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episode 14 連戦

 氷小魔人(アイスチルドレン)の居た場所から少し離れ角を曲がったときだった。

 村を徘徊していたのだろう、槍を持った二体の白い魔者と目が合いお互い立ち止まる。


魔雪蜥蜴人(スノーリザードマン)か!」


「えっ!?

 蜥蜴人(リザードマン)って森の中にいるんじゃないの?」


 咄嗟にニールセンが魔者の種類を口にするが、こんなところにいるとは思ってもいない魔者だった。


「奴らは砂漠にも海にも適応する厄介な奴らなんだ。

 この雪の中に居たって不思議じゃあないさ」


「なんてヤツらなのさ!

 で、特徴とかないわけ?」


「そこまでは。

 来るぞ!」


「シャァァァー!!」


 奇声を挙げながら蜥蜴(とかげ)さながら左右に体を動かしながら向かって来る。


「何も分からずやるのね!

 テティー、気をつけて!!

 様子を見ながら牽制するわっ」


「あいよ、無理するんじゃないよっ!」


 槍の間合いで立ち止まると一突きあたしの前に穂先を繰り出すも、それを半身で避けると槍を斬り上げ一歩下がり距離を取る。


「槍ってのがやりづらいわね」


「なんだい、そのオヤジが言いそうなことは。

 はぁっ!」


「そんなつもりじゃないってのっ、と」


「実際、戦いづらくはあるがね。

 しかも槍しか使ってこないのが釈然としないとこだよ」


「魔者で魔法を使わないのもねっ!

 何か狙ってるわよ、きっと」


 槍での攻撃は突いてくるばかりの単調であり(かわ)すのはさほど苦労しないが、何があるのか分からず踏み込めないでいる。


「思い出した!」


「何よ、ニールセン!」


 と、魔雪蜥蜴人が後ろに跳ねて左右に跳びながら奇声を挙げ始めた。


「奴らは口から何か吐くぞ!!」


「何かって何よ!!」


 その時、魔雪蜥蜴人は口を開く。

 何だか分からないがとにかく横に飛び退けると、口から氷のようなものが放物線を描き地に落ちる。


「凍った!?」


「奴らは凍らせるのか!」


「何を感心してんのよっ!

 危なかったじゃないのさ」


「多分だが、あれは魔力(マナ)で出来た氷。

 触れると凍ってしまうぞ」


「わーってるわよ!

 見たら分かるっての!

 これじゃあ近づきようが無いってもんじゃない。

 どうする、どうする」


 考えを(めぐ)らしながら槍にも氷にも気をつける、こんな(せわ)しないことになるなんて思っても見なかった。


「ぜっーーーったいこれだけじゃないでしょ!

 まだあるでしょニールセン!?」


「ああ、近づいたら尻尾の攻撃はあるはずだ」


「早く言えーーー!

 近づかなくて良かったわっ、と。

 クソっ!!

 フレイ、何か無い!?」


「やってみます!!」


 ニールセンに頼りたいところではあるが、寿命を削る魔法は出来るだけ使わせたくないし、これから魔人とも戦うことも考えると今はその時ではないと感じている。


「まだなの、まだなの?

 早くしてフレイ、体力がもたなくなるわ」


 フレイの術が完成するまでは注意を()き付けながら避ける必要があった。

 近づいては槍で突き、即座に跳び退いて口から吐かれる氷を何度か躱した時だった。

 魔雪蜥蜴人の体が所々切り裂かれ緑の液体が垂れ始めた。


「今ねっ!」


 フレイの術だと察したあたしは近づき槍の一撃を弾き腕を斬り落とすと同時に体を蹴り後方へ跳んだ。


「ありがとう、フレイ!

 これで――って?

 ええええー!?」


 斬り落とした腕は即座に生え代わり透明の液体で覆われていた。


「奴らの体は蜥蜴そのものだ!

 腕だろうが足だろうが生え代わるぞ」


「だーかーらーーー!

 でも槍はあたしがっ!!」


 あたしが槍に近づこうとすると魔雪蜥蜴人も即座に広いに動き出したが、近かったあたしは飛びかかり槍を掴むと何度か転がった。


「シャァァァー!!」


「これでどうにかなるかしら?

 さあ、手の内を見せなさいな」


 とか言ってる間に顔を突きだし口を尖らせた。


「絶対マズイやつっ!!」


 後退しつつ斜めに転がると片膝を付いて様子を伺うと、口から吹雪と思われる雪の吐息と小さな氷が周囲に撒き散らされていた。


「これはどうせ凍らせて氷で砕くんでしょうに!」


「その通りだと思うぞ!」


 もう、後付けにしか聞こえないニールセンの解説に構ってはいられなかった。


「次が来る前に片を付ける!

 でやぁーっ!!」


 持っていた槍を魔雪蜥蜴人に向かい投げつける。

 予想よりも真っ直ぐに飛んだ槍は体の中心に突き刺さる前に掴まれてしまったが、そこまでは予測の範囲を越えていなかった。


「つぁーーー!!」


 投げた槍と同じく突進したあたしは、掴まれた槍をそのまま左手と体を使い押し込む。

 それを予想していなかったであろう魔雪蜥蜴人の体に槍は突き刺さり、動きが止まった刹那に右手に構えた剣を首元に一閃した。


「は、はぁはぁはぁ、もう、これで生え代わるってことないでしょ」


 跳ね飛ばされた首と離れ離れになった体はそのまま倒れこみ、緑の液体が止めどなく溢れ出している。

 動かないのを確認した上で槍を引き抜くとテティーの様子を伺うが、やはり膠着状態で付かず離れで牽制しあっている。


「テティー!!」


 槍を魔雪蜥蜴人に投げるとあたしも即座にその場を動き後ろに回り込む仕草を見せる。


「行くよ、アテナ!」


 槍を槍で弾いた魔雪蜥蜴人はテティーに尻尾を振り回したが、完全にあたしには無防備になってしまっている。

 剣を真横に振るうも体に当たる直前、槍を楯代わりに防がれてしまった。


「もらったよ!!」


 テティーの一声と同時に体を突き出した剣先があたしの胸元まで伸びていた。

 その場をすかさず離れると剣が抜かれ、魔雪蜥蜴人はあたしの居た場所に突っ伏した。

 お互いその場を離れず動かないことを確認していると、体は徐々に黒い塵になり全て風に運ばれていった。


「何とかなったわね」


「助かったよ、アテナ」


「あの魔者の傷はテティーがやったんでしょ?

 よく近づけたわね」


「入りづらかったけどね、槍と尻尾だけなら昔とった杵柄(きねづか)でどうにかね」


「踊り子ってこと?」


「そうだよ。

 相手がいる即興の踊りってのは動きを予想して次の踊りを考えなきゃならないからね」


「テティーの強みよね。

 実際、稽古でも(とら)えづらい動きだもの、そこから来てたのね」


「そういうことさ。

 私が海賊で上り詰めたのも踊りがあったからこそってね。

 さ、戻りましょ」


 切れそうな息を圧し殺し、ミーニャ達の元へ戻ったあたし達は警備であろう魔雪蜥蜴人と遊んでいるであろう氷小魔人を警戒しながら角を二つ曲がる。

 そして見えて来たのが魔人のいるであろう場所であったのだが。

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