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131.大攻勢、一気呵成のアキラ!

 《マザービースト・メーテール》

 コスト9 パワー4000


 《キングビースト・グラバウ》

 コスト7 パワー7000 【好戦】


 《バーンビースト・レギテウ》

 コスト6 パワー5000 【疾駆】


 《ビースト・ガール》

 コスト4 パワー4000 【疾駆】


 《呼戻師のディモア》

 コスト4 パワー2000


 メーテールの効果を用いてアキラが築いた布陣。ターンの開始時にはディモア一体だけだったとは思えない壮観の並びに、それと真正面から相対しながらもエミルから余裕は消えない。彼の笑みは深まるばかりである。


「バトル? いいともアキラ君。君が三枚のスペルを駆使して作り上げた戦線は、けれど単純なプレイングだけではなく。カードを『屈服させている』からこそできたもの。その力を私に見せてくれ」


「──さっきから」


「うん?」


「屈服だとか支配だとか、随分とカードに対して物言いが厳しい。あなたがどんなつもりでドミネイションズに接するかはあなたの自由だ、とやかく言いはしない。だけどその認識を押し付けるのはやめてくれ──俺はカードを支配なんかしていない。一枚一枚が俺を助けてくれる仲間なんだから」


「だが対等・・ではない。そうだろう? 君が持ち主であり操り手。カードは所持物であり操られる側。そうでないとなんの力もない一枚の紙切れだよ。主従の関係は絶対にして不変。無論、カードに振り回されているようなドミネイターが論外であることは論を待たないよね」


「…………」


「そう気色ばむことはない──これは否定ではなく啓蒙だ。そして侮辱ではなく賛美なのだから。支配とは即ちカードの力を十全に引き出すということ。君が支配する君の切り札たちは、ほら。こんなにも強く美しい。アキラ君のドミネイターとしての資質を表す何よりもわかりやすい基準じゃないか」


 アキラの闘志に呼応して戦意を募らせているユニットたち。特にビーストの中でも攻撃的な能力を持つグラバウ、レギテウ、ガールの三体はまるでその身が輝いているかのようにも見える──百パーセント。主人からの期待を受けて、期待に応えんとする。その意思疎通、相互信頼の理想的な形がエミルの目の前にあるものだ。そうと認めつつも、しかし。


「とはいえ君が真に輝かせられるのはビーストと名の付くユニットくらいのようだ。忠告しておくが、決してそれだけで満足してはいけないよアキラ君。何かしら大切な、特別なカードたちなんだろう。様子を見ればその程度のことは察しも付くけれど、思い入れのある特定のカードだけならば輝かせられるというドミネイターはいくらでもいる。そこに大した価値はない」


 信を寄せるエースカード然り、デッキの屋台骨となるコンセプト上のキーカード然り。その由来はともかくドミネイター自身の強い思い入れから、数枚のカードとの結びつきも強くなる。そういう現象・・は確かに起こることで、何も珍しくない。実力に関係なくそれくらいのことは誰だってできるのだから言ってしまえば今のアキラはそこの範疇から抜け切れていない。逸脱しきれていない、とエミルは心からそのことを残念に思う。


「『覚醒者』ともなればデッキの全てを、カードの全てを手足の如く……いや。手や足を動かすよりも余程無駄なく華麗に我が物として支配するのさ。アキラ君。君が複雑な手順を介してその陣営を築いた手腕は限りなくそれに近いもので、しかしその実、限りなく遠いものでもある。つまり、君はまだ、弱い」


「……!」


「ビーストを並べること。それを主題においた回し方だったものね……目的達成お見事。だが覚醒の素質ある者としてそのせせこましさはいつか捨て切らねばならないよ。私がお手本を見せてあげよう──だけどその前に、さあ。まずは君の全力で私を攻め立ててみようか」


