表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天眼のソードダンサー  作者: 大中英夫
第2章 堕ちた神童編
17/52

第4話 女の戦い

 ズカズカと歩み寄ってくる。目の下にクマが色濃く浮き出ていた。そのくせ爛々と輝いている。


 アロンソはおもわず腰を浮かせて身を引いた。サンチャの手を取って背後に庇うことも忘れない。


「っ!」


 なにが気に食わないのか、ドルシネアがその麗貌をゆがめる。


「授業をサボってカワイイ後輩と逢引?」

「い、いやそれは……感心できる行動じゃないことは理解して――」

「まあ、それは後回しでいいか……聞いたよ? ロニー、パーティの設立を教官たちに申請しているらしいね?」


 ドルシネアの言及した内容こそ、アロンソの企む詭弁に近い解決策だった。いずこかのパーティに加入できないのであれば、自分で作ればいい。


 しかし、これにも障壁が立ちはだかっている。

 二、三年は言わずもがな。一年生もすでに既存のパーティ単位での戦いに慣れている。欠員が出るということはせっかく磨いた連携を練り直さねばならないということ。

 メンバーの多くが殉職でもしないかぎり、あぶれた人材など見つからない。


 かくいう事情から、教官たちは「最低ふたりはメンバーを用意すること」を条件にアロンソの申請を許可した。どうせ無理だとタカをくくっているのだろう。


「……俺なんかのことをよく把握してるな?」

「あたしはあなたのことなら何でも知ってるし、あなたはあたしのよく知るあなたのままでいなくちゃダメなの」


 ドルシネアが有無を言わさぬ口調でアロンソに詰め寄る。


 アロンソは気圧されるまま後退し、ついには壁際まで押しやられた。


 逃がさぬとばかり、ドルシネアが壁に勢いよく手をつく。


「ロニー、今から申請を撤回しに行こう?」

「ネーア、俺は――」

「大丈夫、付き添ってあげるから……あたしの言ってること分かるよね?」

「――まったくイミ分かんねーし!」


 蚊帳の外に置かれていたサンチャが気炎を上げた。


「パーティの設立申請とか初耳だし! なんならウチも反対・・だけど! いきなり出しゃばってきてナニサマのつもりだっての!」


 ドルシネアを視線で切りつける。


 応じてドルシネアがわずらわしげにサンチャを睥睨する。


「……サンチャさん、だっけ? 悪いけど、すこし黙っててくれない? いま幼馴染同士の大事な相談を――」

「はあ? ナニが相談だよ! 一方的に言うコト聞かせよーとしてただけジャン! ウチ・・のパイセン、イジメるとか許さねーから!」

「……『ウチ』の? あなたにあたし・・・のロニーのなにが分かるっていうの?」

「いろいろ知ってるっつーの! カタブツなことも! お節介なことも! 幼馴染だからなんだよ! いま現在、ウチのほうがパイセンと仲いいんで!」

「ふふ、あはは……笑えない冗談だね?」


 アロンソは交錯する視線の間に飛び散る火花を幻視する。むろん【天眼】とは無関係に。


 ドルシネアがため息ひとつ肩をすくめる。


「これじゃあラチがあかない。生徒同士で揉め、かつ収拾がつかない……こんなときは校則に従おうよ。決闘を申し込ませてもらうね?」

「え!? いやあの――」

「ジョートーじゃん! 受けて立つし!」

「俺はべつに――」

「あたしが勝ったらロニーはパーティの設立を諦める。あなたたちが勝てば、あたしはもう口出ししない……そういう条件でいいかな?」

「勝手に巻きこ――」

「あとで吠え面かいても知んねーから!」

「あまり大口を叩かないほうがいいよ? 負けた時みじめになるから」

「――聞けよ、俺の話!」


 こちらの思惑を無視して勝手に話が進んでいく。それに歯止めをかけるべく、アロンソは大声を張り上げた。サンチャを隅に引っ張っていく。


「いやいやいやいや、お前いったい何を言い出した? バカなのか? ああそうだ、バカだったな!」

「でもさ、パイセン! 決闘でもしないとアイツを黙らせらんなくね?」

「……それは、そうだが」


 アロンソは言いよどんで口ごもった。ドルシネアが頑固なのは幼い頃から知っている。認めてもらうには通過儀礼が必要だ。今回・・こそ逃げてはならない。


「分かった。俺は腹をくくる……けど、お前・・はいいのか? 話の流れ的に加勢することになっていたが……」

「ダイジョブダイジョブ! 人間・・相手なら戦えるし!」

「……そうか、分かった。すまないが、俺に力を貸してくれ」

「アイツ、だいじなトコでジャマしやがって……ブッ飛ばしてやっから!」

「話はまとまった?」


 アロンソはドルシネアの呼びかけに応じて振り返る。


「ああ、決闘を受けよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