祝!初戦闘
平明神です。
最高に面白い小説を皆様に読んでもらいたいと、いま出せる全力で作った作品です。どうか応援をお願いいたします。
面白い、続きが読みたいと思われた方は当ページの下部にある部分から評価をつけて頂ければ幸いです。
※ いわゆる「なろう系」の作りではありませんので、地の文を読むのが面倒な方、一人称の文しか読まないという方にはお勧めしません。
「へぇ。アンタも災難だったねぇ」
光太郎の身の上話を聞いたブランカは、さして興味無さそうに言った。
ブランカは背の高い女性で、赤毛のポニーテールに彫りの深い顔立ちをした、目つきがキツめの美女だ。
ジーンズのような厚手のロングパンツにヒールのないロングブーツを履いて、赤いタンクトップの上から鞣し革の防具を装着している。
ベルタの紹介によれば、ブランカの年齢は20歳。カテゴリは鑑定士。職業は商人。
だが光太郎は、ブランカの抜け目無さそうな雰囲気と身軽そうな印象から、RPGで言うところの盗賊を思い浮かべた。
その予想はあながち間違ってはおらず、彼女はその目利き力とトラップなどを見抜き解除する技能を活かし、各地のダンジョンで財宝を得ている、とカルメロは光太郎にこっそり教えた。
ブルーノ達は直近の町まで2日ほどかかると光太郎に告げた。もちろん徒歩でだ。
交通手段の発達した日本で生まれ育った光太郎は、それを聞いて魂消た。だが地球でもアフリカ大陸やアジア大陸の辺境などでは車などなく、徒歩で何十kmも移動する人達もいるのだし、300年前までは世界中での移動手段は馬などの動物くらいなものだった。ましてここは異世界。めったに出来ない経験をしていると思えば、逆に良い経験が出来るな───と、前向きに考えることが出来た。
「じゃあ出発するか」
カルメロの合図で、各々荷物を抱え、歩き出した。
パーティーの編成は、目端が利くブランカが先頭。次いで前衛で戦えるカルメロ。続いて弓使いのベルタ。最後尾に視野が広く、飛距離の長い魔法が使えるブルーノとなっている。ただし、今はカルメロとベルタに守られるように、光太郎が挟まれている。
ちなみに光太郎が立派な剣を持っているにも関わらず戦闘をしたことが無いと告げると、ブランカは「使えない娘だねぇ」と吐き捨てた。
「あの……ブランカさんって、私に対して凄く当たりが強いみたいなんですけど、私、何か気に入らないことしたんでしょうか?」
光太郎は小声で後ろを歩いているベルタに話しかけた。
「あー。あんまり気にしないほうがいいんだよ。キミが何かしたってわけじゃないし。どっちにしろ町につくまでだろうから、ちょっとの辛抱なんだよ」
具体的に何が気に入らないのかは教えてもらえなかったが、ブランカの態度に間違いはないようだ。光太郎は憂鬱になった。これから2日間、理由もわからないまま険悪な態度をとられるのか、と。
(まぁベルタの言うように、町までの辛抱か)
助けてくれることから差し引いても、まだ有り難みのほうが多い。あくまで自分は、このパーティーにとって異物なのだ。光太郎はそう割り切ることにした。
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道中、カルメロがやたらと光太郎に話しかけてきた。
気安い調子で、「モンスターが出ても俺が退治してやる」とか「町に行っても、その後のことは俺に任せておけ」などと、いかに自分が頼りになるかをアピールしている。
そして、それに張り合うかのようにブルーノも話しかけてきた。
彼の場合は、「足は疲れていませんか?」とか「不安なことが有れば、全て私に訊いて下さい」という、いかにも気遣いができるアピールを振りまいていた。
(これはあれかな。僕って、罪づくりな男……の娘だよね)
生前もよくナンパされていたので、男性に秋波を送られることには慣れていたし、特に驚くことではなかった。しかしカルメロたちが親しく話しかけてくるたび、ブランカから鋭い視線が飛んでくるのには光太郎も辟易した。女の嫉妬は怖いのだ。光太郎はそのことを理解していた。
