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164.激闘、破壊まみれのファイト!

 《スターマイン・ロートレー》

 コスト7 パワー7000 【疾駆】


 スターマークが胸元に輝くコスチュームを身に纏った、星形の頭部に特大の眩しい笑顔を浮かべた筋骨隆々の男。見た目は奇天烈、だが得体の知れないパワーを感じさせるそのユニットの登場にアキラがぎょっとした途端。ロートレーはスマイルをそのままに吶喊、太い腕を振るってパンチを繰り出してきた。瞠目するアキラの目の前でライフコアがあっさりと巨拳に砕かれ、残りは四つ。


 連続ブレイクにも大した感慨を見せずにムラクモが言う。


「ロートレーは同名を除く種族『スターライト』のユニットが戦闘以外で自分の場を離れた時、自身の効果で手札から召喚されるユニット。そして【疾駆】持ちでもある」


「自己召喚効果持ちの【疾駆】ユニット……!」


 クロノやエミルも使う《滅殺ドルルーサ》の登場条件をより限定的にした代わり、より攻撃的にしたようなユニットだ。白陣営にも破壊がトリガーになるユニット(説明からすると『破壊』以外にも対応しているようなので厳密には破壊自体がトリガーではないし、その点で言えばドルルーサ以上に条件が緩いとも言える)が存在していたとは知らなかったアキラだ。この展開、そして追撃まで受けてしまうのは予想外もいいところであったが……しかし彼は覚醒の兆しを持つドミネイター、二度目ともなればを掴むのになんら不可能などなく。


「再びクイックチェック──引いたカードは《闇重騎士デスキャバリー》!」


「!」


「もちろんそのまま無コストで召喚する!」


 《闇重騎士デスキャバリー》

 コスト5 パワー4000 QC 【守護】 【復讐】


 どすん、と重々しい音を立てて騎馬に乗った重騎士がフィールドに表れる。馬も騎士も共に動く屍ではあるが、その闘志は生前の頃となんら変わりなく燃え滾っていることを兜の奥の眼窩で煌々とくゆる青白い炎が教えている。アキラの呼びかけに馳せ参じた忠義の戦士は骨の一片、魂の一片までも主君に捧げるつもりでいる──その熱意に対して、生者であるはずのムラクモの方が余程冷ややかに。


「ま、お前なら引き当てるよな。そう予想できるんだから対応の手段だって用意する」


「!?」


「ロートレーのもうひとつの効果。相手ユニットの登場時、自身を破壊することでそのユニットも破壊できる。要するに自爆での無理心中だな。そいつを発動させてもらう」


「自爆だって──うっ!?」


 白らしからぬ破滅的な効果。しかし見方を変えれば我が身を賭してでも強敵を屠り去らんとするヒーローの鑑のような効果でもあるのかもしれない。恐れることなく死の騎士に組み付いてカッと光ったロートレーが盛大に爆発する、その直前までスマイルを絶やしていなかったことにアキラはそんな風に思った──そしてセンチな感想を紡いでいる心とは別の部分で、ロートレーの自己召喚効果に『同盟を除く』という縛りがあった理由も冷静に理解することができた。


 それはロートレーに自身を能動的に破壊する方法があったからだ。そこに制約がついているおかげで、仮にムラクモの手札に二枚目のロートレーがあったとしてもこの自爆をトリガーにそれが出てくることはない。使い手からすれば歯痒い縛りかもしれないがアキラとしては助かった──とはいえ、だ。


「やってくれますね、ムラクモ先生。【守護】と【復讐】を併せ持つデスキャバリーは先生からすればとても厄介だ、確かに即刻退場させたいユニットでしょうけど……そのために出したばかりの大型ユニットを躊躇いなく犠牲にするなんて」


「どうせ【復讐】持ちには相打ちを取られるからな。それ以上に次のお前のターンでデスキャバリーを起点にでもされた方がよほど厄介だ。ここで殺しておくに限る。一対一の交換と言ってもロートレーはお前のライフを奪うという役目を既に果たしている、収支的には俺にプラスだ」


