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朝食はお箸と共に


―――翌朝。チュンチュン。小鳥の囀りが聞こえない防音甘美な寝室。俺は隣ですやすやと寝入る少女の顔を見やる。


昨晩俺はっ!婚約者と、寝てしまったああぁあぁぁぁ―――っ!!!―――いや、その。これはだな。“束縛”と言う溺愛を示したまでだ!

※あくまでも、イザナの個人的な所見です


しかし昨晩はガチガチに固まっていたのになぁ。こうもすやすやと眠っているとは。まぁ、もう少し寝かせておこう。俺はするりとベッドを抜け出す。


扉を開ければ待ち構えていたようにナユタの姿があった。


「おはようございます、イザナさま。本日は随分とお早いですね」


「あぁ。朝食を作るからな」


「―――また、ですか」


「俺の決定に何か異論があるのか?」


「いえ、ありません」


「ふむ、従順でよろしい」


―――朝ご飯作っていい?

―――いいよ


―――と言う、取り留めのない会話なのにこうやって尊大にふるまう。それがイザナさま。それが俺。―――長年の習慣がこうも常に自然と出てきてしまうとは。うぅ~、もっと普通にふるまいたいのだが。


厨房に行けば、既にお仕着せのシャルルが待っていた。弟たちはまだ起きていないだろうに、殊勝なことだ。


「ふん、主人の俺よりも早く準備をすますとはなかなかやるではないかっ!」


「はい、ご主人さま」

シャルルは不満げに俺を睨みながらも答えた。


「生意気なその視線も悪くはないぞ?」

「―――っ」

キッと俺を睨み続けるシャルル。


「まぁよい。貴様はハスキが目覚めたら、その世話をしておけ」

元々ハスキのために見繕った侍女である。ハスキはまだ起きなさそうなのでそれまで弟たちの面倒でも見ておけ!―――と言う意味合いである。


「―――っ」

シャルルは俺に一礼すると、その場を立ち去った。相変わらずガン睨みだったがな。


さて、今日の朝食は何にしようか?


この世界、―――と言うかこの国の主食は種類が様々だ。もちろん米はあるし、小麦もある。パンも食べられれば、麺類も食べられる。前世が日本人であった俺としては、多種多様な食文化を謳歌できるこの国の食糧事情はめちゃくちゃ最高である。


ご飯に納豆、それから卵焼きにウィンナー。サラダにお味噌汁っと。ふっ、今日は和朝食にしてやった。ウィンナーは違う気がするが。まぁよい。


俺渾身の和朝食。昨晩と同じくみなを同じ席につけていただく。


「ほら、あ~んしろ」

そして俺は今日もまた、ハスキ溺愛計画のためあ~んをするのだっ!!


因みにタコさんウィンナーである。ここは日本流!昨日よりは慣れたのか、ハスキも俺に素直にあ~んされている。


ずずず。


お味噌汁をごく普通に啜っているナユタとは対照的に、シャルルたちは固まっていた。


ん?何だ?


「あ、あのっ」

そしてシャルルが恐る恐る口を開いた。


「―――スプーンとフォークを、お借りしてもよろしいでしょうか」


え?もしかして。お箸持てなかったのぉっ!?な、何とっ!何と言うことだ!


米がありお箸がある以上、この国の全ての人間がお箸を扱える存在だと思っていたが。そうではなかったらしい。


「わ、たし、も」

か細い声でハスキが述べる。え?ハスキもまさかのお箸持てない系だったのか!?


「ふん。まぁ、今日のところは許してやろう。だがしかし、今日はせいぜい箸の持ち方を特訓することだ。明日は、ないからな?」

いや、明日はないとかそんなことはないんだけども。ついつい口を出てしまった。いつものイザナさまが自然に顕現してしまった。―――そして。


にやり。


やっぱり笑顔がこうなる!!


「畏まりました、ご主人さま」

シャルルは礼をしながらも、そそくさとカトラリーを取りに行く。


そして、スプーンとフォークを4人分持ってきたシャルルはそれぞれに配っていく。


納豆の食べ方を知らなかったのか、ナユタの食べ方を凝視、弟たちと一緒に食べ始めた。


―――そして。


「ほら、ハスキ。次は納豆ご飯だ。あ~ん、しろ」


「は、はぃ」

ちょっと難しい納豆のあ~んだが、ここが溺愛の腕の見せ所!ふふふ、存分に味わうがいい!この素晴らしき和朝食を!!あ~っはっはっはっは!





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