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episode 32 入城

 ティルとの出会いから一日が過ぎ、作戦の決行となる夜を迎えた。

 その間あたし達はアルバに接触し、夜半過ぎに待っていてくれたら向かうと伝え、この街で戦争が起こるかも知れないと地下の皆へ言伝てを頼んでおいた。


「さて、こっちの準備は良いわよ」


「つっても武器も頼りないんじゃ話にならないんだがなぁ。

 ま、そいつは現地調達とするか。

 んで、こっちの準備も整ったわけだが」


「街の皆は避難させないの?」


「そんなことしたら即バレちまうからな。

 オレらは火も使わなきゃ砲台も魔法もないんだ、逃げるだけなら被害は無いと踏んでるさ」


「そこまで考えてるならまぁ。

 それで、あたし達はレイラ王女の元へ行けば良いのよね?」


「あぁ、こいつらと共に城から出してくれ。

 その間にオレが王の元へ行く。

 と、その前に武器庫へ寄るがな」


「分かったわ。

 で、あたし達を縛るのね?」


「ご明察。

 そうでもしなきゃ侵入者を捕まえたフリが出来ないからな。

 ま、力を入れたら抜ける程に軽く縛るだけさ。

 そしたら順番に腕を出してくれ」


 麻縄を数本用意していたティルに腕を差し出すと、本当に軽く今にも抜け落ちそうなくらいに縛っていく。


「ん?

 この人達も?」


「ああ、こいつらだって城には入れないからな。

 かと言って、置いて行くには勿体ないもんでな」


「信頼してるのね。

 よろしくね、お姉さん方」


「こちらこそね、お嬢ちゃん。

 私はフレア、こっちがリリ、そっちがファーサよ」


 紹介された女性三人は見た目こそ三者三様ではあるが、醸し出す妖艶な雰囲気は似すぎている程似ている。


「城に着いたら私達に付いておいで。

 詳しいからね」


「ん?

 城には入れないんでしょ?」


「城の催し物で何度も呼ばれていたからね、城内は把握しているよ」


「流石は密偵ってとこなのね」


 女性達に感心していると酒場の二階から煙が上がったと大きな声でティルを呼んでいた。


「合図があったようだな。

 では、オレ達も行こうか。

 予測では城内に入った辺りでアルゴ砦の守備隊が到着する手筈となっている。

 下手に勘繰られないように頼むぞ」


 女性達はフードを目深に被り出来る限り顔を出さないようにすると、ティルに麻縄を引っ張られ順番に従って行く。

 全員が縄で繋がっていることもあり、結びが取れないように付かず離れずで付いていくことになった。


「これはこれはテイルウイング卿。

 その者達は如何なされましたか」


「あぁん、こいつらは外からの侵入者だ。

 わざわざオレが踏ん縛ってきてやったのさ」


 城門の警備兵に足留めされるが、どうやら疑いの目はないように思う。

 それは、あたし達の怪しさよりもティルへの信頼が勝っていたようだった。


「ご足労で何よりです。

 只今城門を開けますので、暫しお待ちを」


「あぁ、早いとこ頼むよ。

 さっさと引き払って飲みに行きたいんだからな」


 騎士候とは思えない風貌が言葉の信用度を高めているとしか思えなかった。


「よし。

 行くぞお前ら、しっかり付いてこい」


 縄を引っ張る素振りを見せるも、まるで力が入っていないのはあたし達だけにしか分からないと感じる上手い捌き方であった。


「さて、ここからが勝負だが。

 城内に入ったら直ぐに行動してくれよな」


 門から城までの間に兵士とは何度もすれ違ったことから、相当な数の兵が常駐しているのが見て取れた。

 その途切れた瞬間を狙いティルはあたし達に声をかけてくれる。


「王室と王女の自室は離れている。

 直ぐに別行動になるから心してくれよ」


「了解よ。

 ティルは王室に行ってどうするの?」


「出来れば斬りたくはないがね。

 王女の父(ゆえ)に話し合いで王位を譲って欲しいところさ」


「なるほどね。

 悲しませることなく内戦を収めたいってね」


 兵達をやり過ごしたあたし達は無事に城内へと辿り着くと、人目の付かないところで一気に縄をほどいた。


「良し。

 お前ら後は頼んだぞ。

 先ずは武器庫、その後は王女と合流。

 あとは卵だったな。

 その頃にはこっちも片が付いてるはずだ」


「オッケー!

 ティルも気をつけて」


「はんっ!

 誰の心配をしてやがる。

 オレは騎士候様なんだからな。

 じゃぁ頼んだぞ」


「こっちよ、お嬢ちゃん方」


 リリに促されティルに頷くと、女性達に習い廊下を走り抜けることになった。



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