「っ、言われなくたって……レギテウとガールでアタック!」


 二連続ブレイク。ライフコアが砕ける衝撃を間近に浴びつつもエミルの体軸はぶれない。華奢な体躯をしているがファイト中の彼に「弱さ」などあらゆる意味で存在しない。そう証明するような一本の芯が通った立ち姿でエミルはカードをドローする。


「クイックチェック──発動なし。引いた二枚とも手札に加えるよ」


 クイックカードが飛び出してこなかった。これはアキラにとって僥倖そのもの。今のアタックによってエミルのライフは残り三。【疾駆】持ちの二体をレストさせたためにアキラの場にダイレクトアタック可能なユニットはもう残っていない──が、彼には攻撃回数を増やす手段があった。それはエミルの場に《侵食生者トラウズ》がいるからこそできること。


「続いてグラバウでトラウズにアタック!」


「おや。攻勢の勢いに呑まれて忘れてしまっているわけではあるまいね? トラウズには【復讐】がある。先もそれでグラバウがやられてしまったばかりじゃないか」


「もちろん忘れちゃいないさ。グラバウじゃあトラウズとは相打ちにしかならない。!」


「!」


 コスト2のユニットとコスト7のユニットが相打ちになる。アキラからすれば天秤の釣り合わない交換を歓迎できるはずもない、というのに彼はそれを好都合だと言う。ならばここでグラバウが死ぬことに何か意味があるのだろうとエミルはすぐに答えへ行き着いた。


「ああ、。墓地からデッキへ、そしてまたフィールドへ。そうやって呼び直したエースの一枚を更なる攻勢のための『捨て駒』にしようというのだから、どこまでも支配的だ。まさに支配者ドミネイターに相応しい所業だね」


 滔々と語るエミルのすぐ傍でどちゃりとトラウズが潰され、飛び散り、その名の通りに再び再びグラバウを体内から侵食して道連れとする。アキラとエミル、双方のユニットが破壊された。それを契機に発動される効果がふたつ。


「レギテウの条件適用効果! このユニットが場にいる状態で他の自軍ユニットが破壊されれば、その数に応じて攻撃権が追加される──レギテウはもう一度起動スタンドする!」


「やはりそういうことか……ではこちらも、戦闘破壊をトリガーにこのユニットを出しておこう」


「戦闘破壊がトリガー……!?」


「無コストでおいで、《誅殺ドルレギオ》」


 《誅殺ドルレギオ》

 コスト5 パワー4000 条件適用・【守護】


 ドルルーサによく似た、巨大なワームにヒレのような手足が生えた姿をしているドルレギオ。自分の場のユニットが効果によって破壊されることが自己召喚のトリガーであるドルルーサに対し、このユニットは戦闘破壊が条件。対となるデザインになっているようだ。ユニット一体を犠牲に【疾駆】を得る《轢殺ドルマゴン》というユニットもアキラは確認しており、これらのシリーズはとにかく「破壊」がキーワードであるらしいと知る。しかしそんな気付きよりも注意を向けるべきは、この深緑色のワームにどんな能力があるのかという点だ。


「ドルレギオの条件適用効果。戦闘破壊されたユニットが黒陣営であればこのユニットは【守護】を得る──《侵食生者トラウズ》はミキシング。青でもあると同時に黒でもあるユニットなので問題なく条件クリアだ」


「守護者を出してきたか! だけど俺だって問題なし、これくらいは想定内だ。行けっ、レギテウ! エミル先輩へダイレクトアタック!」


「ふむ、一応は防ぐとしよう。ドルレギオでガードするよ」


 巨躯の黒狼と巨大なワームが正面からぶつかり合う。質量は互角だったが、しかし突入角度と肉体の堅牢さにおいて勝ったことで軍配はレギテウに上がり、ドルレギオは体色と同じ色をした血しぶきをあげて斃れた。


「やられてしまったね。でもドルレギオはよくやってくれた、これで君のアタックは途切れる」


「──いいや先輩。俺が詰めるのはここからだ!」


 そう応じたアキラの全身が、突如として光を放ち始めた。



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