episode 23 アルザラート帝国
王都ウィーネスに辿り着いたあたし達は衛兵や酒場で尋ね箱の行方を探した。
話によると、厳重な馬車が王都を出て隣国の方へと向かったと聞き、一方では城の中へと運び込まれたとも聞いた。
そして、アイツの言っていた仔竜騎士団の噂。
これらの話を纏め順序を模索した結果、卵は山から船へと渡り城内に入ると数日後には隣国であるアルザラート帝国へ運ばれたようだった。
そして、目の前には帝都アルザラの門が待ち構えていたのだが。
「何で入れてくれないのよ!」
「これは命令だ。
物資搬入以外の者は入れることは出来ない」
「そうじゃなく!
どうしてって聞いてるの!」
「駄目なものは駄目だ。
ましてや旅の者は入れることは出来ない」
頑なに拒まれ、しまいには槍まで突き付けられているとなれば退くしかないとは思うが。
「納得行かないわ!
だったら、ウィンシェス王国から何か運ばれたか知らない?」
「さてな。
我が国のことを旅の者に話す口は持っていない」
「かぁー!
あったま来た!
良いわよ、せいぜいそうしているが良いわ!!
後で見ておきなさい!
行きましょ、みんな」
門前払いには腹が立つが、何より街にすら入れないとは。
隣国のウィンシェスとは戦争をしている訳でもないし、見た限りでは他国とも争いが起きているようでもなかった。
それなのに街に入れないには何か理由があるのだろう。
「くそっ。
どうしよっか、テティー」
「どうしようったって、ねぇ。
帝都正面の門を開けてくれないことにはな、壁も簡単に登れるほど低くはないし」
「けど確実に何かは運び込まれているのよ。
それも時期からして卵の可能性が高い!
目の前なんだけどなぁ」
「そうだねぇ、入り口は一つじゃないかも知れないしぐるりと一周してみるってのはどうだい?」
「帝都だからかなり広いけど……どこからか忍び込めるかも知れないから行ってみましょうか」
街を囲う壁づたいに一応歩いてみることにすると、他にも入り口はあるが正面とは同じく衛兵が槍を構えている。
それでも一周してみようと廻って行くと、途中で壁が二股に分かれている場所に気がついた。
「なにこれ?
街の外にも街ってこと?」
「城からはまだ離れているはずだから、それに関する何かとは違うだろうね。
だとすると、食糧やら溜め込む場所、か?」
「いえ、そのようではないみたいです。
中から沢山の声が聞こえますし」
「フレイは耳が良いわね。
だったら行ってみるのが手っ取り早いわ。
もしかしたら、もしかするかもだし」
張り出した壁に沿って歩いて行くと、確かに子供達が遊んでいるような声も聞こえて来る。
何とも不思議な思いで進んで行くと扉もなく、衛兵もいない門へと辿り着いた。
「入れる――わよね?」
「あぁ、誰も居ないんじゃ入っても問題なさそうだね」
街の外にくっついている街、それを街と言っても良いべきか、瓦礫は散乱しあちらこちらにゴミも散らばっている。
そして、建物も崩れかけているものから穴が空いているものまで、人が住んでる場所とは思えなかった。
「何だかスゴいとこね」
「あぁ、ここは帝都の何なのか疑問に残るよ」
「声が……しなくなりました」
「子供達が居たんじゃないの?
そういえば人影もないわね」
ウィンシェス王国ほどではないにしろ、ちらちら降る雪が街の間を吹き抜ける風に舞っている。
あちらこちらに視線を向けるも人影は見当たらず、とりあえずは進んで行くことにした。
「おかしいわね」
「あぁ。
おかしい……いや、居るね。
そこかしこから人の気配がするよ」
「感じる?
フレイはどう?」
「ええ、居ますね。
小さな物音は聞こえてきます」
「だったらどうして隠れてるのかしらね」
「外者だからかね」
「いや!
みんな背中合わせて!」
建物の間に入った瞬間、殺気を隠すどころか寧ろわざと出しているのかと思うほど隠そうとはしていなかった。
そして風がぴたっと止んだ瞬間、あちらこちから得物を持った人達がぞろぞろとあたし達を取り囲んだ。




