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「今・・・なんと、仰いました・・か」





 大きな瞳をパチクリさせながらシンシアは驚く。

 久しぶりにアベルに会ったかと思うと彼からとんでもない事を言い始めた。


 “今夜、そちらで共にする。準備をしとく様に”


 アベルが言うには閨は最小限にしたいらしくシンシアが子を孕むであろう的確な日に終わらせたいと言う。

 ここ数日の内に公爵家お抱えの医者がシンシアの身体を調べてた事があったが、ここまで嫌がるとは。



「・・・返事はないのか」


「い、いえっ!分かりました、準備してお待ちしております」


 そう言い残すとアベルは再びレナが居るであろう別邸へと帰って行く。準備といっても何をすればいいのだろうか…

 身だしなみ?部屋の雰囲気を変える?分からない。




 その日の夜。


 本当ならば夫と共に寝る場所は完全にシンシア一人の寝室へと変わっていた。彼がずっと寝泊まりをしているのはレナが居る別邸、窓のその先にうっすらと見えるあの時の庭園をぼぅっと眺めていると人影が。


(ゆ、幽霊っ?!?!)


 パッとよく見ようと開けられない窓越しから見えたのはアベルが愛する者というレナが此方をずっと睨んでいた。レナの方からはシンシアが見ていると気付いておらず、数分睨んでそのまま庭園の奥の奥へ戻ってゆく。



(どうして・・あんな、表情を・・・あの時はっ)




 レナの睨む姿に悪寒が走るシンシア。


 そっと窓際から離れると同時にバンッ!!、勢いよく扉を開けズカズカと入り込んだのはアベル。周囲を見てチラリと視線をシンシアに移し、ギロリと睨む。



「何故だ」


 ガシッ

「え?い、いたっ・・・」


「何故そこでボーッとしているっ!準備をしておけと言ったではないか!」


「きゃあっ!?」


 アベルに掴まれそのままベッドに押し倒されるシンシア。恐怖のあまり体を縮こまらせるがそれを許さず、アベルはグイッと閉じられた両脚を無理矢理拡げる。

 かあっと顔を真っ赤にさせシンシアは何が起こったか理解出来ず。乱暴に下着を脱がされ…



(えっ?えっ?!まさか・・・ッッッ!!?)



「貴様に時間を掛けるのが惜しい、別に濡れてなくとも中へ子種を吐き出せばいいのだからなっ」


「だ、旦那さまダメですっ!私は初め・・グゥッ?!!」


 必死で止めようとするが抵抗虚しく強引に乙女の部分をこじ開けられ強い痛みが身体を駆け巡る。

 きちんと手順を踏んでなければ只々痛いだけ、苦行の時間で終わってしまう。


「かっ・・・はぁ・・ッ」


「チッ・・なん、と」


 乱暴に身体を揺さぶり、この長い長い苦痛の時間が早く過ぎればと涙をポロポロと頬から伝いアベルが小さく唸る。シンシアの中に吐き出されたのがゾワリと伝わり。





(や、やっと・・・終わっ・・たの?)


 ズグズグと下半身が火がついた様に熱く痛い。

 白いシーツとシンシアの純潔乙女としての証が散らばって、まるで真っ赤な薔薇みたいに咲き誇る。

 慣らしもしない行為にヘトヘトなシンシアがチラリとアベルの方へと視線を向けると彼はベッドから降りシャツを着ながらこう吐き捨て。


「役目は終わった。俺はもうレナの所に戻る」


 フンっとシンシアを労ろうとせず振り向かないまま部屋から出ていく様子に、完全にシンシアの何かが崩れ去った。

 アベルが提案してきた内容は分かっていたが、ここまで乱暴にされ嘘でもいいから労わる言葉をかけずに早々と部屋から出ていく姿に絶望する。



「でも、これは家同士の結婚・・・私が我慢すれば。いつかは旦那さまも気付いてくれるっ」


 涙を堪えようと行為後のベッドに丸くなりながら夜を過ごす。









 あれから国の行事や貴族の舞踏会の際にはパートナーとして付き添ってくれるが、中に入ってしまうとアベルはシンシアに壁際に居ろと命令口調で言われ離れてゆく。

 表向きは良き夫婦として、裏向きは愛する平民レナの為に。





「ハァ・・・ん、ぐっ?!」



 ある舞踏会で壁際にいたシンシアは急な吐き気に見舞われた。イクシリル夫妻に訳を話すと『懐妊』したのだと嬉しそうに話す。






 懐妊?この私が?





 たった一回の行為だけで・・・アベルさまの子どもがこの中に。






 イクシリル夫妻は孫が出来たと大はしゃぎ。

 レーベン当主はよくやった!とガッツポーズまで。


 ただ、父親である筈のアベルからは何の言葉もなかった。




 お腹が出始めた頃に大きな大きな書庫でゆったりと読書しようとシンシアは本を読んで居るとヒソヒソ話が聞こえる。どうやら書庫の換気で開けられていた窓の下で休憩なのか若い侍女たちが話に盛り上がって話題の中心はアベル。


「ねぇねぇ聞いた?別邸に仕える侍女に聞いたんだけど、レナさま懐妊したんだってぇ〜」


「うそっ、ホント?」


「ホントよホント。なんでも向こうの侍女が言うにはレナさまの下腹部が最近膨れていてまるで妊娠してるみたいになって、それにご主人さまが労わる様に障害物を避けながらエスコートしてるんだって」



 レナさまも懐妊したんだ・・・


 無意識に自身の腹を撫で、この子には沢山の愛情を注ごうと決意する。生まれてきてもきっと、父親からの愛情は貰えないだろうからならば母親の愛情や祖父母に周囲の愛情を貰って健やかに育ってほしい。




「女の子だったりミーシャ、男の子だったらロベルト・・ね。ふふっ・・・早く貴方の顔が見たいわ」


 ふわりっ、と優しい春の風がシンシアを包む。


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