とはいえ、あくまで光太郎のジェンダーはノーマル。性的嗜好は女性に向いているので、男に色目を使われて気持ち良いものではないし、女性から嫉妬の感情を向けられるのも出来れば勘弁してもらいたいものだ。だが、これもうまく事を運ぶために割り切るしかない、と思った。異世界はどうやら、割り切ることが大切らしい。
ところで、流石にこの段になると光太郎も気付き出した。
これは夢ではない、と。
(どうやら、僕って本当に異世界に来ちゃったんだな)
にわかには信じられないが、夢にしてはやけにリアルすぎる。
ここは一つ、現実として受け入れていくしかないと開き直った光太郎であった。
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しばらく歩くと、ブランカが警告した。
「前方に気配。たぶん、モンスターだね」
モンスターと聞いて光太郎の背に緊張が奔った。
カルメロたちパーティーメンバーも、瞬時に意識を戦闘モードに切り替え、各々の武器を構えた。
やがて遠目に現れたのは、茶色の体毛に覆われた一匹の大猿───いや、ゴリラだった。
光太郎の識るゴリラとは違い、腕が4本もある。
現れたモンスターを見て、一同は驚きの声を上げる。
「こ、これは……山の王者です!」
「まじかよ、ブルーノ。そいつぁ……ちっとヤベェな」
「な……なんでそんな凶悪なモンスターが、こんな森にいるの……? あ、でも、こっちに気付いてないっぽいんだよ」
「チッ。ツイてるんだかツイて無いんだか分かりゃしないねぇ。なんでか判りゃしないけど、一先ずやり過ごすしかないねぇ」
ベルタの言葉通り、山の王者という怪物はパーティーに気付いていない。
一行は茂みに身を潜め、気配を隠すことにした。
「あの……あれって、そんなにヤバいモンスターなんですか?」
「シッ。ちょっと黙りな。アタイたちの反応を見れば判るだろ」
人差し指を口に当てたブランカの諫言を受け、光太郎は素直に口を閉じた。
山の王者が彼らのすぐ傍らを通り過ぎる。
その間、パーティーを張り詰めた空気が包んでいた。
誰しもが、『気付くな』『早く行ってしまえ』と思っていた。
やがて、山の王者が通り過ぎると、一同は安堵のため息を、一斉に漏らした。
それが拙かった。
ピタリ。
山の王者の動きが止まった。
通り過ぎたとはいえ、まだ近い。そこで5人もの人間がため息を吐いのだ。野生の獣が気付かないはずがない。
モンスターがくるりとパーティーの方へ向きを変えるや否や、
「みんな、散れぇぇぇぇ!」
カルメロの号令で、パーティーは蜘蛛の子を散らすように茂みを飛び出した。
「え? え?」
突然のことで行動が遅れた光太郎を、カルメロが抱きかかえて走る。
パーティーの隠れていた茂みに向かって、弾丸のような速度で山の王者が飛び込んできた。驚くべきは、着地の衝撃で地面が抉れ、クレーターになったことだ。
「バラバラに逃げたところで、あの速さだ。誰かがとっ捕まって餌食になっちまうのは避けられねぇ……か。チィッ!こうなりゃ仕方ねぇ。おい、みんな!こうなりゃ自棄だ。全員で取り囲んで、袋叩きにしてやろうぜ!」
腹をくくったカルメロの言葉で、残りの全員も覚悟を決めたようだ。
「そうですね。いくらAランクのモンスターとはいえ、我々ならばなんとかなるでしょう」
「うんうん。出来れば無駄な戦闘はしたくなかったけど、わたし達を敵に回したのが運の尽きなんだよ」
ブルーノが呪文の詠唱を始め、ベルタが弓に矢をつがえて弦を引いたのを見てブランカはため息をつき、呆れたように言った。
「仕方ない。こうなったらきっちりと返り討ちにして、死体をギルドで換金するとしようかねぇ」
かくして火蓋は切られた。
「おらぁっ!」
カルメロの気合一閃。
しかしカルメロの剣は硬い体毛に阻まれ、ほとんど傷を与えられなかった。
