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281.無陣営デッキ、最大のメリット!

「《仄暗き指導者》を召喚した時点で既にコストコアは使い切っている。これ以上できることもない……我はターンエンドだ!」


 溜まっているコストコア五つを全てレストさせて呼び出した指導者。そこから聖女を呼び、更に大回廊というエリアカードまで展開してみせたミライは「取り回しの良さ」が自慢の『仄暗き』カテゴリを実に見事に操っている。これはその最中にロコルへ《英雄叙事詩》の使いどころを迷い惑わせた巧言も含めての評価である。


 その工夫が真実功を奏したのかというと、ロコルの指導者ではなく聖女にコピーを切った判断が本当にミライの誘いに乗せられた結果であるかどうかは本人にしか知り得ないことなので、判然とはしないものの。しかしミライがドミネイターとして巧者であることは間違いがない。その結果が、つい先ほどまでは空っぽだった彼女のフィールドの変貌ぶりによく表れている。


 《仄暗き大回廊》エリア


 《仄暗き聖女》

 コスト2 パワー3000 MC


 《仄暗き指導者》

 コスト5 パワー5000 MC 【守護】


 二体の『仄暗き』がお互いを参照として、大回廊の効果により1000×2のパワーアップを果たしている。ミキシングとしては非力なのが特徴だったはずの彼女と彼が今や立派にミキシングらしい一線級のパワーを有しているのだから堪ったものではない……と思いつつ手番の回ってきたロコルはデッキからカードを引く。


「自分のターン、スタンド&チャージ。そしてドローっす」

(優れたアド確保能力を持つ代わりにパワーが低いユニットがパワーアップしちゃったらそれはもうなんの欠点もない極悪ユニットっすよね。ムキムキの『フェアリーズ』とか反則っす……いやまあ、『仄暗き』の相互補完的なやり方はどちらかというと白のそれっすけど)


 ミライのデッキカラー同様『仄暗き』の構成色は白と黒。そして多くのミキシングが構成色のひとつの特色が強く出ているのと同じく、『仄暗き』の場合はどちらかと言えば白のこそが浮き出ているようにロコルには思えた。


 なんと言っても白とは緑に次いでユニット間の繋がりに厚い陣営だ。白使い舞城オウラの得意戦法である『鉄壁』。それがただでさえ強力な白の守護者同士が、互いを強化し合うことで完成する他を寄せ付けぬ絶対防御であることからも明らかな通り、残る三色とは連携の巧みさが違う。……というより他がひどいと言うべきか。破壊の一点だけにシナジーが絞られている黒や、良くも悪くも個人主義である青、そして共に攻め込む以外の連携の取り方を知らない赤。これらと比べれば連携こそが特色である緑は勿論のこと、次点で白こそがその分野に秀でていると評されるのは当然のことでしかないのだが──と、そこで明後日の方向へ進みかけていた思考をロコルは引き戻す。


 ついつい関係のないところまで考えが伸びてしまうのは自分の悪い癖だ。


(協力の大切さを知っているからこそ、より厚い連携を取ってパワーでも上を行く緑陣営に白陣営は弱い……うーん、ミライちゃんを相手にはいつも通りのデッキの方がかえって戦りやすかったっすかね?)


 何せこのデッキは、対ミライではなく決勝戦を見据えて構築したものであるからして。そこで確実に戦うであろう相手に勝つために組み上げた、作り手ながらにとてもピーキーな代物なので、本来なら決勝以外で使うつもりなどなかったのだ。けれどもミライのあまりの熱い想いに、彼女の本気ぶりに中てられて……というよりも、それに応えないのが失礼に思えて。たとえ自分の首を絞める結果になろうとも一足早く本命デッキを解禁することにしたのだ。


