表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/51

eepisode 42 好きだから

 ……ナ…………テナ………………。

 誰かが呼んでる?

 あたしを呼んでる?

 どこなの?

 ねぇ、どこなの?

 ………………。


「ねぇ!!」


「アテナ!」


「あっ!?

 フレイ?

 くっぅ」


 暗闇から逃れられたあたしの目の前にはフレイが膝を付き支えていた。

 意識を失ったようには感じないほどに鮮明な記憶と頭と胸を打ち付ける痛み。


「無事で良かった」


「あたし……。

 フレイは帰ったんじゃ……。

 み、みんなは……」


「皆さん無事です。

 アテナが一番深いところまで行ってしまっていたので」


 言われて見回すと、皆その場に座り込み頭を抱えていた。


「深い、ところ?」


「深層意識です、と言っても分かりませんよね。

 どうやら(ドラゴン)の咆哮というのは精神的共鳴を引き起こすみたいで、咆哮による恐怖、威圧、悲しみ、苦しみを増大させる力を持っているようです」


「うぅ、そ、それでエマはあんなことを……」


「それを知っていたのでしょう。

 竜と戦うのを人が恐れるのはそこから来ているのだと」


「でも、フレイ。

 何故帰らなかったの……?」


「それは……」


 徐々に痛みと気持ちが和らいでくる。


「扉は開いたんでしょ?

 あたし達には構うなって」


「あんな姿を見せられては行くに行けません。

 それに……私は……。

 あの方を忘れられないのです」


 あの方?

 匿っていた男子のことか。


「忘れられないって、そりゃあ匿ってくれてた恩人だから忘れる必要はないだろうけど」


「いえ、その……私は……あの方を好きになってしまったんです!」


「はぁ!?

 いっつぅぅ」


 大声のせいで頭の痛みに少し響く結果になってしまった。


「すいません、言い出せずに。

 私も忘れて、このまま帰った方が良いかと思っていたのですが」


「あぁ、えぇっと。

 帰るつもりではあったのね」


「はい。

 それがあの方の為にもなるのかと。

 ただ、目の前でアテナ達が苦しみ、私を隠し続けてくれたあの方、人間が私の為にしてくれているのに黙って帰って良いのかと不安になって」


「いや、良いのよ、素直になって。

 好きになって会えなくなるのが怖かったんでしょ?

 大丈夫、それならそれで仕方ないから」


「え?

 怒らないのですか?」


「何を怒ることがあるのよ。

 好きになったなら気持ちを開いて最後までやり遂げなきゃ」


「それって……?」


「そいつを探し出して、そいつの気持ちも聞く!

 好きな気持ちは隠すようなことじゃないのよ」


「でも、私はエルフ――」


「エルフだろうが何だろうが気持ちが通えば関係ないでしょっ。

 それは人間側だって思うんだろうからお互い様よ」


「アテナ……私、私は――」


「泣かなくてイイの。

 好きな気持ちは悲しみじゃないんだから、喜びなさいな。

 ともすれば、どうしよっか」


「人間よ。

 もう良いのか?」


 低く体を震わす声が頭上から響くと、竜を見上げて言い放った。


「もう大丈夫、貸し借りは無しで良いわ。

 あたし達は別の道を模索するから」


「そうか。

 では世話になったな、人間の娘よ」


「じゃあね、元気な子を育てるのよー」


 吹雪を纏いながら竜はのっそのっそと奥へと姿を消して行った。


「アテナ、大丈夫かい?」


「お嬢様!?」


「みんなも大丈夫そうで良かったわ。

 みんな今の話は聞いて無かったわよね?

 詳しくは後で説明するけど、次にあたし達が行くのはハルベール王国よ!」


「ハルベールに逆戻りってか?」


「ニールセン、乙女心を学ぶと良いわっ」


 あたしの言葉に困惑するニールセンと、今の状況に困惑しているミーニャとテティー。

 山を下り船に乗り込むと、あたしとフレイは山頂で起きた一連の行動を隈無く説明することとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