表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/51

episode 31 創られた道

 手を離すや否や、ティルはにんまりと笑顔を見せると背もたれに寄りかかると腕組みをし得意気に口を開いた。


「先ずはだな、この店に居るのは全員が第二王女派だから安心して話してくれていい」


「それはそれは。

 根回しが行き届いているってことね。

 それよりもさ、どうしてあたし達なの?

 あたかも待ってたって感じだけど」


「ははん、そのことか。

 そいつはな、とあるヤツから聞いた話でな、近々第二王女暗殺計画が発動されるってことで、それを救うのは外から来たヤツの手助けなんだと。

 それによってこの国は二つに分かれるってな」


「何それ。

 それを信じて待ってたってこと?」


「信じられるだけのことを見せて来たヤツだったからな」


「で?

 その人は今どこに?」


「そいつは知らないね。

 勝手に国を出てってたもんだからな。

 何でもこれから世界が大きく動くとか何とか言って、やるべきことがあるんだとか」


「ハッキリしない答えばっかりね。

 でも、信じられることを見せて来たわけでしょ?」


「あぁ、不思議とそいつの言った通りのことが起こって来たからな。

 そいつは予言だとか言ってたがね。

 ま、おかげでこうしてお前さん方と出会えたんだからな」


「予言?

 予言者……」


 どこかで聞いたと思いを廻らせると、そんなことを聞いた事を思い出した。


「どうした?」


「いや、思い出したのよ。

 前に旅でね、世界には予言者って人がいるんだって。

 その人は世界に目を配らせてるから間違いないと思うの」


「なるほどね、世界には知らないヤツも多いってことだな。

 ともすると、予言者が言ってたってことは国を二つに分けるってことも当たっちまうってことか」


「そうならないように第二王女を救って国を安寧に導くんでしょ、ティルのやるべきことは」


 それには少し顔を曇らせた。


「そう在るべきなんだろうがな、オレは政治のことはさっぱりでな。

 レイラ王女が笑顔でいてくれたらそれでいいんだわ」


 ティルは第二王女であるレイラが本当に好きなんだなと感心していると、テティーがまるで感心の無いように話しかけた。


経緯(いきさつ)は分かったが、これからどうするんだ?

 さっきの女性達といい」


「ああ、あいつらはこの街の第二王女派やアルゴ砦――この街から一番近い砦やらに伝令に行かせたのさ。

 アルゴ砦は第二王女派が占拠してるもんでな、言うなればオレらの拠点といったところさ」


「でも、そんな砦一つで帝国に反旗を翻すってのも無理がないかい?」


「そこは腕の見せ所だろ?

 既に根回し済みでな、砦も一つじゃぁないし、街だって幾つかは占領下にある。

 問題があるとすりゃ、ここの戦力ってだけだね」


「ま、そうよね。

 いくら内部からって言っても一番強固なのは違いないんだから」


 テティーの疑問に自慢気にティルは話したが、結局は帝都の守備隊の多さが鍵だろう。

 周りを固め戦力の分断が出来ているとしても、どれだけティルが戦力を持っているのか見えていなかった。


「だからさ、最優先事項として第二王女レイラを手中に収める。

 後に一番厄介だと思われる竜の厩舎の制圧。

 この二つが出来れば何とかなると思うだがな」


「その竜の厩舎制圧の折りにあたし達が卵を持ち去れば良いってことか」


「まぁそういうこったな。

 だから、それまではオレらの手助けってことさ。

 それで交換条件が成立するだろ?」


「まぁねぇ。

 けど、そんな上手くいくかしら。

 ティル達の戦力も分からないから、どこまで現実的なのか見えてこないのよね。

 こっちとしては危ない橋を何度も渡りたくはないのよね。

 手伝うだけにしてもね」


「まぁまぁ。

 最悪の事態も想定してるから安心しなって。

 城は落とせずともレイラと卵は手に入れるからな」


「……分かったわ。

 だったら、その手に乗ってあげるわ。

 あんたの恋も実らせたいし、卵も欲しいし。

 詳しく話を聞こうかしら?」


「いいとも。

 と、その前にだがな、もし、あんたらが手伝わないと断っても内乱――いや、戦争が起こっているとオレは考えていたのさ」


「ん?

 それはどうして?」


「先ずはあの男の言葉。

 あれは直接的な手助けってことじゃないかもってことよ。

 オレの話を断っても目的を果たそうとするだろ?

 それによってもたらされた混乱は何処へ向かうと思うよ?」


「それはまぁ……第二王女派か他国かってことになるわね」


「そうだろうな。

 そうなるとだ、オレらは知らぬ存ぜぬを通すことになる。

 ともすると、暗殺計画よりも他国介入を真っ先にするだろう。

 それでレイラは救われるって辻褄になるって算段なわけさ」


「どう転ぼうが、あたし達が目的を達しようとするだけで第二王女の暗殺は回避出来ると……。

 なんか癪に障るわね」


「何がだい、アテナ」


 あたしの苦虫を噛み潰したよう表情にテティーが不思議に思ったようだった。


「だって、それってさ、(てのひら)の上で転がされてるようじゃない。

 あたしはあたしの決めた道を行くってのに、それすらも創られた道って感じがして納得出来ないっての」


「まあ、イイじゃねぇのさ。

 あんたらが卵を取りに来たって事実は覆せない訳だしな、それが上手く行くか行かないかは誰にも分かっちゃいないからな。

 もしかしたら、外から来たヤツってのもあんたらとは限ってはないしよ。

 あんたらの後に勇者様が現れるってこともあるんだからな、そんなに深く考えるこたぁねぇってな」


「はんっ!

 要するにモノは取り様ってことね。

 いいわ、納得してあげるわ。

 それで?

 詳しい作戦ってのはどうなってるの?

 それによって、こっちの動きも決まってくるんだから」


「だな。

 とりあえずは遣いに出した女達を待つ。

 その返答次第では今夜からにもなるんだが……」


 ティルは羊皮紙を取り出しそこに帝都の地図を描くと、守備隊の位置や人数、あたし達のするべきことを事細かに説明し出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