表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
217/510

217.瞬時構築、大戦線!

「オリヴィエと同じくルゥルゥにも蘇生効果がある。蘇らせられるのは種族『フェアリーズ』か『キメラ』。俺が蘇生対象とするのはもちろん、墓地にいる最後の妖精! 《恵みの妖精ティティ》だ!」


 闇妖精の力で再び墓地より舞い戻るティティ。そして効果は連鎖する。


「今度はティティの登場時効果を発動、カードを二枚ドローしてその内の一枚をコストコアへ変換チャージ!」


 この瞬間、使用済みも含めてアキラのコストコアは十個となり二桁の大台へと達した。手札も六枚と豊富にある。これからより苛烈さを増すであろう彼のプレイングを予見しつつ、エミルは言った。


「ルゥルゥからのティティ、前の流れとまったく一緒。ということは、次の一手もそうなのかな?」


「ああ、使わない手はないさ。ここで俺はルゥルゥの起動型効果を発動! 自分の場の『フェアリーズ』か『キメラ』のユニットを破壊することで、相手の場のカード一枚を墓地へ送れる。まず俺の場から選ぶ破壊対象は──『アニマルズ』と『キメラ』の種族を併せ持つミキシングユニット、《遠笛吹きのオリヴィエ》だ!」


「ほう」


 先ほどは効果を使い終わったティティを即座にとしていたアキラだが、此度の犠牲に選んだのは低パワーの妖精よりもずっと強力なユニットであるはずのオリヴィエ。無論、エミルは忘れてなどいない。黒陣営スペル《完全蘇生》によってオリヴィエには破壊耐性が付与されており、つまり彼を対象に取ればルゥルゥの犠牲ありきの除去効果を実質ノーコストで使用できることになる。……だとしても、所詮は使い切りでしかない耐性をなくしてまでティティという盤面への干渉力が皆無な小型ユニットを生き残らせる意味があるかというと微妙なところだ──というのは、他にも妖精が存在していなければの話。


(やはり『そのつもり』だな。何せ彼の場には妖精の数だけ次に召喚されるユニットのコストを下げる《慈しみの妖精リィリィ》がいるのだから)


 一体でも多く『フェアリーズ』を残す価値はある、ということだ。手に取るように、まるでアキラ本人となったかのように彼のここから先の行動が把握できる。これも無論のこと、エミルは公開された情報なら全てきちんと覚えている──故にアキラの手札にある『例の二枚』が今こそ使われるだろうと高い確度を以て予測できていた。


 そう読まれていると、半ば気付きながらも。しかしアキラの気迫は留まらない。


「一度だけの破壊耐性を使ってオリヴィエは無事だ。そして味方の破壊が不発だったとしてもルゥルゥの効果処理は問題なく続行される──俺がお前の場から墓地へ送るのは、である《クリアワールド》だ!」


「カード種を問わない墓地送り……で、今回はエリアを対象としたか。正しい選択だと思うよ」


「そりゃあ、迷う必要もない。というより迷わせてもくれない性能をしているからな、そのエリアカードは」


 ずずず、と両者のフィールド全体が一瞬だけ闇に包まれ、そして晴れていく。《クリアワールド》が文字通りの透明な世界だったことで場に変化らしい変化は起きていないがルゥルゥの効果でエリアが排除されたのは確かなようだった。これで自分・相手のターンを問わずに無陣営カードを復活させる、という反則めいた戦法をエミルは取れなくなったそのことにアキラは「ふう」と安堵の息を漏らす。


 このエリアを残しておいては何度倒してもアリアンが蘇ってくるばかりか、そのついでに《依代人形》まで出てきてアリアンを守りつつエミルにドローまで許してしまうことになる。それでまんまとオリヴィエの破壊効果から逃れたのがつい今し方なので、アキラは一層に何がなんでも《クリアワールド》を除去しなければならない──そうしなければ勝ちの目はない、と確信したところであった。


