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442.砲撃と防壁、兵装サイとクレイドール!

「三体のユニット──《白夜蝶》・《黒夜蝶》・《森王の導き手》をコストとして兵装サイ起動! 初めに適用されるのはプレイヤーが選択した強化効果だ! それによりこのユニットのパワーは2000アップし、キーワード効果【好戦】を得る!」


 《強襲型重兵装サイ》

 パワー6000→8000 +【好戦】


 エンジン音めいた駆動音を響かせる兵装サイの迫力はかなりのものだ。そのパワーアップの糧となったユニットたちの尊い犠牲を思えば少々物足りなくもあるが、しかし彼の真価が披露されるのはここからである。


「これで兵装サイの元々のパワーは8000になった。そして! 一体ではなく三体を生贄としたことで追加適用! 選択しなかった除去効果も発動される!」


 2000のパワーダウンごとに一枚、相手の場のユニットかオブジェクトのカードを強制的に墓地送りにする効果。最低2000から最大6000まで、どれだけの数値を代償とするかもプレイヤー自身が選択できる能力の発動においてアキラが指定するのはもちろん。


「俺が支払うパワーは最大値の6000だ──まずは第一打・・・! 除去対象は《スフォニウスの泥人形クレイドール》! 発射ァ!!」


 《強襲型重兵装サイ》

 パワー8000→6000


 体内に秘めた弾薬(火力)を消費して撃ち放たれる、生体ミサイル。動物でありながら生まれつきの兵器でもある兵装サイだからこそ可能となる超威力の砲撃は、通常であればどんなユニットだろうとオブジェクトだろうと防御能わずに葬り去られる。が、真っ直ぐ標的に向かって飛んだミサイルは着弾の直前に不可視の壁に阻まれてその威力を完全に防がれてしまった。それは標的自身、つまりはクレイドールが展開した保護の力の象徴。


「当然に保護能力を持つクレイドール本体を狙ってくるっすよね……使わざるを得ないっす。クレイドールの持つカウンターをひとつ取り除いて効果を発動! 兵装サイの除去を無効化したっす!」


 《スフォニウスの泥人形クレイドール

 カウンター6→5


 パワーダウンを負った兵装サイに対しカウンターダウンを強要されたクレイドール。限りある資源リソースを払って能力を使う、という点でこの二体は共通している。そして力が残されている限りそれを使い続ける、という点でもだ。


「そりゃあ防ぐよな。だが一度防がれようと兵装サイの効果処理は依然として続く! 続いて第二打! 発射ァ!!」


 《強襲型重兵装サイ》

 パワー6000→4000


 一射目の不発もなんのと再び全身の砲門より己が血肉から作られたミサイルを撃ち出す兵装サイ。それに対してクレイドールがやることも変わらない。彼女もまた主人の命に従い、自らの力を費やして守りに徹する。


「こちらもクレイドールの効果を再使用! カウンターを取り除いて除去を無効化っす!」


 《スフォニウスの泥人形クレイドール

 カウンター5→4


 またしても目には見えない、されど絶対の防護壁が展開され生体ミサイルは進路を阻まれる。無意味な爆発によって生じた煙が晴れるよりも早くにアキラは次なる砲撃を自身のユニットへと命じ、それに応じてロコルも自身のオブジェクトへと指示を出す。


「兵装サイの第三打! 発射ァ!!」


「クレイドールのカウンターを! 更にひとつ取り除いて無効化っす!!」


 《強襲型重兵装サイ》

 パワー4000→2000


 《スフォニウスの泥人形クレイドール

 カウンター4→3


 三度の攻防を終え、決着は盾の勝ち。そう断じて過言ではないはずだ──撃てるだけの弾を撃ち尽くして今や弱小ユニットほどのパワーしか持たない兵装サイと、未だ能力の行使にはなんの支障もなく健在のクレイドール。どちらが勝者かは火を見るよりも明らかである。しかし。アキラはこの結果を前に「けれど」と力強さを失わない口調で続けた。


「選択式効果の両方を発動させたことで兵装サイはまだ生きている!」


「……!」


 そう、本来なら除去効果をフルで使用すれば兵装サイはその命ごと弾薬を枯らしていたのだ。6000(三射分)のパワーを失いすっかり弱り果てているとはいえ、彼の姿がまだフィールドにあるのは自己強化によって得られた2000のパワーという命綱が繋いだものであり──。


 だからなんだ、とロコルが反駁する。


「確かにサイさんの命だけは助かっているっす。でも登場時効果を使い終わっている上にそんなに弱っているんじゃ戦闘でだってろくに働けない。せっかく付与された【好戦】にもなんの意味もないっす。そのサイさんを生かすために白と黒のちょうちょさんたちだけでなく呼び出したばかりの《森王の導き手》まで失っているんじゃあ、とてもとても釣り合っちゃいないと! 自分には追加コストの払い損にしか思えないっすよ!」


「ああそうだな。役割を果たしてくれた《白夜蝶》と《黒夜蝶》はともかく導き手まで失っているんじゃあお前の目から見ると正気の沙汰じゃないだろう……だけどこれでいいんだ。導き手は兵装サイのために犠牲になった、だがフィールドで発動された導き手の登場時効果は問題なく処理される」


「その効果さえ使えれば導き手自身の有無は関係ないってことっすか……!」


 登場時効果はその名称が示す通りにユニットが登場した時、つまりは召喚が成立したタイミングで発動される効果だ。アキラが組んだ効果処理の順番の都合によって導き手はその能力を見せる前にフィールドから退去してしまったが、されど彼が効果を発動させたという事実はそのままフィールドに残っている。これが起動型効果であれば兵装サイの登場時効果と同時の発動が叶わず、導き手は何もできずに──追加コスト要員であった二匹の蝶たちとまったく同じ扱いで──ただ犠牲になるだけに終わっていただろうが、同タイミングで使用された以上はたとえ実際の処理に入る前にユニット本体が不在になっていたとしてもその効果自体はまだ生きているのだ。


 使い切りというほぼスペルカードに等しい登場時効果の、これが強味。起動型や常在型にはない独自の持ち味と言えるだろう。アキラはそれを最大限に活かして、兵装サイの全力を引き出しつつそのための生贄となったユニットの力も余さず使いこなそうとしている。《白夜蝶》始動からのコストコアの浮かせ方も合わせて、さすがに一年以上アカデミアで薫陶を受けているだけのことはあるテクニックだ──そう自分の見ていないところで日々遂げられているアキラの成長に今一度ロコルが感嘆を覚えたところで。


「だけどその前に!」


「!」


「兵装サイから導き手の効果処理へ移る前に、その狭間のタイミングでしか使えないカードを使わせてもらうぜ!」


「このタイミングでしか……!?」


 それは『効果処理の間』のタイミング。そこに割って入ることのできるカード、ということか。既に発動が宣言された効果と効果の処理中に横入りできるカードなどそうはない……発動タイミングに一切の縛りがないタイプの起動型効果持ちユニットがそれを使用する、というのならまだしも。兵装サイのみになったアキラの場にそういったユニットはもちろんおらず、そして彼自身、繰り出そうとしているのは残された二枚の手札の内の一枚。つまり効果の発動のみならずここからカードをプレイするつもりである、ということ。


「いったいそれはなんなんすか……!?」


「ユニットの効果処理の終了時にだけ詠唱できるスペル! 緑単色呪文《リ・サイクル》をプレイする!」



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