カルメロを睨みつけ、右腕を彼に叩きつける大猿。だが、既のところでカルメロは回避。
大猿が空振った隙を狙って、ベルタが矢を連射する。
だが、これも鋼のような体毛には刺さらず、敢え無く弾かれていった。
山の王者はとにかく力が強く、さらに素早い。その上、腕が四本もある。強敵だ。
「炎よ来たれ!焼き払え!」
ブルーノの魔法が発動し、炎の球が山の王者めがけて飛んでいく。凄まじい速さで。
「やった! 当たった!」
離れた場所に避難している光太郎の目には、山の王者は火炎球の餌食になるものと映った。
しかし信じられないことに、それを上回る───残像すら映す───速度で、山の王者は避けてみせた。
「これはこれは……参りましたね。当たりさえすれば、いかに硬い体毛でも焼けてなくなるのですが……。ブランカ、頼みます!」
ブルーノの要請を聞き、ブランカは頷いた。詳細は聞かずとも理解できるのは、日頃のチームワークの賜物だろう。
「あんたら、あと少しだけ踏ん張って時間を稼いでおくれ!」
メンバー全員に向かってそう言い残すと、ブランカは道具袋を一つ持ち、単身で森の奥へ消えていった。
「ぐあぁっ!」
ブランカが離脱した直後、カルメロの悲鳴が上がった。
山の王者の肘鉄砲が、カルメロの胸部を強かに打ち付けたのだ。
鉄製の胸当てをしてはいたが、山の王者の膂力はそれを簡単にひしゃげさせるほど勝っていた。
「……っの野郎!」
カルメロは脂汗を滲ませながら起き上がり、再びモンスターに立ち向かっていった。
ダメージが無いはずはない。しかし、この正念場で呑気にオチているわけにいかないと、気合いで身体を動かしているのだ。
「光よ来たれ。かの者に癒やしを与え給え!」
ブルーノの詠唱に続き、カルメロの身体を緑色の光が包み込んだ。
(あれって回復魔法?)
光太郎の予想通り、カルメロの表情から苦悶の色が瞬く間に消え去り、代わりに力強さが広がった。
「ありがとうよ、ブルーノ!」
活気を取り戻したカルメロの剣は幾筋もの光の軌道を作り、山の王者に対して攻撃を再開した。
「この猿野郎!ついさっきは不意を突かれちまったが、もう喰らわねぇぜ!」
山の王者とまともに正面切って戦うわけではなく、カルメロは森の木々をうまく障害物として使い、逃げながら隙きをついて斬りかかるヒット・アンド・アウェイの戦法に切り替えた。
「私も負けてられないんだよ!」
ベルタもカルメロ同様、その小柄な体躯をはしっこく動かし、一箇所にとどまらず射撃を続ける。
光太郎はその激戦の様子を、手に汗握って眺めていた。
(これがモンスターとの戦闘。これが……異世界。……ん、あれは?)
視界の端───樹木と樹木の間から、チカチカと小さな光が瞬いていた。
戦闘中の他のメンバーもそれに気付き、お互い頷きあった。
「チビ助、目を狙え!」
「言われなくてもわかってるんだよ!」
ベルタの矢が、流星のような速度で大猿の右目を射抜いた。
「ぐおおおおおおおおおおおんっ!」
痛みから、大猿が咆哮する。
どんな生物も、眼球は弱点の一つだ。パーティーのメンバーが、それを解かっていたにも関わら今までず狙わなかったのは、深手を負った獣は凶暴になり、手がつけられなくなるからだ。
しかし今はそれを狙った。怒りを引き出すためだ。
「よし、みんな行くぜ。サルが痛みで錯乱してる間に、距離を稼ぐぞ」
カルメロの指示で各自ジグザグに走りつつ、パーティーは全員同じ方向へ走った。光が瞬く方へ。
光太郎も走った。全速力で。
「ごあっ!ごぁあっ‼︎」
後方からは、八つ当たり気味に森の木々をなぎ倒しながら追ってくる、山の王者の気配が迫る。
息を切らしながらしばらく走り続けたが、
「ここだ!止まれ!」
やがてカルメロの号令で全員が止まった。
「お嬢ちゃん、ここで隠れて待ってろ。いいか、絶対にあの辺りには近づくなよ」
カルメロが指差した辺りには、木の葉が散乱している地面に赤い手巾が四つ置かれていた。赤い手巾を角として、正四角形をつくるような配置だ。
