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episode 44 フレイの行く末

 洞窟の手前から大きな声で自身の安否を知らせながら走ると、テティーがこちらに気づいてくれた。


「どうした!?

 大丈夫なのか?」


「ええ、とりあえずは何とかね。

 一事はどうなるかと思ったけど、テティー達も何も無くて良かったわ」


「一体どうしたんだい?」


「話すのも手間だから結果だけ言うと、会えたわ彼と」


「それで?

 フレイはどうすると?」


「彼に会えたは会えたけど、どうやらフレイとはもう中々会えない感じだったわ。

 だからフレイを託すって」


「そうか。

 みんな、アテナが戻ったよ!」


 洞窟の奥へ叫ぶと急いで出て来るや否やミーニャが飛びついて来た。


「お嬢様お嬢様ー!

 心配しました、心配だったんですぅっ」


「ヨシヨシ。

 大丈夫だったわよ、もう大丈夫。

 でね、フレイ」


 ミーニャが首に巻き付いたままだが埒が明かないとフレイに向き直った。


「フレイの言う通り彼はお尋ね者なんかじゃなく、どちらかというと城に属している高位な人っぽかったわ」


「そうですか。

 やはり彼は……。

 それで彼は何と?」


「あたし達と一緒に居てくれって。

 でも必ず迎えに来るって言ってたわ」


「そう……そうですか。

 では、私は、私の気持ちは棄てずに持っていて良いのですね」


「ええ!

 彼にとっても特別な存在みたいよ。

 だって、エルフを研究対象に見てる城の住人から隠されてるんだもの。

 今すぐは叶わなくても待っていれば必ず。

 だから、とりあえずはこの国から出て生き抜くことね」


「はい!

 ありがとうございます。

 人間とエルフ、どんな顛末になろうともこの気持ちに嘘はないですから」


「よく言ったわ!

 なら、今すぐこの国から出るわよ。

 こんなところで見つかったら愛や恋どころじゃないんだから」


 と、早速王都から離れるように足を運ぶとテティーが隣に歩き出した。


「こっちに来て何か宛があるのかい?」


「ん~、無いって訳じゃないんだけどさ、どうしようか迷ってる」


「というと?」


「このままフレイがあたし達と旅をして安全なのかなって」


「まぁ、そりゃあ危険は伴うかも知れないが」


「それもあるけど、エルフって存在が少なからず誰かの耳に入って広まらないとも限らないかなって」


「確かにな。

 アリシアを追うんだから色んな国には寄るだろうからね」


「それにエマ。

 エルフの存在を知る人物の一人。

 それがアリシアお姉様と合流してるとなれば、どこでどう話すかも見当が付かないわ」


「そしたら洞窟暮らしに逆戻りって?」


「それはさせたくないし、それじゃあたし達も足止めになっちゃう。

 それでね、フレイが良ければなんだけど」


「私が?

 何でしょう?」


「あたし達と離れて人間界で暮らさないかなって」


「え?

 そう、ですね。

 寂しくはありますが、彼のことを待てるのであればそれでも」


「そう、ね。

 ならそうしましょ!」


「って言ってもどうするのさ、暮らすって……」


「一つだけうってつけの場所があるのよ。

 普通に暮らせるけど、外には伝わりづらい場所が。

 小さな集落だけど、安全は確実に確保されてる場所」


「あっ!!

 もしかしてっ」


「ミーニャなら心当たりあるわね」


「あそこならフレイさんでも安心だと思います」


「そんな場所があるのかい?」


「ここから結構遠いから長旅にはなるし、あたし達が向かう方とは逆だけど行く価値はあるわ。

 亜人達が暮らす村に、ね」


「亜人達が!?」


「そうよ、人間に、国に護られている亜人達が居るのよ。

 今は人羊(ワーシープ)人狼(ワーウルフ)人猫(ワーキャット)

 それと暗殺者(アサシン)、出身国だと忍者って言うらしい変わり者と……誰だっけ」


「盗賊ですよ、お嬢様」


「あーーー!

 そんなのも居たわ」


「それを国が匿って村を造ってるって?」


「そうなのよ、凄いことになってるでしょ?

 でも、これだけいて噂にもなってないんだから国の加護ってのも馬鹿にならないのよね」


「確かにそこなら」


「どう、フレイ?

 そこなら普通に暮らすことも出来るし、彼を待つのも容易だと思うんだけど」


「果たして受け入れられるのか心配ですが、可能であれば私は良いかと」


「受け入れられるわよ。

 なんつってもその村、造ったのあたしみたいなもんだし」


「はぁ!?」


「成り行きでね、提案は。

 実際は女王がやってくれたんだけど、人羊だけのつもりが色々と増えちゃって。

 そこの村長があたしの友人の変人だから信頼出来るしさ」


「話だけ聞くと混沌(カオス)なんだが……大丈夫なんだな?」


「へーきへーき。

 亜人の一人や二人増えたって護り抜ける技量は持ってるわ。

 フレイだって、あっちじゃ一緒だったんでしょ?」


「厳密に言うと彼らとは一緒ではありません。

 私達は亜人界の一部に開く妖精界の住人ですから。

 けれど交流はあるので全くの別ではないので一緒に暮らす分には問題がないかと」


「界って人間界、亜人界、魔界、冥界、天界の五つじゃないんだ!?

 そこに驚きだわ。

 細かく在るものなのね……。

 ま、それはともかくとして、なら大丈夫そうね。

 じゃあ戻ることになるけど行き先はマグノリア王国よ!!」


 かつて世話になった王国への逆戻りにはなるがあたしはそれなりに楽しみである。

 かつての友、仲間が今はどうしているのか、あの国はどうなっているのか気になることで胸は一杯になっていた。


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