして? まさか、これが薬のせいなの?

「信じないの? でも、ほら、見つめられたら、胸がときめくだろう?」

 彼はそういいながら、ガナーの頬に手を伸ばす。自分のほうに向かせ、もう片方の手でガナーの手をとり、見つめる。

 彼の瞳は見えないのに、知っているような気がする。

 そう、きっと龍神と同じエメラルドの瞳をしている。

 その瞳に見つめられ、抗えない何かに絡め取られるみたいだ。

「言ってごらん。もう一度、口づけがほしいと…そうすれば、君が望むだけ口づけをしてあげよう」

 思わず、言われるままになりそうな自分を、なんとか制して、ガナーは、彼の顔を押しのける。

 心臓は、壊れそうに大きく脈打っていた。 

 婚約者である、マハムド以外の男に、口づけを許してしまいそうだったことに困惑する。まだ、マハムドでさえ、唇に触れたこともないのに…。

「そんな事言いません!」

 頬を染めて、伝説の乙女と同じ黒い瞳で睨みつけるガナーが可愛い。

 口づけしたくて、こらえきれなくなりそうな気持ちをなんとか抑えた。

「如何して? その唇は、もう僕のものなのに」

「それは違うわ。だって、私は、口づけを許していないもの。だから、あれは口

 づけじゃないわ」

 彼の誘惑は、ピシャリと撥ね退けられてしまう。

 ああ、なかなか一筋縄では行かない。こんなに思い通りにならないのは、初めてだ。

「君がそう言うのなら、そういうことにしておこう。ナイトの誓いに掛けて、何

 もしないから、少し休むといいよ」

 彼は、口づけをあきらめ、優しく胸をかすようにして、ガナーを抱き寄せる。

 広くて暖かい胸。何故だろう、その腕にふわりと包まれると、胸の中を吹き抜けていた寂しさが、埋まるような気がする。

 いつの間にか、彼の腕の中に抱きかかえられたまま、眠ってしまった。

 ナハルは、その寝顔を見下ろして微笑んだ。 

 ナハルを拒絶していたのに、抱き寄せれば、素直に身を預ける。可愛いくて、愛しい。

 彼女に婚約者がいたことは計算違いだったが、救いはある。

 彼女はまだ口づけも知らない乙女のままだ。きっと、振り向かせて見せる。まだ間に合うはずだ。


 ガナーは、アインと、マハムドが、返ってきたらしい物音に目を覚ました。

 まるで、抱き合っていたかのような二人に、マハムドは、思い切り不機嫌顔になる。

 ガナーの側に来ると、腕を引っ張って、ナハルから引き離した。

「私の婚約者に、気安く触れるな」

「マハムド? どうしたの」

 ガナーは、眠そうに、まったく彼の懸念など、気付いてもいない様子でマハムドを見る。

「ガナー、こいつに、不埒なことをされなかったか?」

「私、眠ってたみたい」

「さっき、飲ませた薬が効いてきたんだろう。私は、ベッド代わりに、胸を貸していただけだ」

 飲ませたと言いながら、ちらりと、ガナーを見る。

 目が合い、ガナーは、赤くなって目をそらす。

「本当かガナー?」

「マハムド、媚薬って、どんな薬草から出来てるの?」

「…何の話だ?」

 何時ものことながら相変わらず彼女はマイペースに話を始める。

 怒っていたはずなのに、突然別の話を振られて、一瞬固まったマハムドは、頭をめぐらせる。

「お薬のお話よ」

 ガナーがニッコリ笑うと、マハムドは、さっきの剣幕も忘れてガナーのペースに乗せられてしまう。

「薬? ナハルが飲ませたと言う薬か?」

「ええ、甘くて、いい香りがして、とても体が温まるの」

「ナハル、その薬見せてくれるか?」

「ああ、良いけど、これだ」

 マハムドは、受け取って、口に含んでみる。

「どう? 私に同じの作ってくれる?」

「調合に時間が掛かるから、屋敷に帰ってからなら作れる」

「ガナー、ほしいなら、いくらでもあげるよ」

 ナハルが、薬の小瓶を、ガナーに渡そうとするのをマハムドが止めた。

「ダメだ、ガナーにはアルコールがきつすぎる。私がガナーに合わせて調合する。それまで待ちなさい」

「はい。約束ね」

「ああ、解った」

 三人のやり取りを、黙って見守っていたアインは、ナハルを見て固まった。

 二人を見つめるクフィーヤの奥に隠されたナハルの瞳が、ゆらりと燃え上がったように感じたからだ。 

 激しい嫉妬(しっと)の炎だ。伝説の乙女は、私のものだと、言っているように見えた。

  ただならぬ気配をもった、このナハル様という人物は一体何者なのかしら? 

 メリドの人間らしい。マハムド様からあらかたの話は聞いたが…。

 アザリー様は、まったく疑っていないようだから、多分大丈夫だとは思う。

 アザリー様の人を見る目は確かなのだけれど、信頼していいのかしら…? 

 不安要素はそれだけではない。

 さっきから、火花を散らしている、マハムドと争いになるのではないかとはらはらしながら、アインは、ナハルが、何か言おうとするのをさえぎるように、口をはさんだ。

「では、ガナー様の具合もよくなられたようですし、そろそろ、出かけませんか。日暮れ前に、宿にたどりつかないといけませんから」

「ああ、そうしよう」

 結局何も言わずに支度を始めたナハルに、アインは近づいて声をかけた。

「お手伝いいたします」

「ああ、君は?」

「はい、侍女の、アインと申します」

「そうか、ありがとう。アイン」

 ナハルは、ニコリともせずに無表情で、お礼をいった。なんだか空気がぴりっとする。

 あれ、さっきガナー様には、満面の笑顔だったのに。

 顔は隠されていても、姿形はとびきり整った男性だ。長い手足、広い肩、細い腰、美しく、しなやかな獣のようだ。

 だが、目の前の彼はまったく感情が読めない。その上、他人を拒絶しているような近寄り難い雰囲気に覆われていた。

 さっきとはまるで別人のようだ。

 普段は、こうなのかしら。


 草花は余韻に浸るかのように、静かにゆれていた。

 この湖に沈む、全ての者達が、長い間待ちわびていた、出会いの時だったのだが…、アザリーが気が付くには、あまりにも、長い時の隔たりがあった。

 湖の水は、ヒタヒタと、水辺に押し寄せ、触手を延ばし始めていた。

 異変は、既に始まっていたが、彼らは、その存在に気づいていなかった。

 まだ何も知らない四人は、馬に乗って旅立つ。

 四方を砂漠に囲まれているこの地方では、キャラバンなど、ラクダを使うことが多いのだが、エルドも、メリドも、今は緑に覆われた大地だ。

 アザリーは、淡いピンクのブラウスに、たけの短い、薄紫のジャーキートに、碧いたっぷりとしたシャルワールその上からブルカを被り、馬にまたがる。

ナハルにぼこぼこにされたマハムドが、なんともけなげでかわいいですね。

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