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212.アキラの反撃、届かせる牙!

(我が天賦の発露。それにもまったく怯まないか──いやむしろ。彼のオーラも増している。まるで私に呼応するように、共鳴するように! いいよ、それでこそだアキラ君。君はそうでなくてはな……!)


(怯む必要なんてない。ファイトは楽しいものだってことを忘れちゃダメだ──この全てを飲み込むようなエミルのオーラにも、俺だけは! 決して飲まれるわけにはいかないんだ!)


 平行線の主張を終え、交わりのファイトが再開される。手番が移り現在はアキラのターンである。


「スタンド&チャージ、そしてドロー!」


 《無限の従来ポリテクス》

 コスト4 パワー5000 TMC 【守護】 【疾駆】


 《円理の精霊アリアン》

 コスト2 パワー1000


 《依代人形》(オブジェクト)


 改めてアキラは先ほどとは変化したエミルのフィールドを眺める──アリアンを守る壁二枚。その構図に変わりはなくとも、しかし前のターンはそこにプラスして《焔魔の巨巌サタノサティス》というアタッカーまで揃っていた。それに比べれば、アリアンへの手出しが一筋縄でいかないという状況こそ同じでも戦力差はまだマシになっていると言える。何せさっきは全滅状態でターンが回ってきたアキラのフィールドに今ならデスキャバリーがいるのだ。この状況において【復讐】持ちの彼は、ポリテクスとも相打ちを取れる有用な攻め手として数えられるだろう。


(つまり実質的にアリアンを守る壁は《依代人形》一枚……今度こそいける。それもこの手札ならデスキャバリーを犠牲にしなくても……!)


 一気にふたつもライフコアを奪われたことでライフアドバンテージこそほぼ消失してしまったが、しかしアキラの手札は七枚、使えるコストコアもこのターンのチャージによって七つにまで増えた。


(となれば無論。君ならばやってくれるはずだね、アキラ君!)


(そう目を輝かせなくたっていいんだ。心配しなくたって、俺はお前に屈さない!)


 色彩の揺れる青みがかった黒と、陽に照らされたような琥珀。見つめ合う瞳が互いを映し合い、そしてアキラは手札からそのカードを繰り出した。


「5コスト! 緑のスペル《ポップピックアップ!》を唱える!」


「そのスペルは確か、墓地と手札から──」


「そう! 両方からユニットを一体ずつ呼び出すことができる! ただし同種族かつ4コスト以下の同コスト、という制限はあるが……もちろん俺が呼ぶユニットはその条件をクリアしている!」


 4コスト以下で、手札にも同種族がいるユニット。アキラの墓地に眠るカードをざっと思い浮かべ、すぐにエミルは察する。彼が呼び出すのは間違いなく。


「選ぶ種族は『フェアリーズ』。まずは墓地から蘇れ、黒緑のミキシングユニット! 《宵闇の妖精ルゥルゥ》!」


「やはりそう来たか……!」


 自ら振り撒く闇の中で踊る小柄な少女。その再登場に眉をしかめながらも笑みを深めるという器用な表情をエミルが見せる中、アキラはスペルの処理を進める。


「お次は手札から《慈しみの妖精リィリィ》を召喚だ!」


 《慈しみの妖精リィリィ》

 コスト3 パワー1000


 こちらも『フェアリーズ』らしくやはり少女、ながらに慈母の如き包容力のある笑顔を浮かべた嫋やかな妖精。同じ種族でもルゥルゥとは受ける印象の異なる彼女だが、その能力の強力さをエミルは知っている。


