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episode 26 潜入作戦

 あたしの気持ちとは裏腹に淡々とヴェルサムが話を進め出す。


「帝都に入るなら道は下水路を通るしかない。

 北の下水路は城、城付近に繋がっている為、行くならば南だ。

 裏路地に出られるからそこから目的を果たすが良い。

 だが、下水路には魔者が住み着いている。

 そこはどうにか出来るか?」


「魔者?

 どうにかするしかないでしょうね。

 けど、今まではどうしてたのよ」


「オレ達が街に忍び込む時は二、三人で行くからな。

 相手にせず逃げるだけだ」


「魔者ってこっちには来ないの?」


「北も南も下水路の広くなっている所は鉄柵で囲われている。

 鍵付きだから施錠さえしていれば出てくることは出来ないさ」


「鍵を持っているのね」


「いや、鍵は無いがアルバの解錠技(ピッキング)で開け閉めは容易に出来る」


「ふ~ん……ってことは……」


「勿論アルバも同行させる」


「はぁ!?

 ヴェルサムはどうすんのよ」


「オレはそういったことが得意じゃないのでな、ここで待つ。

 こんな所にいるとな、役割分担ってのが重要なのだよ。

 アルバは手先が器用で素早く行動が出来る。

 潜入にはうってつけなのさ」


「あんた見た目通りなのね」


「それって誉め言葉かい?

 だったら素直に喜ぶよ」


 アルバはケラケラと笑っているが、一瞬足りとも誉めたつもりはない。


「それで?

 百歩譲ってこいつが道案内するとして、どこまで付いてくるのかしら?」


「出口で待たせるさ。

 邪魔にならないようにな。

 いいな、アルバ」


「へぇへぇ。

 仕方ないか、待っとくよ」


「これで帝都への行き来は良いだろう。

 あとは服だが……」


「服?

 服がどうかしたの?」


 自分の服をまじまじと見てみるも、どこもおかしな点は無いように思ったが。


「旅人が街に居ることはないのでな、その服でも目立つのさ。

 そうだな……外衣(マント)は置いて行け。

 それと、防具は外して武器は小さな物にしたら良いか」


「短剣程度ってことか」


「そうだな、隠し持てるくらいでなければならない。

 それで目立つことはないだろう」


「服自体は大丈夫なの?」


「なんとかなるだろうと考えている。

 住人、又は他の街からの商人と思われるだろうとな。

 そこでだ、二日後に物資の搬入出に商人が街に来る予定になっている。

 それに紛れて行くのが良いだろう」


「もしかして、いつもその感じで街へ?」


「そうだ。

 それでしかオレ達が生きていく物を確保出来ないからな。

 その都度次に来るのを聞いているのさ。

 なので、決行は二日後の昼。

 帰りは商人が帰る前、夜か遅くとも次の日の昼だ」


「分かったわ。

 それまでになんとか見つけて持ち帰るわ」


「よろしく頼む。

 それまでは適当に過ごしてくれ。

 案内ならオレがいつでもする」


「色々と手間をかけるけど。

 あなた達のことも少し分かって良かったわ。

 余裕があれば何か調達してきてあげるわね」


「持ちつ持たれつということだな。

 では、アルバとバインは戻ってくれて良い。

 後はオレが面倒をみよう」


「んじゃ、二日後だね」


「私はいつものように……」


 二人をゆっくりと立ち上がりバインは素っ気なくそのまま部屋を出て行ったが、アルバはニヤニヤとしながら出て行く素振りを見せると肩越しに視線を向けた。


「またな、姉ちゃんっ」


「あっ!

 こら、アルバ!!

 いい加減名前くらい覚えろっ」


 去り際に放った一言に気持ちが蒸し返えされたが、あたしの言葉に耳を貸そうとせず、そこから素早く部屋を出て行った。


「ねぇ!

 あれ、わざとよね!

 絶対からかってるわよね!?」


「大人になりなっての。

 同じ目線に立つからどっちもどっちになるんだからさ」


「なら、テティーだったらどうするのさ」


「笑顔で返すかな。

 むきになったって、なぁ?」


 テティーアンは後ろに座る皆に相槌を求めると一斉に首を縦に振ったが、ニールセンだけは三度も大きく相槌をしている。


「はいはい、あたしが子供染みてたのね。

 よーく分かったわ、特にニールセン!

 この首を縦に何度も振っちゃってさっ!」


 両の頬を引っ張りながら上下に揺らしたのは何故だか悔しかったからだった。


「ほひふへひほほほ」


 言葉にならないことを口走るニールセンとの間にミーニャが止めに入ってくると、後ろで笑い声が聞こえた。


「あはははは。

 いや、これは失礼した。

 大人同士がじゃれ合うなど久方ぶりに見たのでね」


「ヴェルサムは大人と認めてくれるのねっ!」


 この場で唯一の味方を見つけたあたしは嬉しくなり、これまでの鬱憤も全て吹き飛んだ気がした。

 それからは、ここでの暮らしを教えてもらったり子供達と遊んでみたりと、これまでの旅には中々無かったことを教えてもらうこととなった。


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