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435.クレイドール起動せよ!


 アキラの驚きは続く。トークンの召喚のために必要なコストは2だと告げたばかりのその口からすぐさま「6コスト」の使用が宣言された。矛盾に思えたが故の一瞬の思考の空白を挟んで後、彼は察する。


「っ、まさか! ククルカンが呼び出すトークンには数の制限がないのか!?」


「そーっすよセンパイ、戦闘破壊をトリガーに生み出される《コトルトークン》は支払うコストさえあれば同時に何体でも召喚可能っす! よって自分は残っている六つのコストコアを余さずレストして! 三体のトークンを場に並べるっす!」


「三体同時召喚……!」


「追加コストあり、とはいえこっちもパフォーマンスは決して悪くないっすよ──出でよククルカンの眷獣《コトルトークン》!」


 《コトルトークン》×3

 コスト2 パワー2000 【守護】


 瞬時に立ち並ぶまったく同じ姿をした三体の蛇型ユニット。親とも言えるククルカンよりも体躯は遥かに小さく、また彼とは違い腕も脚も持たない常識的な造形をしている。能力もキーワード効果【守護】以外には何も持たず、コストやパワー面といったステータスからしてもなんの特色もないありふれたユニットだと称していいだろう……が、それがたった一体のユニットから生み出されているとなると話は変わってくる。


(や、確かに2コスト相当のパワーだし実際にロコルは三体分のコストをきっちりと支払ってもいるけど……だけどこいつらを呼んだのがククルカンだっていうのがどうもな)


 追加で要求するコストコアは、ククルカンの登場時効果によって最低でもひとつは確保されている。起動型の除去効果と同じくこの条件適用のトークン召喚効果もまたククルカン自身によるリソース獲得によって発動がしやすくなっている上、ひとたび発動さえ叶えばクルカンは「自分を守るための壁」を自分で生み出すことができる。もちろんそれはプレイヤーを守るための壁にもなるし、なんなら他の使い道に活かすのだっていい。もちろん一体と言わずロコルがそうしたように一挙に複数を呼び出せればより選択肢は増える──つまりは戦術の幅がぐっと広がる、ということ。


(無理に発動を狙わなくても展開の途中で余ったコストをとりあえず守護者に変換できるわけだからな……それにしても三体か。本当に一枚で盤面に影響を出し過ぎだろ、このミキシングユニットは)


 先のターンを1コスト余らせて終わっているだけにアキラとしてはなおのことにロコルの無駄のないコストコアの消費プランが眩しく見える。ファイトの巧みさというのはどれだけ効率的かに集約される。効率のいい戦い方とはボード・ハンド・テンポといった各種アドバンテージを損なわないこと。その視点から言えば、溜まっているコストコアを使い切らずにターンを明け渡すのはとても褒められた行為ではない。端的に言ってそれはひどく勿体ないプレイングだ。


 そういったファイトの基礎とも言えるいろは・・・を座学からの実践で教えてくれたのが他ならぬロコルであるために、彼女がアキラよりもその方面で手抜かりのないプレイを徹底させているのは一種の道理でもあろう。だが。


(だとしても置いて行かれるわけにはいかないよな──だって多分、ロコルの巧さが発揮されるのはここからなんだから!)


 ククルカンが持つ能力のお披露目はこれで終わりだろう。だが、ククルカンの能力を最大限に活用するロコルの手腕には続きがあるに違いない。彼女が敷いた盤面にあるいくつもの不信と不穏を嗅ぎ付けているが故にそう確信するアキラの予感は、やはり正鵠を射ていて。


「自分の場に【守護】持ちのユニットが召喚されたことで《六仙洞の伏竜》の常在型効果が適用されるっす──自身以外の自軍守護者のパワーを2000上げ、更にキーワード効果【加護】を付与する! 当然これはトークンユニットにも有効な効果っす! よって三体の《コトルトークン》はそれぞれ強化を受けるっすよ!」


 《コトルトークン》×3

 パワー2000→4000 【守護】 +【加護】


「パワーアップに加えて【加護】までも……!」


 2000が4000になるだけでもコスト論としては大幅な強化だというのに、そこに「相手カードの対象にならない」効果の【加護】まで付いてくるとなると大盤振る舞いだ。それでいて強化するユニットの数にも特に制限はないようなので、なるほど《六仙洞の伏竜》はロコルが無理をしてでも探し出した価値のあるカードだと言えよう。


 自身を対象に含めないタイプの常在型の守護者強化。これが7コストという大型ユニットの能力に相応しいものかと言えば──やはりそれくらいのコスト帯となると守りよりも勝負を決めにかかれる攻めの効果こそを多くのドミネイターが欲するために──少々微妙だが、しかし伏竜には自己蘇生効果も備わっている。ロコルがそうしたように、上手いこと手札コストで、あるいはデッキから直接墓地へ送ることができれば7コストという重さはないも同然。それでいて伏竜は明らかに──。


(明らかに! 大量に守護者トークンを生み出せるククルカンとの相性を第一に採用されている! ロコルがドローで伏竜を引いて一瞬とはいえ表情に出したのはそれが理由だろうな)


 他にも伏竜と相性のいいカードは仕込まれているかもしれないし、ロコルの構築力を思えばそう考えるのが自然ではあるが、ククルカンとのシナジーが考慮されていることも確実だろう。いよいよ《太極清廉図》のカウントを終わらせて三色の怪物を呼び出せる、というタイミングで折よくそれと好相性の一枚を引けたのだとすればロコルが僅かに反応を漏らしてしまったのにも納得がいく。


 エース《無銘剣ブレイザーズ・ナイト》と反則級の能力を持った装備オブジェクト《月光剣ムーンライト》。この最強コンボが決まらなかった代わりの別の最強コンボを着々とロコルは仕上げていっている──多少なりとも常に乱されている引き運で、しかしそうとは感じさせない戦い方を実現させている。そこにもまた少女の十三歳らしからぬ技術力が光っていた。


「アタックを終え、トークンのためにコストコアも使い切って、伏竜みたいにコストなしでプレイできるようなカードももうないっす。残された自分にできることと言えばエンド宣言だけ……まあ、これだけ色々とやらせてもらったんすから上々っすよね。これ以上なんて望んだら罰が当たる──ところっすけど! もうひとつやらせていただくっすよ!」


「なに!?」


「自分はターンエンド! そしてこのエンド時、《スフォニウスの泥人形クレイドール》の効果が発動されるっす!」


 先のターン、クイックチェックで引き当てられて無コストでプレイされた謎の少女型オブジェクト。沈黙を守り続けていた彼女の眼光にギラリと明確な光が──人形らしく見るからに機械的なライトアップによって宿り、そして動き出した。


「このオブジェクトが場に出てから次の自分のエンドフェイズまでに召喚された自軍ユニットの数だけ、このオブジェクトにカウンターを置くっす!」


「自身にカウンターを置く効果……?」


 珍しい文言にアキラは言葉に警戒と関心を同程度に乗せておうむ返しに呟く。またぞろ清廉図のように何かをカウントし、数字がゼロになった時に初めて効力を見せるタイプかとも思ったが。しかしそうではないとすぐに気付いた。あくまで効果発動までをわかりやすく示していただけの清廉図のカウントとは違い、クレイドールに乗せられたカウンター(それ)には『力』がある。起動と共に明らかに迫力を得た少女型人形の姿に、アキラはそう悟った。


「さあ、このターンの締めと行くっす!」



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