悪逆王子のぶらり城下散策
※後半拷問タイム入りますのでご注意ください※
※本文中にも直前に記載あり※
早速婚約者を気絶させると言う離れ業を披露してしまった俺。いや、離れ業ってかダメだろ。最初から失敗してしまったああぁぁぁっっ!カリスマ王子だったはずなのに、んんんん何故ぇっ!?
んまっ、まさかっ!カリスマ王子だった俺の中に前世の俺の知識や、考えを盛り込んだから!?そもそものカリスマ性能が落ちたのか!?
しかしながらどうしようか、この状況。
―――取り敢えず運ぶか。まぁ、俺は魔物の血を引いていることから魔法に関しては大得意。
魔法を使って身体強化の上、彼女をお姫さま抱っこするのはいとも簡単なことなのである。
ひょいっと。しかし、身体強化しているとはいえ何だかもともと軽い気がする。やはり実家で満足なエサを与えられていないからか。
てか、エサじゃないっ!ご飯!あぁ、回想にまでそんなワードが出てきてしまうとは。
ひとまず運ぶか。しかしながら俺の側つきと言えば従者のナユタしかいないのだ。
女性の側付きが、―――必要か。
しかしながら、既に王宮にいる女官を取り込むにしても、俺は悪逆王子。無事彼女を溺愛するためには、信用のおける俺に絶対服従な女官が必要なわけだ。
小説の登場人物の中に誰かいなかったか?
あぁ、そうだ!
ひとり良さそうなのがいたなぁ!上手く弱みが握れ、―――いやいやいや弱み握ってどうする!あくまでも、あくまでも恩を売るのだ!俺!
そして、彼女をお姫さま抱っこして部屋から出てきた俺に、いつも能面のナユタが珍しく目を見開いていた。
「イザナさま?」
「今日からこのおん、―――いやハスキは我が宮で生活させる。彼女の実家からの迎えは返せ」
「御意」
驚きつつも、ナユタは俺の命に従う。そして俺はひとり自身の寝室へと彼女を連れ込みベッドの上へと横たえた。これから城下へ繰り出すとは言え、その間も溺愛に力を入れんといかんな。
まずは何をするか。
やっぱり、女の子だし?茶器とお菓子をテーブルに用意してっと。
“食わねば命はないと思え”
うん、メッセージカードを用意して???
―――あれ、これ、このメッセージ。いや“命はない”は言いすぎか?
“食え。さもなくばオシオキをしてやる”
―――てか、オシオキって何する気だ!俺!イザナよ!!
“俺が戻るまでに食っておけ”
うん、これならば命やオシオキの心配はしなくてすむはずだな!―――ぃよしっ!
あとは~
着替えでも用意しておくか?しかし女物の服などないぞ?
この世界の服と言えば。俺の“イザナ”も“ハスキ”も和風テイストだ。しかしながら洋風テイストの名前もある。だから完全に和服と言うわけでもなく、俺は立襟のシャツ・ズボンに黒いマント姿だ。
彼女の場合は桃色のかわいらしいワンピース。―――それでも貴族の令嬢からすれば最低限のものなのだろう。宝飾品は簡素な首飾りのみ。
まぁ、城下でちょっとしたアクセサリーを買ってきてやるのも、―――いいかもな。
婚約者と言えばっ!基本はプレゼントだと思う!
服はナユタに手配させて俺は城下に出るついでにアクセサリーをこしらえるか。
彼女が逃げ出さぬよう窓には魔法で結界を、扉にも魔法でカギをかけておけば完璧だ。トイレやなんかは全て部屋の中に揃っているから心配ない。早速彼女の迎えを追い返してきたナユタが俺の側に参上する。
「ナユタ!今から俺は城下に出て新たに俺の下僕になる幸運なメスを連れてくる!だから部屋を一室用意しておけ!あと女物の、―――ハスキの服の手配をして、おけ」
やば。後半、ちょっと照れて自信なさげになってしまった!てか、前半っ!!前半がぁっ!!これでいいのか!?てか、下僕って!!
「畏まりました」
ナユタは相変わらず、その~。俺に従順だけども。
城下に繰り出すとなると王子なので護衛が必要となるだろう。しかしながら最強である俺には特に必要ない。まぁナユタくらいなら側においてやってもいいが、今は別の仕事を言いつけているからな。
俺はハスキに嵌められ、弟に不意打ちを喰らわない限りは、決してやられることのない最強の悪逆王子なのであるっ!!