それを視認して頷いたあと、光太郎は言いつけられた繁みに身を潜めた。
パーティーメンバーも急いで離れた場所にいき、モンスターの迎撃態勢を整えた。
とはいえ、仁王立ちして待ち構えているのはカルメロだけだ。自ら光太郎に近づくなと言った辺りから、少し離れた場所に。
ブルーノもベルタも、光太郎同様、繁みに隠れている。
「ぐおおおおおおおおおおお!」
大型獣の野太い唸り声が森に響く。
「来やがったな、化け猿め。かかってきやがれ」
不敵に笑い、カルメロが剣を構える。
「ぐきゃきゃきゃきゃきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
口からよだれを振り散らかしながら、山の王者はカルメロに飛びかかる。
「あらよっと」
来るとわかっていれば、いくら素早い大猿の動きとはいえども、躱すのは容易い。
横っ飛びに転がったカルメロ。
カルメロが直前まで立っていた位置に、山の王者は着地した。
「いまだ!落とし込めー!」
カルメロの号令に続き、ブルーノが繁みからでてきて呪文を詠唱する。
「風よ来たれ。鉄槌を下せ!」
山の王者に向けたブルーノの杖から、空間を歪ませるほどの衝撃波が放たれる。
見えないものは、いくら動体視力の優れた獣でも避けること能わず。
大猿は衝撃波に吹き飛ばされ、背中から倒れ込む───赤い手巾が作る四角形の内側へ。
そして───
「ぐきゃっ⁉︎」
倒れ込んだ先の地面はもろくも崩れ去り、大猿の身体はそのまま落ちていった。
「こ……これは?」
「これは罠さ。落とし穴だよ」
その光景を見て呆然と呟いた光太郎に、いつの間にか彼の隣に立っていたブランカが答えた。
彼女は顎をくいっと動かして光太郎に付いてくるよう促し、落とし穴の方へ歩いていった。
「いい仕事したな、ブランカ」
カルメロがブランカにねぎらいの言葉をかけた。
「ふん。仕事だからね。きっちりやるさ」
それにブランカはニヤリとドヤ顔で答えた。
「これ、結構深いですね。どうやってこの短時間で、こんな深さを掘ることが出来たんですか?」
落とし穴の縁から中を覗き込み、光太郎は疑問を口にした。
「これを使ったのさ」
ブランカは、道具袋から一枚のスクロール紙を取り出して答えた。
「ただの……紙ですよね? これで掘ったんですか?」
「そんわけないだろ。これは魔法紙だよ。これ一枚につき、一つ魔法が封じられてるんだ。って、常識だろ。そんなことも知らないのかい?」
「はぁ……すみません」
異世界の常識は光太郎にとっての非常識なのだが、そこを指摘して諍いを起こすのも面倒なので、理不尽を感じつつも謝った。
「まぁまぁ、ブランカ。お嬢さん───ココさんは虚空の子です。知らなくて当然ですよ。ココさん、ブランカが持っている魔法紙には、土を移動させる魔法が封じられてあったのです。その効果で、短時間でもこんな深い穴を掘ることが出来たのです」
「なるほど、すごく便利なんですね」
「ええ。魔法紙も、封印されている魔法の種類によって、値段はピンからキリまでありますけれどね」
「そんなことより、コイツ、早いとこ始末したほうがいいと思うんだよ?」
最後に合流したベルタが、提案した。
「確かにそうだな。運良く───コイツにとっては運悪く、落下の衝撃で頭を打ったみたいで伸びているしな。いまがチャンスだ。というわけでブルーノ、やってくれ」
「わかりました。───炎よ来れ。焼き払え!」
杖から熱気を撒き散らしながら、炎の弾丸がいくつも穴の中へと落ちていく。
パチパチと煙が上がり、毛と肉が焼ける、焦げ臭い匂いが立ち込める。
「それじゃ、仕上げなんだよ」
そういってベルタは雨のように矢を降らせる。
その度、「ぐぁ」とか「ききぃっ」とか、大猿の見た目にはそぐわない、か細い悲鳴が上がる。
「んじゃまぁ、トドメといくか」
剣の柄にロープをくくりつけたカルメロは、その剣を勢いよく投擲した。
