私の名はココ
平明神です。
最高に面白い小説を皆様に読んでもらいたいと、いま出せる全力で作った作品です。どうか応援をお願いいたします。
面白い、続きが読みたいと思われた方は当ページの下部にある部分から評価をつけて頂ければ幸いです。
※ いわゆる「なろう系」の作りではありませんので、地の文を読むのが面倒な方、一人称の文しか読まないという方にはお勧めしません。
カルメロ達の住んでいるこの世界は、大きく三つの領域に分かれている。
天空の世界、大地の世界、深海の世界だ。これらをまとめて物質界という。
それぞれの世界には、"統括者"と呼ばれる人知を超えた存在がおり、彼らが統治しているらしい。
光太郎がいるこの森は、大地の世界にある。
大地の世界には、5つの大陸と無数の島がある。
大陸には帝国があり、王国や公国があり、街があり、村がある。
統括者の元、帝王が大陸を支配し、その下でそれぞれの王や貴族が国や領地を束ね、その指揮下で長が街や村を維持していく。
それがこの大地の世界の基本的な仕組みだ。
組織の概要は、光太郎のいた地球と似ているので、大体は理解できた。
ただし、大きく違うのが魔法の存在だ。
先刻、剣犬を丸焼きにした炎。アレは魔法だと説明された。
魔法は、生命体であれば誰でも使える。それを聞いたとき、光太郎の期待はいやが上にも膨らんだ。
彼の頭の中では、先ほどの炎の魔法や、稲妻を杖から放つ自分の姿がちらついていた。
前置きがあったが、しかしこの魔法という概念が、光太郎の境遇を説明するのに必要だった。
本来、ムンド・マテリアルには魔法が存在しなかった。だが古の時代、統括者がこのムンド・マテリアルで魔法を使えるようにするため、別の世界からムンド・マテリアルと別の世界を繋げた。
その繋げた世界間の”孔”から、異世界からごく稀に人や物が流れつくのだ。
それが人だった場合、”虚空の子”と呼ばれる。ちなみに理由は不明だが、異世界から来る者は、まず間違いなく少年や少女だという。だから虚空の子と呼ばれるのだ、とブルーノは説明した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
現在、光太郎とカルメロ、ブルーノ、ベルタの四人は焚き火を囲みながら食事をしている。
メインディッシュは剣犬の丸焼きだ。
犬を食べるということに内心嫌悪感をいだきつつも、郷に入りては郷に従えの精神で食べてみると、意外とイケることに驚嘆しつつ、ブルーノの話を聞いていた。
ブルーノの説明は、とてもわかり易い。
光太郎が異世界人だということを踏まえ、理解力に合わせて噛み砕いて説明するからだ。
食事の前には自己紹介をされた。
カルメロは25歳。カテゴリは剣士。職業は専門冒険者。
ブルーノは27歳。カテゴリは上級魔法師。職業は魔法の教師。
ベルタは15歳。カテゴリは弓士。職業は狩人。
三人は同じチームで活動しているという。
「チームを組んで、何をしているんですか?」
「ギルドからの依頼をこなしているんですよ。今日もその活動中でした」
光太郎の疑問に答えたのは、やはりブルーノだった。職業が教師だけあって説明が巧い。このチームの中でのスポークスマンになっているのだろう。
「ギルドってなんですか?」
「ギルドとは互助組織のようなものですね。仕組みとしては、まず領主や衛兵隊などでは取り扱ってくれないような問題の解決を、人々がギルドに依頼します。ギルドは依頼された仕事を、登録されている様々なメンバーに紹介します。メンバーがその内容を完遂すれば、依頼は完了となります。メンバーである我々は普段、それぞれに職を持って、それに従事しています。この大地の世界では、ある一定の年齢に達して試験さえ受ければ、誰でもメンバーに登録出来ますので、やる気がある人は、ギルドメンバーになります」
日本でも登録制の短期バイトを紹介する人材派遣会社があるが、それに近いのかもしれないと、光太郎なりに理解した。
「それでお嬢ちゃん、これからどうするんだ?」
肉を噛み千切りながらカルメロが訊いてきた。
「どうする……どうしたらいいんでしょう?」
漠然とした質問ながら、身の振り方を聞かれているのは解った。しかし、情報が少なすぎてどうしたら良いのかがわからない。
「まぁまぁ、カルメロ。このお嬢さんも困惑しています。まず我々で近くの町まで送り届けて差し上げるのが良いのではないでしょうか?」
ブルーノの提案に、勢いよく頷くカルメロ。
「おう。実は俺もそう言おうと思ってたんだよ。なんせ虚空の子だからな。町の長にでも事情を説明して、保護してもらわなけりゃな」
(おお、いい人たちだ)
見ず知らずの光太郎の心配をして面倒を見てくれるという。光太郎は感動した。
しかし二人の男の隣では、ベルタが苦笑している。
「えっと、ベルタさん? どうしたんですか?」
「いや、この二人がこんなに他人に親切にするなんて、めったに無いんだよね。基本、自分のことは自分でしないさいってタイプだから。キミが可愛いから、よっぽど気に入られたいみたい」
「ば、バカ! このチビ助! んなこたぁ無ぇよ!」
「そ、そうです。私はあくまでも、人として当然のことを言ったまでです。私は聖職者です。し、下心などあるはずがありません」
光太郎は先程から気になりつつも訂正するタイミングを逃していたが、この三人は光太郎のことを女性だと思いこんでいるようだ。
さもありなん。彼は姫騎士アニエラの衣装で絶賛女装中。しかも我がことながら、そこらの美少女顔負けの美貌を誇るのだ。初見で見破るのは難しい。
「そういえばお嬢ちゃん、名前はなんてぇんだ?」
「えっと……」
わずかに逡巡。その後、花が咲くような笑顔で答えた。
「ぼ……私の名前は、ココといいます。助けていただいて、改めてお礼を言います」
光太郎は決めた。ひとまず女の子と誤解させたままにしておこう、と。
正体を明かせば、この二人は掌を返したように不親切になる可能性がある。
それは光太郎にとって歓迎できない事態だ。右も左も分からない異世界で、寄る辺なき身。ひとまず頼ることが出来そうな人物を確保することが重要なのだ。
それに、『私は女の子です』とは言っていない。あくまで自分は名を偽っただけで、性別を誤解したのは相手なのだ。
忸怩たる思いと少々の良心の呵責を、自己正当化で乗り切った。
「ココさんですか。可憐な響きですね」
「ありがとうございます。あの、もし良かったら、先ほどの提案をお受けしても良いですか?」
「おお、任せな。俺たちがバッチリ町まで送ってやるぜ」
力こぶを作るようなポーズで、カルメロが答えた。
「ま、仕方ないんだよね。じゃあ、ブランカと合流したら町に戻ろうか」
やれやれとため息を吐きつつ、ベルタも合意した。
「ブランカ? 誰ですか?」
新しい人物名に、光太郎はベルタに尋ねた。
「あー。ウチらのチームのメンバーで、実はこの依頼も一緒にやってるんだよ。それで先行して、トラップとか危ない道はないかとか、調べてもらいに行ってるんだよ」
「おお、噂をすれば……」
カルメロが振り向いた先には、赤毛の女性が立っていた。
「……誰さ、その娘?」
彼女は、鋭い眼差しで光太郎を見つめていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「面白やん?」とか「あかん、続きが気になるわ」と思われたら、
①『ブックマーク』
②広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】
していただけますと幸いです。
皆様の応援が作者のモチベーション、励ましとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!