だからこそハスキをいかに溺愛し、溺愛ルートに持ってくか。まずは、ここである!
さて、どこかにいいアクセサリーでも売っていないかな。あぁ、これかわいいかもしれない。桃色のハスの髪飾りだ。
「これを2つ包め」
俺がそれを店員に差し出せば。
「い、イケメン!」
相手は頬を紅潮させ、俺を見上げてくる。
「さっさと包め。貴様、俺の炎の消し炭になりたいか」
ぶぉっと、指の先に炎を発現させる。
「ひいいぃぃっっ!!!殺さないでくださぁいっ!!」
え、何かめっちゃビビられた?あぁ仏頂面で言ったから、―――か。こう言うのは笑顔が大事なんだよな。
「なら、早く包め。下郎がぁっ」
にやぁっ
あれ、何かいつもの癖でほくそ笑んでしまったぁ!!しかし笑みを作れと言われても、長年にわたりほくそ笑み続けた俺の表情筋がこうしか動かないぃっ!!今だけは、許せよ店員。
「どうぞ!お納めくださいませっ!!」
「うむ、ご苦労。褒めて遣わす」
何故か跪いている店員から商品を受け取れば、すかさずマジックボックスに収納する。
さて、それではお目当ての場所に行くかーと、数歩歩いたその時だった。
「けけけっ!こんなところに半魔がいるぞっ!」
明らかに低俗な声と共に俺のしっぽが何者かによって握られていた。
マントで大体隠れるとはいえ、たまにぴょこっと出てしまうのが割とコンプレックスだったりするのだが。
原作小説の通り悪逆非道な俺には数々の“気にくわないポイント”があるのだ。そのひとつ、原作にはなかったポイントが転生した俺にはあった。
―――それは?
俺はゆっくりと後ろを振り向く。そこには案の定、ケラケラと笑うゴロツキ風の男がいた。
「俺たち人間のテリトリーを半魔が堂々と歩くなんざぁいい度胸だなぁ~。え‶ぇ‶っ!?」
さぁみなのもの!心の準備はいいか!
ここからが原作小説ではおなじみ悪逆王子のオシオキ拷問タイムだっ!!
俺は扱い慣れた鞭を箸を持つかの如く自然に、そして優雅に構えた。
―――ここから拷問タイムに入ります―――
ビシッ
バシッ
ビリリリリリ・・・ッッ
「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
ゴロツキ男の悲惨な絶叫が轟く。
「下民の分際でこの俺のしっぽに触れるとはいい度胸だなぁっ!クズがぁっ!!」
魔法でゴロツキの体の自由で奪った俺は衣服をもビリビリに引き裂くよう、魔法で電撃を流した鞭で男を容赦なく鞭打っていく。
男の貧相な服は無残に引き裂かれ、鞭打たれた背中には無数の傷が広がった。
そして極めつけは~
「なぁ、何か言い残すことはあるかぁ?」
鞭で男の首をぐぎぎっと締め上げる。
「だっ、だずげ」
「あぁんっ!?もっと大きな声でしゃべって見ろよ。俺のしっぽに無断で触れたクズがぁっ!!」
鞭で首を絞め上げながら、傷だらけの男の背中を容赦なく蹴り飛ばす・・・
はーっはっはっはっは!!俺のしっぽに容赦なく触れた輩はすべからくオシオキしてやらんとなぁ!
にやりっ
『衛兵さん!大変だ!半魔が暴れてる!』
『きゃああぁぁぁぁ!!半魔だわっ!』
周囲の悲鳴が聞こえ、俺はふと我に返った。
や、やってしまったぁ――――――っっ!!!条件反射とは言えやってしまったぁ――――――っっ!!!ノリノリで鞭打ちの上、首を絞め上げてしまったっ!!
やばい。さすがに衛兵に捕まるのは、まずいよな?
しょうがない。俺は男の首から鞭を外し、魔法で拘束していた男の体を自由にしてやり解放してやった。―――そして。
「ふっ、命拾いしたな」
そうほくそ笑みながら気絶した男を睨みつけ、颯爽とその場を後にする。
に、逃げるが勝ちだああぁぁぁぁっっっ!!