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episode 20 白竜

 しばらく船に揺られながら話を弾ませていると、船長からもうすぐ着くとの連絡があり甲板へ向かい、そこに見えたのは頂上付近が白く渦巻く気高い山であった。

 それはあたかも(ドラゴン)の息吹きで雲すら巻き込んでいるかのようであり、それこそ頂上付近に竜はいると思われる光景である。

 その様相に船長の計らいで一晩船で日が昇るのを待ち、更に着込める物を用意してれたおかげで早速山登りを始めることになった。


 それからは徐々に雪も多くなり、一歩踏み出すごとに(すね)まで埋まるほど深く積もった雪を掻き分けて進まなければならなくなった。

 大分歩いたのだろう、次第に風が吹くようになると雪も舞い、視界が悪くなっていく。

 大方の予想では外から見た白い渦に近くなっているのだろうと話し、更に気を引き締めて歩くこととなった。


「か、風が厄介ね。

 どうしようか……」


「私が何とかしますか?」


「フレイに頼りたいとこなんだけどさ、フレイだって疲れてるし、この後のことも考えるとと思ってね」


「私なら平気ですので。

 風の精霊(シルフ)にお願いしてみますね」


「ごめんね、ムリさせちゃうかもだけど」


 あたし達は少し足を止めフレイの術が完成するのを待つ。

 術は完成し、あたし達の周りの風は和らいだのだがフレイが顔をしかめ様子が少しおかしかった。


「風の精霊が暴走気味で……くっ。

 何とか制御しましたが、その反動が……」


「どういうこと!?

 暴走してるって」


「どうにも雪の精霊(ネージュス)が怒り狂ってるようで、それの影響みたいなのですが」


「竜の影響なのかしら。

 フレイが辛そうだから急ぎましょ」


 少し顔を歪めたりするフレイを少しでも楽にさせなければと、あたし達は埋もれる足を精一杯前に出し、少しでも早く竜を見つけようと急いだ。

 それからは周りの視界は真っ白になるくらい風と雪が飛び交い、フレイの術のおかげでどうにか進んでいるといった状況にまでなった。


「この辺りなんて頂上に近いんじゃないかしら?」


 今までより地面は平らになり吹雪の奥に白く盛り上がった影が見えていた。


「そうだと思うね。

 いや、そろそろそうであって欲しいと思っているよ」


「流石のテティーも疲れてきたってとこね」


「踊りをやってなけりゃここまでは来れなかったさ。

 海賊業は船の上が仕事なもんでね」


「そうよね、歩いて旅なんてしないものね。

 しかし、竜の影形が見えないけど……まさか留守ってことはないでしょ?」


「いえ、前方に何かいるようです」


「風の精霊が教えてくれた?」


「はい。

 獣のような匂いを運んで来ていますから」


「つってもこの視界じゃ何がいても分からないわ」


 と前方を注意深く見てみるも、あるのは白い岩肌のようなものばかりだった。

 が、それは突如として動き出した。


「え!?

 何、何!?」


 岩肌の奥に二つの光る球体。

 それは段々と上に登っていき、目の前の岩肌がこちらへ向かって来る。


「様子がおかしい!

 みんな下がるわよ!!」


 急ぎ後ろへ下がりながら動く物に注視していると、徐々に風は止み優しく雪が降るだけになっていく。

 そして、岩肌と思っていた物が姿を現すと真っ白で巨大な尻尾であった。


白竜(ホワイトドラゴン)!!」


 光る二つの球体は遥か頭上に浮かび上がりあたし達を睨み付けている。

 岩肌と思っていた物は竜が横たわっていた体であり、起き上がった今では城と同程度の大きさであった。


「人間よ。

 またしても何用だ」


「喋った!?」


「我が住み()にまたも来ようとは……今度はただでは帰さんぞ」


「ちょっと!!

 ちょっと待って!

 話が見えないし、色々と驚くことばっかりで――えっと、喋れるの!?」


「我は(いにしえ)より存在する者。

 人間の言葉くらいは理解出来よう」


「そ、そうなのね。

 それなら話が早いわ。

 ちょっと頼み事があって貴方に会いに来たのよ」


「一度ならず二度までも同じことをしようと言うのか人間よ。

 今度は我が首を狙うとなれば容赦はせん」


 言い終わるや否や前足を大きく振りかぶった竜に危険を感じ、皆に散るように腕を振るった。

 案の定、あたし達が元居た場所に巨大な爪が振り下ろされ、雪が根こそぎ剥ぎ取られていった。


「ミーニャは離れていて!!

 ニールセン、フレイ!

 何か対抗策を!」


 聞く耳を持たないようではあるが、話が噛み合っていない以上は戦うより誤解を解く方が危険ではないと悟った。


「あたし達は戦いに来たわけでも害を加える為に来たわけでもないのよ!!

 話を聞いて欲しいのよ!」


 声は届いているはずだが竜は尻尾を一度打ち付けると、あたし達の目の前をかすめるように大きく振るった。 

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