王と王弟たち
―――王城・王の執務室(※元王太子の執務室)
「さて、みなよく集まってくれた」
開口一番に告げたのは新王に即位したスオウである。
元第1王子にして王太子であった彼はその当時からぶっちゃけ王代行と言う位置づけだった。
赤い髪は先王を髣髴とさせるものの、その所々に走る金色のメッシュは彼の亡き母親からの遺伝である。―――と言っても、ほぼ表に出なかった先代暗君と同じ髪の色を思い浮かべる者は少ないだろうし、例え暗君のことを知っていようともスオウは王太子時代から人気があり国民からも臣下たちからも慕われていたから些細なことである。そしていつもは書類に向いている青い瞳は凛として俺たち兄弟を見ていた。
「新王即位により一応は政情が安定したと言っても、先王時代に甘い汁を啜ってきた者たちの中には謀反を企て私たち王弟の誰かを擁立しようというものもあらわれかねない」
そう告げたのは、深い藍色の癖のある髪を真ん中分けにした青年で、瞳は群青色をしている。彼は第3王子・レオン。王子でありながら騎士団を率いる凄腕の魔法騎士で現在は近衛騎士団長としてスオウを守っている。
因みに元居た近衛騎士隊は俺の部下たちの厳正な内偵捜査により腐敗した者は斬り捨て投獄し、まともな奴だけをそのままレオンに預けた。レオンが最終的に問題ないと判断した場合のみ採用し、それ以外は放逐となった。
無論文句を言うものも現れたが、ほとんどは突然近衛騎士団長に名前が挙がったレオンを快く思わない者たちだった。王子(今は王弟)であるレオンを快く思わない、―――つまりは王族に翻意があるともとれる。そのため彼らは王都を追い出され地方の騎士団に所属しようとも騎士としてはどこの家も雇わないように手は回してある。
今後も彼らがこの国に居続けるのなら、騎士をやめて別の道を探すか傭兵になるかのどちらかだ。もしくは国をでるか。―――ま、俺にとってはどうでもいいことだが。
「私から無理強いはしないつもりだ」
スオウが何を言いたいのかはわかる。なるべく王位争いの起こらない選択肢を選ばねばならないと言うことだ。
「俺はそもそも王位に興味はない。継承権は放棄しよう」
そう、俺は一番に告げる。
「いいのか。お前は野心家だと思っていたが」
―――鬼面のことを見抜いたくせにコイツはまだ言うかっ!!食えない王太子め。こんなことなら膝折るんじゃなかった。いや、王になるのはコイツしかいないから俺も部下たちも何としてもコイツを擁立し続けるがな。
「俺は愛妻家と愛弟家だ。誤解するな」
俺は婚約者と弟を溺愛しつくすと決めた身。妥協する気はないっ!
「え?兄上は違うの?」
さらっと言ってきたレオン。
「そうだよね、お兄ちゃんは?」
更にはスオウまでっ!
「知るかっ!」
もう、めんどくさいっ!何でこういう時だけアニキ面しやがるコイツら・・・
「あ、あのっ」
そこでずっと黙っていたスザナが声を上げる。
「俺は、俺は愛兄家です」
そう言って俺の腕に手を当てて上目遣いで見上げてくるスザナ。
ぎゃふっ
なにこれ、なにこのデレはぁっ!!反則だろっ!!
「え、なぁに?いつの間にそんなに懐かせたの?私も執務室に監禁しておけば良かったか」
※スオウは残業だらけだったためほぼ執務室暮らし
※宮はあるもののほぼ帰らない
「それなら私も騎士団に入れて連れまわすべきだったか」
※レオンは年がら年中騎士団と行動を共にしており、遠征に出ていることが多かった
※もちろん今は王都勤務
「うるさいっ!スザナはお前らにはやらんっ!」
手を伸ばそうとする兄ふたりを払いのけ、そして俺はスザナをぎゅむっと抱きしめる。
「えぇ~、ちょっとくらいいいじゃないか」
「お前がそんなにブラコンだとは思わなかった」
「ふんっ、いいか。スザナは俺の許可なしには宮から出さないからな!」
本当に出られないようになっているからな!
「ねぇねぇ聞いた?」
「あぁ」
かわいそうなものを見るような目でみるなぁ~~~っっ!!!
盛大に斜め上から目線で威嚇していれば、その様子を見ていた立会人が口を開く。
「話が進まないので仕切らせていただきますが。王弟・イザナ殿下は継承権放棄でよろしいですね」
「あぁ。だが、とっとと結婚しろ。独身」
とスオウをねめつける。
「私も王位継承権は放棄しよう。でも時代のことがあるから兄上は早く結婚するべきだと思う」
とレオンも続ける。
「―――お前たちねぇ」
俺たちを剣呑な眼差しで見やるスオウだが、それはそれで的を射ているのでスオウも深くはツッコまない。
「では、スザナ殿下はいかがですか」
ゴクリ。もしスザナが放棄しなければスザナが王位を継ぐ→俺破滅?せっかく継承権放棄したのにフラグが立ってしまう。―――うぅ、強引に奪い取ってもいいが強引に出過ぎると溺愛ルートが順調に進んでいる中、まさかの溺愛反抗ルートに入りかねないからな。
「俺は」
どっちだ。どっちを選択する?
「俺も継承権を放棄します。俺は一生お兄さまの犬でありたいので」
そうか!よかったぁ~、コイツも放棄。フラグがひとつ消えたか。しかしなんだ。レオンとスオウからの視線が冷たいのだが。
「今度宮訪問をしてもいいかな?王命で」
「はぁ?」
「そうそう、聞いたけれど元第2王子が自分の宮でやらかしていたんだって?心配だからこれからは各宮の定期監査を入れるべきだと思う」
と、レオンまで。
「それはは俺のっ」
管轄だと言おうとすれば。
「適正に監査が行われているかを王自ら監査することも重要だ。宰相、早速日程を組んでくれ。至急で」
「わかりました」
お前も素直に受け取るな!宰相がっ!名相とか言ってやったの取り消すからなっ!?
「あと、スザナもまた王弟だ。だからこそ専用の宮を用意することもできるが」
と、スオウ。まぁ先王時代はいろいろあって用意できなかったからな。第2王子派とか第2王子の母の圧力とかシナ家とかいろいろあって。だが、現在その全ての問題が解決しているため、王であるスオウの自由にできるのだ。
「俺はっ、その、お兄さまと一緒がいいですっ!」
ぱあぁっと顔を輝かせるスザナ。うむ、よく言った。頭を撫でてやればさらにしっぽを振るように俺に懐いてくる。溺愛の賜物だな。
「(ねぇ、ちょっとあれって)」
「(まさかイケないこととかやってないよね?)」
おい、そこのふたり!聞こえてっからなっ!
「では、王弟殿下方は全て継承権放棄の上スオウ陛下は即結婚、これでよろしいですね」
『異議なーし』
俺たち王弟たちがそう言う中、スオウは「即結婚~?」と困惑顔を浮かべていた。




