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episode 08 ミーニャの痣

 宿の手続きは国が持つとベイルグラントが話してくれたおかげであたし達はする事がなく、料亭で夜ご飯を食べた後は与えられた大部屋でくつろいでいた。

 さすがにニールセンだけは小部屋を一つ用意して貰い、今の今まではあたし達と一緒に暖炉を囲い団欒(だんらん)をしていた訳だが、そろそろ湯浴びをするので部屋に戻ってもらった。


「さて、そろそろ行こうか」


「え?

 一人ずつじゃないのですか?」


「見てないの?

 広いのよ、ここのお風呂は」


「いや、でも一人ずつのほうが……」


「みんな一緒でも構わないわよね、テティー?」


「ん?

 別に私は構わないが?」


「だそうよ、ミーニャ」


「え?

 あ、いや、でも……。

 フ、フレイさんは……」


「私は元々人間に興味があったのでどちらでも構いませんよ」


「へへへへ。

 さぁ、どうする、ミーニャ」


「ん、なぁぁ、分かりましたっ!

 一緒に行きますぅ。

 でもその代わり、変なことは無しですよお嬢様」


「へへ。

 この人数でそんなことしないわよ。

 それこそ変態だわ。

 ここはみんなで楽しくってね。

 さ、行くわよ」


「あぁぁぁ、どうしていつもこんなことに……」


「嘆いてないでほら、脱いだ脱いだ。

 それとも脱がせて欲しいわけ?」


「けぇっ!

 結構ですぅ!

 自分で脱ぎますから」


「ほら、先に行ってるわよー」


 湯気の立ち込める室内に入るが流石に少し寒さを感じずにはいられなかった。

 やはり外が寒いと裸になれば寒いものなのだと感心しつつお湯を被るとここは天国かと思えるほど身に染み、次から次へとお湯に手を伸ばしている。


「はぁぁぁ~!!

 あったかぁい。

 ほら、みんなもこっち来なよ」


 続々と湯殿に入って来たのを感じると天国はここだと言わんばかりにお湯浴びを勧めると、皆が皆同じような反応をした。


「気持ちいいわよねぇ」


「ああ、これほどとは思わなかったね」


「早く体洗ってお湯に浸かりましょうよ」


「これが、お湯浴び。

 凄く気持ち良いですね」


「え、何?

 エルフはお湯を浴びないの?」


「特に寒いことはないので温い水しか浴びたことはないですよ。

 日のある内に浴びると寒くはないので」


「へぇ~、意外と暖かいとこで暮らしてるのね。

 その様子だと外でするのが普通みたいだし」


「そうですよ。

 草木に囲まれていますし、日の暖かさがあるので」


「誰か覗きに来ないもんなの?」


「その様な男性はエルフには居ませんし、他の亜人でも特に他人の裸には興味がありませんから」


「そうなんだっ!

 だから、胸も小ぶりなのかしら。

 あたしと同じくらいか、あたしより無いんじゃ……」


「胸、ですか?

 私よりも大きな方はいますが、エルフは基本的には小さな種族だと思いますよ」


人羊(ワーシープ)のミューは大きかったもんなぁ~。

 うん、あれはデカかった。

 ただなぁ、種族とか言われるとどうも色気にかけるというか、なんというか」


「人間は……様々なようですね」


「そうよ、人間はそれぞれかなり違うわね。

 あたしのは成長途中だし、テティーは大人の女性なら一般的なんじゃないかしら。

 ミーニャは……手をどかしなさいよ」


「え、イヤですよ。

 そんなジロジロと……。

 みんなに見せる物じゃないですから」


「良いじゃないのよ、女性同士どうってことないわよ。

 あ、ちなみに人間の男性は他人の裸に興味はあるからね。

 ほら、さっさと手をどける」


「もう、お嬢様はいつもそうです。

 いつになったら直るんですか」


「アテナさんは女性の裸にも興味がある、と」


「フレイは変なとこで納得するんじゃないわよっ。

 ミーニャは特別なのよ!

 ほら、もうぉ!

 えいっ!!!」


「きゃっ!

 お、お嬢様~」


「あ、また成長したわね。

 いつもあたしの先を行こうとして」


「勝手に大きくなるんですぅ~。

 もう見ないで下さいぃ」


「あら?

 その胸元の(あざ)

 形変わったわね。

 前は湾曲してたのに、今は丸を半分に切ったような」


「え?

 そうなんですか?

 気づきませんでした」


「どうしたんだい?」


「いえね、この痣は気づいた時からあったらしいんだけど、少し前とは形が変わったのよ。

 ぶつけたりしてないのよね?」


「あ、はい。

 何もしてませんよ。

 お嬢様、そろそろ手を降ろしても?」


「あ、ごめん。

 何かの病気ってわけでも無さそうなのにくっきりと形が変わるって」


「なんだか妙な痣だねぇ。

 普通の痣ならいびつな形に変化はするもんだけど。

 このままだと丸くなりそうな気配はするね」


「ミーニャに関しては……。

 そうね、湾曲してた時は魔言語(マジックワード)なんて口走ることはなかったけど、ここ最近よね、急に口調が変わって話始めるの」


「私は言った記憶がないんですが……」


「それが言ってんのよね。

 煌神刃(ディバイン・ブレイド)を解き放った時もそうだったし。

 それと関係があるのかしら」


「魔言語なんてしっかりと覚えてなければ言えるものでもないのに、記憶がないとは妙ではあるよ」


「まぁ、おかげで色々と助かってるから気にしちゃいないんだけどさ。

 さ、体も冷えて来ちゃうからさっさと湯船に浸かりましょ」


 と、体を洗い始めるがミーニャの異変は気になるところではある。

 それは身近にいて感じるミーニャであってミーニャでない様な違和感。

 魔法を使うときだけ感じる違和感は最近になって増しているのは事実ではあるが、今は目の前にある天国へ浸かることを最優先にしようと頭を振り払った。



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