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341.場と墓地を巡る怪物!

「墓地からの効果発動か。やはり君のエースユニットはただ私の巨人と相打ったわけではなかったんだね」


「その通りです。わたしの切り札《回遊するリヴァイアサン》は、その名の通り。墓地とフィールドを循環する!」


 ──甦れ、リヴァイアサン! 


 高らかに呼ぶマコトの声に合わせ、墓地ゾーンに置かれたカードの一枚が盤面へと戻される。その一枚とはもちろん、マコトが指定したリヴァイアサンだ。これはファイトボードが自動的に行った挙動でしかないが、しかし一連の光景はまるでカードが意思を持っているかのような──リヴァイアサンが主人マコトの呼び声に応えて自力で彼女の下へと帰還したような、そういう外連味がそこにはあった。


 《回遊するリヴァイアサン》

 コスト8 パワー8000 【好戦】 【潜行】


 巨人との戦闘の興奮が尾を引いているのか、初めの登場時以上に身をのたうって荒れ狂う海の怪物。その姿を目にしながらマコトはどこか誇らしげに続けた。


「フィールドから墓地へ行ったリヴァイアサンはわたしのターンのアクティブフェイズ開始時に自身を蘇生召喚することができる。つまり、一度場に出してしまえば何度やられようと復活する『不死身のユニット』になるということです」


「ほう……なるほど8コストに相応しい特異な力だ。その場合ネックとなるのは最初の呼び出し方だが、しかしリヴァイアサンには自己コスト軽減の効果まで持っている。君がやったようにそれを上手く使えば序盤からリヴァイアサンで盤面を制していくことも充分に可能。素晴らしいね」


 こういった戦法は本来、カード同士のシナジー。コンボによって成立させるものだ。重たいが場に出しさえすれば役に立つ大型ユニットを、コストコアをブーストしたり、そもそもの必要コストを踏み倒したりして早期に召喚する。前者は特に緑陣営が、後者は白陣営が長けたやり口だが。しかし得意戦法とはいえそのために他のカードを用いていることに違いはなく、手間暇はある程度かかっている。それらと比べるとリヴァイアサンは見事に『一枚で完結している』ユニットだ──余計な手間暇がかからない。低コストユニットであれば持っていて当然のそれは、高コストユニットが持てば立派な強味のひとつとなる。


 無論、エミルのデッキがそうであるように、リヴァイアサンを活かすには青陣営の種族『シーゴア』を厚く組み込んだ構築にせねばならない制約もあるけれど。そこさえクリアしてしまえば《回遊するリヴァイアサン》は『シーゴア』を率いる大エースとして活躍をしてくれることが間違いない。今がまさにその状況だと、マコトは意気込む。


「リヴァイアサンは【好戦】持ち、蘇生されたターンでもユニットになら攻撃が可能──アタックです。対象は守護者ユニットである《丁寧な仲介屋カシス》!」


 《丁寧な仲介屋カシス》

 パワー1000


 標的となったことでゴーグルの下の顔をぎょっとさせるカシス。【守護】持ちでこそあれどまったくもって戦うタイプではない彼女がパワー8000の大型ユニットに対してできることなど何もなく。津波を思わせる規模と勢いで迫りくるリヴァイアサンにそのまま飲み込まれて撃沈。そしてカシスが不在となったことで、ユニットの数以外にもフィールドに変化が起こる。


「鉄屑浚いの自己強化は発動後に数値が定着するタイプではなく、状況に応じて常に変動する常在型に近しい効果。そうですよね?」


「ああ。私の場にいる種族『アイアンスミス』のユニットが減ったことで強化幅が落ち、鉄屑浚いのパワーは9000から8000にまでダウンする。しかし──」


 しかしそれでも8000。強力であることに変わりはない。リヴァイアサンであれば巨人に対してそうしたように、相打ち後に自分だけ蘇り一方的にアドを取ることもできるが、やるなら今そうすべきだったろうとエミルは思う。つまり、リヴァイアサンで攻める前にどうにかしてカシスまたはレストアを処理し、先んじて鉄屑浚いのパワーを下げておけばよかったのだ。


 ターン開始時点でのマコトの手札は四枚。その中にユニットを片付けられる手段がなかったのだとすれば致し方ないことだが、けれどエミルのオーラによる妨害を受けているわけでもなし、本当に手札が不揃いなのだとすればそれはマコトの引き運があまりにも陰っていることの証拠となる。ここまで見てきた彼女のファイトからすると少々考えにくくはあるが──。


「もちろん手段は用意していますよ。ただし、あなたが思うよりもずっとわたしらしいやり方ですが」


「……!」


「まずはリヴァイアサン第二の効果。相手ユニットを屠ったことでのドローを行ないます」


 あくまで口調は冷静に、しかして闘気は全面に。エースを駆るマコトの出で立ちは、彼女が愛してやまぬ宝妙ミライが攻勢を仕掛ける際のそれにそっくりだった。


 引いたカードを手札に加えたマコトは、それとは別の一枚。スタートフェイズでドローしたカードを抜き出した。


「ふ。やはり必要な札を引けていた、ということか」


「やらいでかと返させてもらいます──4コストを支払い、スペルカード詠唱! 《リキッドミーティア》!」


「そのカードは……!」


「ご存知のようですね。しかしマナーとして説明しておきましょう。《リキッドミーティア》は自軍の青陣営ユニット一体を対象として発動できるスペル。その効果は『このターン中、対象ユニットは相手の全ユニットへアタックできるようになる』というもの。わたしの場にいるユニットは一体のみ、当然対象になるのは《回遊するリヴァイアサン》です」


 アタックを終えて疲労レスト状態になったことで多少の落ち着きを見せていたリヴァイアサンが、《リキッドミーティア》の効果を受けて再活性。またぞろ激しく身をよじらせて主人からの攻撃命令を待ち構える。


「リヴァイアサン、起動スタンド! そして即アタック! 攻撃対象は《仲間呼びのレストア》!」


 《仲間呼びのレストア》

 パワー1000


 レストアも効果こそ有用だが非力さではカシスにも負けない、どころか更に劣っていても不思議ではない見た目をした貧相な少年ユニットだ。スタイルの良さよりも飢えを感じさせるその細腕では巨体の怪物に抗えるわけもなく、レストアと同様のやられ方であっさりと海の藻屑となってしまった。


「また『アイアンスミス』の数が減りましたね。鉄屑浚いのパワーが更に落ちます!」


「む……」


 《レッドバレーの鉄屑浚い》

 パワー7000


 鉄屑浚いの元のパワーは6000。自身も『アイアンスミス』であるために強化値こそゼロではないが、しかし7000という数字は彼にとっての最低値に等しい。単体で立たせるのでは鉄屑浚いの強さを活かせているとは言えず、何より目の前にレストア以上の飢えを感じさせる狂獣がいること──それよりも明確にパワーで劣ってしまったことが何よりも問題だった。


「レストアを戦闘破壊したことによりわたしは追加でもう一枚ドロー……そしてリヴァイアサンは《リキッドミーティア》の効果により再起動スタンド! 続けて鉄屑浚いへアタック!」


 鉄屑浚いは装備している自家製の足具を開かせてスパイクのように床を掴み、なんとかリヴァイアサンの激流の如き攻撃から身を守ろうとしたが──しかし戦闘巧者である彼であってもパワー差は如何ともしがたく、結局は勢いに飲まれ轟沈。エミルが築いた戦線はリヴァイアサン一体によって完全壊滅へと至ってしまったのだった。



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