「場の妖精の数だけ次に呼ぶユニットの召喚コストを軽減させる効果、だったね。召喚先の陣営や種族に特に制限のつかない便利な力だ……それで君は何を呼び出す?」


「おっと、まだ気が早いぜエミル。その前にまずはルゥルゥの登場時効果だ!」


 ルゥルゥには登場と同時に墓地の種族『フェアリーズ』か『キメラ』のユニットを一体蘇生リアニメイトする能力がある。それによってアキラが呼び戻すユニットは。


「さっきと同じだ! 《恵みの妖精ティティ》を蘇生召喚! そしてその登場時効果で二枚ドローし、内一枚をコストコアへ変換する!」


「コアブーストや手札増強に余念のないことだね。同じ動きを繰り返しているだけとはいえ手堅くていいプレイングだ。ということは、この後の流れもそうなのだろうね」


「ああ。ティティには申し訳ないがもう一度墓地へ行ってもらう──ルゥルゥの起動型効果を発動! 場の『フェアリーズ』か『キメラ』を破壊することで相手の場のカード一枚を墓地へ送る! 俺はティティを破壊、そしてお前の場からは再び《依代人形》……ではなくて! 《無限の従来ポリテクス》を墓地送りの対象として選ぶ!」


「おおっと、そっちか」


 ティティという尊い犠牲が増やしたルゥルゥの闇。それがひと息にポリテクスを包み込み、もっと暗く深い場所へと引き摺り込む。さしもの隙のない守護者である墓碑天使も直接の墓地送りには抗えず沈み消えていった──トリプルミキシングユニットの呆気ない消失。しかしてエミルの余裕は消えず。


「偉い、偉い。ちゃんと間違えなかったねアキラ君。そうだ、この状況であればそれで間違いない」


 オブジェクトである《依代人形》の処置にはカードの種類を問わずに除去できるルゥルゥを用いるのがうってつけのように思える。それは間違いではないが、しかしだからとて人形をルゥルゥで処理するのが正解かどうかは時と場合によって異なる。前ターンの自身のプレイに引っ張られることなく正しい答えを選び直せたアキラへ、エミルからの賛辞が送られる。


「血気こそ募らせていてもプレイングの方は変わらず冷静なようで安心したよ……ここから君がどうするのかは大体予想もついている。さ、遠慮なくやってしまうといい」


「……俺の場のユニットが破壊されたことで墓地の《暗夜蝶》の効果を発動、自身を蘇生させる。そしてリィリィの効果を適用し、場のフェアリーの数だけ召喚コストを軽減。残った3コスト+軽減2コストで、召喚! 《獣奏エレノラ》!」


 《獣奏エレノラ》

 コスト5 パワー4000 【好戦】


「エレノラ。君が先ほど《緑応鹿》の効果で手札に加えた《獣奏リリーラ》と姉妹関係にあるユニットだね。確か、姉がエレノラで妹がリリーラだったかな?」


「どっちも知っているなら話が早い。エレノラにはリリーラと同じように付与能力がある──ただし同種族にしか付与できないリリーラとは違って、このカードは自身と共にある自軍のに【好戦】を与えられる! これによって俺のユニットたちは【好戦】をゲット、召喚酔いを気にせずアタックできるようになった!」


「ふむふむ。どんな方法でアタック数を増やすのかと思えば、なるほど。実に緑らしく、そして君らしいやり方で来たね」


 これで足りた。と、アキラとエミルの思考は重なる。ようやくアキラはエミルの戦術を崩すことができるのだ──その割にアキラの顔付きが険しく、反対にエミルの顔付きが泰然としているのは。


「まずはデスキャバリーでアタック!」


「攻撃先は?」


「当然《円理の精霊アリアン》だ! 【好戦】によってスタンド状態だろうと問題なく攻撃ができる!」


「ふ。ならばこちらも当然、《依代人形》で破壊を請け負おうか」


 戦意に満ちた重騎士と戦いを知らぬ非力な精霊とでは争いにもならない。呆気なくアリアンが一方的にやられるのは規定事項、よってエミルはオブジェクトの力でそれを覆す。


「アリアンの戦闘破壊を人形が肩代わりし、墓地へ。この効果で墓地へ置かれたことで私はデッキからカードを一枚ドローするよ」


「構わない。続けてエレノラでアタック! もうアリアンを守る壁はないぞ!」


 しなやかな下半身で跳躍、からの伸びやかな蹴りの一撃。エレノラの穏やかそうな見た目には反する強烈なアタックによってアリアンは悲鳴も上げられずに四散した。

 


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