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episode 12 進撃開始

 一日が終わり深々(しんしん)と降る雪の中を村へと向かう道中、隊長からはどういった魔者がいるのか教えてもらい作戦を丁寧に考えている間に近くまで辿り着いた。


「さて、フレイに質問なんだけどさ、火を使った精霊術って苦手なんでしょ?」


「はい、そうですね。

 そもそも火が無いと無理な話なのですが、火の精霊とは相性が悪いんです」


「だったら、この雪の中でも風の精霊術は使えるのかしら?」


「それは可能ですよ。

 ですが、今この中であれば雪の精霊の力が強いので風の力自体は若干弱いですね」


「風が吹いてれば強かったのね。

 でもまあ、それでも良いわ。

 んで、ニールセンはさ、火の魔法ってのは使えるわけ?」


「ああ、程度に()るが出来ないことはないな。

 主にそいつを使えってことか?」


「そ。

 どうやら寒さに強い代わりに熱さには弱いみたいだからね。

 ただ、魔法って命に関わるんでしょ?

 ムリはしないで欲しいからさ、フレイの精霊術で強化出来ないかなってさ」


「なるほどな」


「それでしたら属性が違えば可能です。

 (おこ)した火には精霊が宿っていますが、魔法の火には精霊が宿っていないので火の精霊術は無理です。

 しかし、それが木や風ならば強くすることは出来ますね」


「やっぱりそういうことなのね。

 色んな話を総合していくとそんな風に思ったのよね。

 エルフがいた時にもっと強大なことが出来たはずなのに、そういった話を聞かないってことは同じもの同士はムリなのかなってさ」


「そうですね。

 もし魔法の火に精霊が宿っているならば炎の精霊王(イフリート)ですら召還は簡単でしょうから。

 炎の精霊王を呼び出すには高い精霊力が備わった炎でなければ出来ませんから、普通の火では無理な話です。

 精霊王は自然の流れすら変える力を持っていますからね」


「……ってことはさ、砂漠って木や水の精霊王の力が弱まった土地って考えでいいの?」


「そうです。

 ですから、ここは雪の精霊王と水の精霊王の力が強い土地と考えれることになるわけです」


「単純に天候や地形だけの話じゃないのね」


「精霊界と人間界は密接していますから、精霊王の力が強い場所と弱い場所があるのです。

 (ただ)し、何らかの盟約や縛りがあって弱まっている土地もあるかとは思いますが、基本的にはその考えで間違ってはいませんよ」


 何だか最後の方はごちゃっとしていてあまり分からなかったが、雰囲気は伝わり納得が出来た。


「よし、ならニールセンが火の魔法を。

 フレイは風の精霊術を。

 どんなのを使うかは任せるけど、大丈夫かしら?」


「ああ、任せてくれていい。

 オレにはミーニャを守る使命もあるからな、後手には回らないさ」


「ええ、よろしいですよ。

 風の精霊術は主に補助だと思っていてください」


「決まったわね。

 あたしとテティーが先頭、ミーニャは真ん中で両脇に二人で行くわよ」


 あたし達の作戦は決まったとルイーダに頷くとルイーダは手を挙げ村へと振り下ろす。

 それが進軍の合図となり、一斉に隊が動き出した。

 隊の前方は槍を持った歩兵が構え、その後ろには剣を持った歩兵、騎馬隊と続き隊長以下と共にあたし達も踏み出した。


「見えたわね、あれが魔人の村。

 ん?

 あれは?」


「あれが氷小魔人(アイスチルドレン)だ。

 見た目に惑わされるなよ、いくら子供の外見であっても氷の(つぶて)や氷の槍を飛ばして来るからな」


「あれがそうなのね。

 ニールセン!?」


「ああ、分かっている。

 彼らのど真ん中にお見舞いしてやるさっ。

 ……万物の根源たる魔力(マナ)よ。

 熱き力を持ち我が手中にて形を成せ。

 その熱さを持ってして全てを溶かすものなり……」


「全軍突撃!!」


 ニールセンが魔言語(マジックワード)を唱え終えるや否やルイーダが隊へと命令を下すと、凄まじい雪煙りが立ち上ぼり一気に村の入り口付近まで距離を縮める。

 その時、彷徨(うろつ)いていた氷小魔人の群れの真ん中に火球が飛んでいき爆発を起こした。


「今よ!!

 あたし達は村へ入るわ!」


 兵士隊は突撃したが徐々に後ろに下がりつつ、村と魔人を引き離すことに成功しつつ決して無理な戦いをしようとはしていなかった。

 そのどさくさに紛れあたし達は群れを駆け抜けるが、後ろの氷小魔人はやはり振り返り指差したりし何かしようとしているのが分かった。


「フレイ!」


「心得ています。

 ……風の精霊、我が友シルフ。

 我が呼び掛けに応え、風の大気で我らを護りたまえ……」


 フレイの精霊術が完成しているのか全く分からぬまま剣を構えるが、魔人の魔法が早く完成したらしく小さな氷の粒が向かってくる。

 だがそれは、あたしとテティーに触れる前に軌道が反れるとあちらこちらに吹き飛んでいった。


「ミーニャ、ニールセン!

 そこの建物に!

 行くよ、テティー!!」


 あたしが近づくよりも先にテティーが剣を二度三度と振り魔人を蹴散らしていた。


「アテナ、大丈夫だ!

 行こう」


 テティーの言うように他の魔人は前を向いて、あたし達のことには気づいていないようだった。


「ふぅ、みんな大丈夫よね?

 ニールセン、フレイ、平気?」


「はぁ、はぁ。

 ああ、魔法の後に走るとな、息が上がるのさ」


「私は大丈夫です。

 この小屋を出ても少しの間は風の精霊が守ってくれますから、急いだほうがいいでしょう」


「そうなのね。

 なら、行くわよ。

 まだ他にもいるらしいから、ここからは更に気をつけて」


 ゆっくり扉から外へ出ると未だ喧騒が続いているのが分かる。

 それを背中に受け、あたし達は周囲を見回しながら村の中へと足を向けた。

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