 なのでひとまずルゥルゥの墓地送りが通じたのは重畳。だが、まだだ。インチキめいた性能を持つ《クリアワールド》も結局はアリアンを場に存続させるための隠れ蓑に他ならない。色を好きに操るかの精霊をどうにかしないことには、エミルのミキシング戦法に支障は出ない。


「ここからが正念場だな……いくぞ、エミル!」


「ああ、来るといい。私をもっとファイトで釘付けにしておくれよ」


「だったらこれでどうだ──三連続召喚!」


「!」


「来い、《獣奏リリーラ》! 《ジャックガゼル》! 《幻妖の月狐》!」


 ユニット三体の一斉召喚。その行為にかかる本来のコストは11。使用できるコストコアが残り八つであるアキラには実行が叶わないはずのそれが、しかし今はリィリィの能力によって場のフェアリーズの数だけ──即ち3コスト分も軽くなっているからには。


「リィリィの効果が適用され、リリーラの召喚コストは5から2へ下がっている。つまり八つぴったしでコストコアは足りている! そして更に、月狐とリリーラの効果も発動だ!」


 割り込みはない、とばかりに黙って手を向けるエミル。ならばとアキラは順序良くユニットの効果処理へと入る。


「まずは月狐の効果で一枚ドロー、その後手札から一枚墓地へ捨てる。次に《獣奏リリーラ》の効果を適用、このユニットと共に場にある全ての『アニマルズ』ユニットへ【守護】を付与する──しかもこれは一度与えればリリーラが場を離れても消えない、永続作用!」


「そうか。エレノラとリリーラの獣奏姉妹には常在型効果特有の『場を離れれば強化がなかったことになる』という弱点がないのだね。ということは、だ」


「ああ! これで俺のフィールドは完成した!」


 《遠笛吹きのオリヴィエ》

 コスト6 パワー5000 MC +【守護】


 《宵闇の妖精ルゥルゥ》

 コスト3 パワー1000 MC 【復讐】


 《慈しみの妖精リィリィ》

 コスト3 パワー1000


 《恵みの妖精ティティ》

 コスト3 パワー1000


 《獣奏リリーラ》

 コスト6 パワー5000 QC 【守護】


 《ジャックガゼル》

 コスト4 パワー4000 【好戦】 +【守護】


 《幻妖の月狐》

 コスト2 パワー2000 +【守護】


 結成された『アニマルズ』を中心とした軍団は、リリーラによって得られた【守護】によって攻めにも守りにも厚い布陣である。計七体。貧弱なユニットも混ざっているとはいえ壊滅状態からひと息にここまで持ってきた、立て直してみせたアキラの腕前はやはり本物だ。ティティや《緑応鹿》の効果を繰り返し利用することで地道にアドバンテージを稼ぎ続けたからこそ可能な、備えの実った展開力。それによって作られた賑やかな戦線にこそ目を引かれるのは当然で、実際に二階席を埋める生徒らは感嘆と感心の入り混じった様子でどよめいているが──しかしエミルは。


(私には見えているよ、アキラ君。月狐の効果で墓地へ送ったのが君の切り札の一枚である《ビースト・ガール》であることが)


 これでアキラの墓地にはガールが、コアゾーンには《ダークビースト・マリナス》が。見える範囲だけでも二箇所に『ビースト』カードが埋まっていることになる──エミルはそれを無意味な出来事とは捉えない。大いに意味ある符丁と考えるのが妥当だろう。前回のファイトでアキラが連続のスペル詠唱によって場にビーストを揃えたのは記憶に新しく、鮮明に焼き付いてもいる。正確に言えばプレイそのものよりも当時の彼が放った輝きこそがエミルの目を焼いたわけだが、それはともかくとして。


(勇猛にして用意周到。それこそが君の強さであり怖さだ。よもや私が見間違えるはずもない──感じているとも。私に応えるように、高まる君の鼓動・・をこんなにも近くに!)


 ──ドミネユニットを呼び出す準備をしているのは、エミルだけではない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