「っ……、」


 まったくもってその通りだった。残りライフ四。先行二ターン目にここまで減らされることなどそうはない──相手が攻撃特化の赤単使いでも珍しい部類だ。それを白黒の組み合わせで、しかもコストブーストと手札の補充まで行いながらやってくるムラクモのタクティクスは尋常ではない。


 加えてムラクモは攻めに長けているだけでなく先を読む力もかなりのものだ──デスキャバリーの起点化を許さない。実際、直近のファイトであるエミル戦でデスキャバリーをコストへ変換して攻勢に出たアキラは彼のその判断にどきりとさせられた。次のターンで同じことをしようと予定していた、わけではなくとも。しかし当然のようにそのケアをしてくるムラクモの卓越した技量に舌を巻いたのだ。


 ──これがムラクモ先生の本気・・


 たまに指導ファイトで相手をしてくれる時とはまったく違う、こちらの戦術の全てをシャットアウトするようなその静かな気迫にアキラの額には汗が浮かんだ。


「どうした若葉。空調は整えられている、暑いわけでもないだろうに……そのザマでエミルへ挑むのか。挑めると思っているのか、お前は」


「挑めない、ですね。せっかく引き当てたクイックユニットを簡単に処理された。……俺がその程度のことで怯むようなドミネイターだったなら!」


「……!」


「俺のターン、スタンド&チャージ! そしてドロー!」


 勢いよくデッキからカードを引いたアキラは、それを手札に加えてから別のカードを引き抜いた。


「デスキャバリーはまだ死んじゃいない──そもそも黒のユニットに『死』なんて概念は本来ないんだ! 後行プレイヤーに与えられる二回目のディスチャージ権を使用、ライフコアをコストコアへ変換! そしてオブジェクト《緑莫の壺》を起動、このカードをレストさせることで黒のコストコアを一個捻出! これで使用できるコストコアは合計五つ。その全てを使って黒のスペルを発動、《ダークモーメント》!」


「そのスペルは……!」


「そう、同コストで同じくクイックスペルである《ダークパニッシュ》の類似カード。あちらと違って自分の墓地に黒のユニットがいないと手打ちでもクイックでも唱えられない制約がある代わり、相手ユニットの破壊と同時に墓地の黒ユニット一体を蘇生リアニメイトすることができるスペル! 当然俺が蘇らせるのは《闇重騎士デスキャバリー》! 再び戦場に現れろ!」


 もこり、とフィールドの一部が盛り上がったかと思えばそこから死した騎士が騎馬と共に飛び出してきた。先ほどは登場した途端にやられてしまったためか、今度の彼は(そして鼻息(?)のようなものを立てている馬も)一層の殺る気に満ち溢れており、蘇ったばかりですぐに敵へ向けて駆け出した。


「《ダークモーメント》で破壊できるのは蘇生させたユニットのコスト以下のユニットに限られる。だけど先生の場には3コストの《魂歯みのシロマネキ》がいる! 問題なく破壊できる」


 やれ、デスキャバリー! 主君からの号令が下ると同時に騎士の突撃槍が巨大な蟹を貫き、一撃のもとに仕留めた。これでムラクモの場は全滅。対するアキラは頼りになる守護者であるデスキャバリーを取り戻した。今のはあくまでスペルによる破壊であるためにデスキャバリーはレストしておらず、ガードが行える。なるほどいいカードの組み合わせ方だとムラクモは感心し、それによってアキラのデッキ構築の変化を見る──だけでなく。


(若葉の使うデッキは緑主体の黒タッチ。黒のカードはあくまで補助、採用されているのも《ダークパニッシュ》のように単体性能に重きを置いたカードばかりだった。だが《ダークモーメント》……パニッシュよりも明らかにコンボ性の高いカードが入っている、ということはだ)


 それと共に、アキラ自身に起きている変化についても察していた。



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