 ファイトの勝敗がそうであるように、デッキの相性もまた水物。普段使いのそれより完成度で勝る自信があったとしても相手のデッキタイプによってはその真価が発揮できるとは限らない──ロコルとてそういった懸念は織り込み済みであったし、案の定、それによる不都合は出てしまっているが。そして当初のプランをその場の思い付きで変更してしまったことを大いに反省していたりもするが。


 しかし彼女は後悔だけはしていなかった。


「ま、楽しいんだからそれでいいっす。いつだってファイトは楽しんだもん勝ちっすからね」


 《英雄叙事詩》オブジェクト


 《トツカノツルギ》オブジェクト


 《ドッペルズ・トークン》

 コスト2 パワー4000 +【好戦】


 《仄暗き聖女・トークン》

 コスト2 パワー2000 +【好戦】


 相手のフィールドと自身のフィールドを見比べる。パワー負けしているのは己の方。そして現在『仄暗き』と名の付くミキシングユニットには戦闘破壊耐性が付与されているので、仮にパワーで上回ろうとバトルを仕掛ける意味がそもそもない。ふたつのオブジェクトにより戦闘で優位に立つのが狙いであったロコルとしてはなかなかに困ってしまう状況ではあるが……ミライが的確にそこへ手立てを打ってきたのなら、それを受けての戦い方というものをこちらも見せてやればいい。


「──スタートフェイズを終えてアクティブフェイズ! 3コストでスペル《廃品業》を唱えるっす! その効果により、自分の場のオブジェクトを好きな数だけ破壊するっす!」


「なにっ、オブジェクトコンボを自ら破棄するというのか!」


「大回廊一枚でひっくり返されたコンボなんすから別の使い方をすべきっす。ミライちゃんもそう思わないっすか? 《英雄叙事詩》と《トツカノツルギ》を破壊対象に指定して、《廃品業》の効果処理っす! この効果で破壊したオブジェクトの数だけ自分はデッキからカードを引き、更にその半分の数だけコストコアをチャージすることができるっす!」


「ドローとチャージを一枚のスペルで賄うか……!」


 破棄したオブジェクトがふたつであるためロコルは二枚の手札を増やし、そしてその半分の数。つまり1コスト分を補充チャージした。この効果でスタンド状態のコストコアが増えたために、ロコルにはまだ使用可能な3コストが残されていることになる。


「オブジェクトを多用するデッキであっても使いどころがけっこー難しいのがこの《廃品業》っすけど、こういう場面では役に立つっすね」


「抜かせ。つまりは貴様のトークン殺法にはまだ第二・第三の矢があるということ。そうでなければ、いくらアドバンテージを得るためと言っても場に出ている強力なオブジェクトカードを二枚も犠牲にするはずがない……」


 トークンの生成と、強化。それをオブジェクトやスペルで延々と繰り返していくことが『トークン殺法』……というのは過ち。ロコルが組んだ無陣営デッキが持つ武器はそれだけではないとミライはまったく躊躇のない《廃品業》の打ち方から見抜いた。その気付きに対してロコルは「てへっ」と妙に可愛らしく舌を出して応える。


「それっぽく言ってみてもやっぱりミライちゃんにはバレちゃうっすか。そうっす、このデッキにとってオブジェクトは基本的に繋ぎ的な役割っす。大事ではあるけど根幹ではない……だって無陣営だけでデッキを組む上での最大のメリットと言っていいカードは他にあるんすから」


「無陣営で組む、最大のメリットだと?」


「今のドローはそれを持ってくるためのものだったんすけど、ちゃんと引けて一安心ってところっすね。というわけでお返しとして早速お見せするっすよ、自分の切り札であるエリアカードを!」


「……!」


 《仄暗き大回廊》というエリアカードを切り札に据えているミライに対抗するようにしてプレイされたそのカードの名は──。


「残った3コスト全て使って! 《クリアワールド》を発動するっす!」

 


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 仄暗き、がキーワードで発動するなら、仄暗き聖女・トークンにも効果が掛かって +3000の上乗せがお互いに使われたりするんじゃないかな?と思いました
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