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episode 11 仲睦まじく

 一悶着はあったものの無事に砦へと辿り着くと、あたしの名前一つで隊長が出てきてくれた。

 髭を蓄えた勇ましそうな長身の男はルイーダと名乗り手を差し伸べると、あたしもしっかりと握り返した。


「特に作戦っていう作戦はないんだけど大丈夫かしら?」


「それならそれで構いませんよ。

 我々とて王の命令で無理して戦うなと仰せ遣っているのでな」


「ま、そういう約束だからね。

 あなた達は自分達の露払いさえしててくれたら良いだけよ。

 後はあたし達が勝手に村に潜入するからさ、誰一人として死ななきゃ大丈夫」


「それはそのつもりだが、いつまで待てば良いのだ?」


「そう、ね。

 要するにあたし達に何かあった時よね?

 その時はこの子、ミーニャだけは絶対に逃がすから、ミーニャだけは助けてあげて。

 それとこの子、フレイもね」


「あー、オレはどうするんだ?」


「ニールセンは男なんだから最後まで残る!」


「やっぱりそうなるよなぁ」


 と苦笑いを浮かべ頭を掻くと唐突にミーニャへと向き直ると、両肩をがっちりと掴んで見つめている。


「オレが必ず守ってやるからな。

 君を死なせはしない。

 一緒に戻って来よう、ここに」


「え!?

 は、はい!

 ニールセンも無理はなさらないで」


「ああ、約束しよう。

 ミーニャの為ならば。

 二人で戻って来よう!」


「えーっと、あの、取り込み中申し訳ないんだけど、あたし達も一緒に帰ってくるつもりなんだよなぁ」


「おわぁ!!

 びっくりしたぁ!」


「びっくりしたのはこっちよ!

 何が二人で帰ってくるよ。

 ミーニャを守るのはスゴく嬉しいことで助かるけどさ、あたし達が居てミーニャも居るってこと忘れないで欲しいわね!」


「お、おお……」


「はっはっはっはっ!

 若いな、お前達は。

 こっちまで若返った気分になるわ」


 大口を開けて笑顔を浮かべる隊長のルイーダに比べ、あたしは若干の不機嫌さを隠せずにはいられなかった。


「はんっ!

 外から見てる分には楽で良いわよ。

 当事者からしたら存在を無視されたんだから笑ってらんないのっ。

 そんでもってぇ、ミーニャー?

 なーに二人で盛り上がってんのよー?

 いつからそういう関係になってんのぉ?

 えぇ?」


「えっ!

 ええっ!?

 そ、そういう関係!?

 そういう関係とかああいう関係とか無いですから!」


「ああいう関係ってなによ。

 分かったわよ、まだあれなのね。

 あたしには気にしないで仲良くなりなさいよ。

 誰かと仲良くなるのはとても良いことなんだから」


「は、はい!

 でも、男の方とはあまり話したことがないので」


「関係ない関係ない。

 自分を見失わずに気持ちさえ合えば仲良くなれるもんよ。

 だからさ、細かいことは気にせずいっぱい話しなさいね。

 それとー、ニールセン?

 ミーニャのこと傷つけでもしたらただじゃおかないからねっ!

 守るってんだから、その身をもってしてしっかりここに帰すのよ?

 ……分かったっ!!!」


「お、おぉ。

 我が身に代えようとな。

 それで、どうするんだ?

 全く作戦がないわけじゃないんだろ?」


 少し顔がひきつりながらも覚悟は見て取れたことであたしは満足し、その質問に答える形を取った。


「ええ。

 先ずは全員で村の近くまで行くわ。

 そこで火を興して暖を取りつつ魔者を誘き寄せる。

 こんなところに生息してる魔者なら暖かいものには弱いと踏んでね、火も武器にはなるでしょ。

 その後に混戦になったならそれに乗じて村に潜入するわ。

 あとは出来るだけ戦わずして親玉を見つけ出すってところね。

 村を占拠してる魔人なら、そいつさえどうにかしたら統制は取れなくなるでしょ?

 後はそれを一掃するかは国に任せるわ」


「では、我らはいつまで待つか。

 出発はいつにするかだな」


「そうね。

 夜になると寒さも増すし、魔者には都合が良さそうだからーー明日の正午、日の一番高い時に出発して日が落ちるまでにしましょ。

 あたし達も日が落ちたなら撤退も考えなきゃだから、その前に片をつける」


「了解した。

 では、我が部下にも伝えてこよう。

 アテナ殿の部屋は三番倉庫の隣に用意してあるから、明日までそこで休むと良い。

 明日はよろしくな。」


「ええ、お互い命は大事にね。

 ……それで、あたし達はそれまで特にすることもないから、暖まりながらのんびりとしましょ。

 魔人が相手だろうがみんなの命はあたしが繋ぎ止めてやるから安心して。

 そしたら、火の気のあるところに行きましょ」


「ミーニャ、少しぶらぶらとしないかい?」


「え?

 あっ……」


 少し困惑気味であたしを見るミーニャへあたしは笑顔で頷いてあげると、目を大きく開け口角が上を向いた。


「はいっ!

 お嬢様、行ってきますね」


「ええ、行ってらっしゃい」


 二人の背中は仲むずましそうでこっちまで胸の辺りが温かくなりそうだった。


「羨ましいんじゃないのかい?」


「何をバカなことを、テティー。

 あたしはそんな柄じゃないのっ。

 あたしが憧れるほど人間が出来てなきゃ興味なんて湧かないのよ。

 素晴らしい人達は沢山居るしテティーだって尊敬するほどだけど、惚れるってのとはちがうのよ」


「いや、私が言ってるのは異性と二人きりでって話でさ」


「人の体、外見だけを見る異性と?

 冗談!

 そんなのはお断りだし、人としてもどうかと思うわね。

 ……あー、中には違う人もいたけど、今はアリシアお姉様だけよ、心の中はさ」


「気になるね、そのアリシアって女性がさ。

 女性が女性に惹かれるってのは中々なもんだからね」


「そうね、テティーは知らないんだものね。

 なら、その話でもしようかしら。

 あたしがどうやって出会ってどんな女性だったのかってね。

 フレイも人間を知るにはちょうど良いかと思うわ」


 あたし達は砦を彷徨(うろつ)き与えられた部屋を探し出すと暖炉を囲み、アリシアのことを事細かく話して聞かせることにした。

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