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晩餐の時


さて、俺も王子である以上、公務と言うものがある。それを颯爽と片付けると、早速寝室に()()()()()おいた婚約者のハスキの元へと向かった。


「夕餉についてだ。食事は同伴だ。いいな?」


俺の部屋には仲良さげに女の子同士で談笑していたらしい。やはり自分で侍女を見繕ってきて正解だったな。


俺が買ってきたハスの髪飾りを髪につけ、そしてナユタが用意した清楚な桃色のワンピースに身を包んだハスキ。


はっきり言って、―――めっちゃかわいいんですけど、この子!!


「あと、シャルル。お前も、お前の弟たちを連れて来い。30分後だ」

そう言うと呆気にとられたように彼女たちは俺を見ていた。

ふふ。ここら辺の対策はばっちりだ!これぞ、団・欒・策・戦!


古今東西の物語に於いて、食事イベントは重要だ。婚約者がいるならば婚約者とお食事。使用人と仲良くなりたければ、使用人と食卓を囲むのだ!同じ釜の飯を食う仲=最強の絆で結ばれる!

※あくまでも個人の見解です。


一方、俺の宮の使用人は従者のナユタだけ。まぁ、シャルルたちが加わったがな。だから日々の食事は宮廷料理人たちが俺の宮に毎回運んできていたのだが。今日からは必要ないと鞭を片手に脅っ、―――いや違った。丁重にお断りしてきた。


普段、自身の宮から出ない俺の姿を見て何故か城の連中がこぞって平伏していた。いやー、そのぅ。悪逆王子だからこそなんだけど。みな、俺の不興を買わないことに必死らしい。あははは(泣)


だからこそ、俺の宮に余計な輩はり寄ってこないと言うこと。それはつまり存分にハスキを溺愛しまくる土壌が既にできているということだ。―――うん、喜ぼう。何だか涙が出そうだけども。


さて、溺愛のためには、まずは愛()料理!いや、俺は男だけどな!!


俺の宮にも専属料理人が配備されることを考え、厨房が備え付けられている。材料はナユタに揃えさせたので後は作るだけだ。


「―――っその、何をしていらっしゃるのですか」

ナユタがフライパンを片手に持った俺をいぶかし気に見てくる。


「夕飯を作るんだ」


「―――何を、作るのですか?」

「何って、チャーハン」

簡単だし、すぐできるからな。


―――30分後


俺は本場の中華料理人のようにフライパンを振りまくった。

いや本場だったら中華鍋やろーっ!と言うツッコミはさておいておいて、


早速ダイニングにチャーハンを盛った皿を並べていく。


そして、いつものように無表情で突っ立っているナユタはおいておいて、その隣でおどおどしながら立っているハスキ、シャルルたち姉弟に声を掛ける。


「さて、座れ。貴様ら。まさかこの俺のメシが食えないとは言わせんぞ?」

にやりっ


あ、またほくそ笑んでっ!?いや、これは“俺の作ったチャーハンどやぁっ!!”と言う笑みなので別にほくそ笑んでも~、いいよなっ!?


「ほら、座れ」

俺が先に席に着く。


「ハスキ、俺の隣に来い」

ハスキを呼べば、恐る恐る俺の隣にやって来て腰掛ける。


「ナユタはそこ、シャルルたちはあっち」

と、指示を出せば、何だかみんな驚いたように俺を見る。


「イザナさま。何故俺たちまで一緒に座るのですか」

と、ナユタ。ふっふ~んっ!そう言う疑問については想定済みだ!俺を誰だと思っている?前世は一般人だったが今は悪逆王子のイザナさまであるぞ!


「この俺のメシが、食えないとは言わせんぞ?」


にやりっ


―――あれ?完全にイザナさまのノリで言ったんだけども、何か想像していた答えと違う気が。しかしながら、恐る恐るナユタたちも席に着いたのでまぁ良しとしよう!では、早速~っ!


「ほらハスキ、食え。俺のメシが食えぬとは言わせぬぞ」

俺はチャーハンをレンゲによそい、ハスキの口元に近づけた。

ハスキはびっくりしたように目を見開く。


「あ~ん、しろ。貴様、この俺にレンゲを持たせたまま恥をかかせる気か」


「っぃ、え」


「では、口を開け。大人しくあ~んされるがよいっ!」


「―――っ」

ハスキは意を決したように、チャーハンを口に含んだ。


「ふんっ、やればできるではないか」


「う、ぇっ」

え、ちょっ、泣いてるの!?まさかそんなにうまかったか!?実家ではどんなメシを食わされてたんだ。ちょっと気恥しかったが、ここはハスキを溺愛するためにどんどんあ~んしてやらねばな!


「ほら、もっと食え。食えぬとは言わさんぞ」

あ~っはっはっはっは!


「ひっ、ぅ。は、ぃ」

涙を流すほどに俺のチャーハンに感動しながらも素直に食べるハスキ。照れて恥じらっているところもかわいい。やっぱかわいいんですけど、俺の婚約者~!!


そうこうしているうちにナユタが無言で食べ始めたため、シャルルたちもチャーハンに口を付ける。


「おいちぃ♡」

ツキくんのかわいらしい感想が聴こえてついついにやけてしまうっ!


にたりっ


「こらツキ、静かに!」

良いではないか、叱るなシャルルよ。俺はもっとツキくんのかわいい感想を聞きたい!!―――そしてハスキ。ハスキからも、聞きたいな?


「ふっ、どうだ?ハスキ。今までに食べたことのない至高の味わいであろう?」

何せチャーハンがメニューに出たことないからな。今までに。前世の記憶を取り戻してから、異様に食べたくなったのだ。よし。これからは、前世の記憶にある食べ物もたくさん食べられるよい口実ができた!さすがはイザナさま~!さすがは俺!そしてこの世界の通常メニューにないのならば、自分で作ってしまえばよいのだから!!


ふ、ふふふっ


上機嫌にほくそ笑んでいれば、ハスキのか細い声が聴こえてくる。


「は、ぃ」


「そうかそうか。ではもっと食うがいいっ!!」

あぁ、泣くほどおいしいなんて。次は何を作ってあげようか?今からでも明日の朝食が楽しみでたまんない。ふっはははははっ!!!



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