表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の遺灰  作者: 狗ろA夏
4/8

図書館と友

この寂れた村にたった一つの図書館。ここの無口な老司書は、いつも孤独に本と向き合っている。

「…失礼します。」

ここにはよく来る方だと思うが、いつものように返事はない。この人はそういう人だ。そのせいなのか、ここに人が来ているのをボクはあまり見たことがない。しかし、今日は珍しく、2人も来客があったようだ。

「あ、オルクじゃん。」

「おはよ〜、オルクくん。」

「ん。」

軽く挨拶を交わして、同じ机に荷物を置かせてもらう。真剣な顔で課題を進めているこの男がテッケン・シェルッツ、その横でにこにこ絵本の山を読んでいる女子がアイカ・アーツ。ボクの幼なじみで、偶然にも同じゼヘルア総合学校に進むことになった2人だ。

「テッケン、課題は間に合いそうか?」

「まー、いけるだろ。…たぶん。」

「テッケンくんが計画的にやらないからだよ〜。」

そんなやり取りを聞きながら、哲学のコーナーへ向かう。宗教関連の本を読みに来たのは流石に初めてだ。どんな本があるのか分からないけど、本を読むのは早い方だし春休み明けまでにはおおかた読み終わればいいが。

とりあえず数冊を取り、席へと戻る。

「そこ、公式まちがってるよ〜。」

「え、マジで?これじゃなかったら何使えばいいの??」

「違うよテッケンくん、当てはめるとこが間違ってる。後ろの方でしょ。」

「あホントだ…。」

趣味は子供らしいがアイカはボクより賢い方だ。課題もボクより早くに終わらせていたんじゃないのだろうか。黙々とボクが本を読む隣でテッケンに勉強を教えながら絵本を読んでいる。


【宗教の始まり】

宗教の起こりは、今から3000年前以上の天使信仰の宗教だとされています。有名なのがクラミテン教やハドニカ教です。信者は少ないですが、その次に信仰され始めたのが悪魔信仰と言われています。


やはり悪魔信仰は比較的古く少数の宗教のようだ。…今日は宗教を深追いするんじゃなくて、パンドラについて調べてみようかな。


【異なる二つのパンドラ】

世界には大きくわけて天使信仰の宗教と悪魔信仰の大きく違う宗教があると紹介しましたが、大きく違うのは信仰しているものだけではありません。それはパンドラについての伝承です。天使信仰でパンドラと言えば、災いを振りまいた裏切り者の堕天使なのに対し、悪魔信仰におけるパンドラは、救世主で真の天使、友であり敵といったイメージが持たれている様です。


パンドラ…一体何者なんだろうか。少なくともエルピスを見たボクは、あの箱を置き去りにして行くようなひととは思えない。

「なぁオルク、本読んでるとこ悪ぃ、ここ教えてくんねえか?アイカ本取りに行っちまって…」

「いいよ。ここは…あぁ、教科書貸して。ここの文法の応用だと思う。これを一つ文に当てはめたらできるよ。」

「あぁなるほど、そういう事か…ありがとな。」

テッケンは、よくボクやアイカに勉強を教えて貰っているが、テストの点はボクらとさして変わらない。テッケンは、同じミスをしない。間違えた所を、二度と間違えない努力の人だ。それでいて、いつもクラスの中心にいるような人だ。

「あ〜、オルクくん読み終わった?」

「そんな感じ。」

「すごいねぇ。私だったらそんな面倒くさそうな本課題以外で読まないや。」

アイカは、一度見たことは忘れないたちの天才で、課題なら何でもこなすけど、それ以外はとても幼くてわがままでめんどくさがりだ。アイカのお母さんはとても勉強に厳しいらしく、子供らしい趣味も許して貰えないから、今日も友達に勉強を教えると言って抜け出しているのだろう。

「ボクがやりたいからやってるだけだよ。」

ボクはなんて個性的で、なんて素晴らしい友を持ったのだろうか。そんな友と同じ道に進めるなんて奇跡も起こった。

ボクは、幸せ者だな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