ドス、という鈍い音だけがした。
「……どうやら、くたばったみたいだね」
目を細め、穴の中を確認したブランカが言った。
「てゆうか、こんな穴っぽこの下に落ちたんじゃ、死体を引き上げるのも手間だよ。どうするんだい?」
「仕方ねぇ。とりあえずここに、軽く土をかぶせて隠しとくか。そんで町のギルドに報告したあと、また改めて回収に来るしかねぇな」
ロープを引っ張って剣を引き揚げながら、カルメロは答えた。
「それがいいでしょう。まもなく日没です。早く野営の準備もしなければなりませんし、なによりココさんを早く送り届けるべきです」
「何でもいいんだよ〜。それよりもうお腹ペッコペコ。早くご飯にしようよ〜」
どうやら大枠の方針が決まったようで、各自野営に向けて準備をしようと落とし穴から背を向けた───瞬間。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!」
死んだと思った山の王者が、穴から飛び出してきたのだ。
全身焼き爛れて矢がハリネズミのように刺さり、首筋からは大量の血が流れている。
それでもなお、唯一残った左目からは、生き残ってみせる、という執念が宿っていた。
着地したすぐ前方には、呆然と立ち尽くす光太郎がいた。
「……え?」
ドン。
薙ぎ払った大猿の腕が、光太郎を吹き飛ばした。
「ココさん!」
「このくたばり損ないが!」
ブルーノは回復の光をまとった杖をココに向け、カルメロは山の王者めがけて走った。
「うらぁ!」
裂帛の気合とともに横一文字に振るわれた剣筋は、丸坊主になった首筋にチーズをカットするように容易く入り込み、生まれながら兄弟のように育ってきた山の王者の首と胴体を、永遠に別離させた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……う?」
今日何度目も覚醒させられた重いまぶたの抗議を感じながら、光太郎は目を覚ました。
「あー、良かった!ココちゃん、目を覚ましたんだよ!」
「えっと、ぼ……私は、気絶していたんですか?」
「おう、山猿にふっ飛ばされてな。だがブルーノが回復魔法をかけたしな。なんともなさそうで何よりだぜ」
「そうなんですか。ブルーノさん、ありがとうございます」
「いえ、当然のことです。お気になさらず。私の魔法のおかげというよりも、貴女の鎧のおかげというところでしょうか。実際には貴女にほとんど傷は無く、殴打の衝撃で脳震盪を起こしていただけのようなので」
「本当にその鎧、凄いんだよ! あの山の王者の一撃でもまったく凹みがないんだよ!」
「まったくだ。見てくれよ、俺の胸当てなんか、ちびベルタの胸みたいに大きく抉れてやがる」
「ちょっと、それはひどいんだよ! そんなに抉れてないもん! じゃなくて、少しはあるんだよ! っていうか見たこと無いくせに!」
言われて光太郎は気付いたが、確かに光太郎が特注で造った最先端金属製の鎧は、多少かすり傷があるくらいで大きな凹みは無い。
(さすが最先端のマテリアル!僕の血と汗とお父さんのコネの結晶!)
しかし、同時に思った。いくら耐久性が既存の金属より高いとはいえ、所詮は鎧の厚さだ。果たして本当に、あの化け物の一撃でも耐えられるほどの耐久力を持っているのだろうか、と。
(ま、いいか。とりあえずは無事なんだし)
「その鎧、どこで手に入れたの? 私、そんなの見たこと無いんだよ。あ、でも当たり前かぁ。異世界の鎧だもんね。私たちのとは比べ物にならないのも、当然なんだよ」
ベルタがしきりに褒めそやし、カルメロとブルーノは光太郎の無事に安堵している。
そして、そんな光太郎たちを少し離れたところから見つめるブランカの瞳は、鋭い光を帯びていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
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