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東方紅氷譚 〜 Absolute or Phoenix.(旧)  作者: クルセイダー
正体不明の氷変化
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第3話「紅き刃」

私は氷華を倒したはずだった。しかし、いつの間にか復活していたようで、氷華はどこからともなく氷の塊を大量に降らせ、私と諏訪子に痛手を負わせた。


私は暫く意識を失っていた。ふと目を開けると、先程私達がいた空間とは別のもっと狭い洞穴のような場所にいた。そして目の前に、金髪で七色の翼を持った少女がつぶらな瞳でこちらを見つめていた。


「あ、生きてたのね!」


まあ、あんな所で寝っ転がっていたら死んでてもおかしくは無いと思うが、私は生きていた。そして何故だろう、死にたいという気持ちが段々と遠のいているような気がした。

しかし、この少女が私をここまで運んで来たのか?いくら翼があるとはいえ、苦労しただろう。


妹紅「……ああ。お前が私を運んでくれたのか?」

「そうだけど、何で?」

妹紅「いや、別に。気になっただけだ。」

「ふーん。……もしかして私の力を舐めてる?」


少女の表情が一瞬狂気に満ちていた。私は少し青ざめたが、動じていないフリで少女を説得した。


妹紅「いやどうしてそうなる……、決してそういうことじゃない。……ただ、一つ聞きたい。」

「何?」

妹紅「お前は、何の妖怪なんだ?」

「私?吸血鬼よー。」


吸血鬼。となると、例の館のお嬢さんの身内か……。


妹紅「なるほどな。吸血鬼の力なら、私をここまで運んで来るのもさして苦労しないわけだ。」

「そういうこと。」

妹紅「……っとそうだ、私の名前は藤原妹紅。お前は?」

「フランドール・スカーレット。皆からはフランって呼ばれているわ。」

妹紅「そうか、よろしくフラン。」

フランドール「ええ、よろしくね、妹紅。」


スカーレット。なるほど、噂には聞いていたが、館のお嬢さんの妹とはこいつの事か。確か、何でも破壊するんだったかな。

……っとそうだ、フランにも聞かないと。


妹紅「フラン、お前もここに迷い込んだのか?」

フランドール「そうなの。お部屋でのんびりしていたはずなのに、気がついたらここに。」

妹紅「私もそうだ。突然ここに来てしまった。そしてフラン。能力は使えるのか?」

フランドール「それがねえ、邪魔な氷を破壊しようとしたんだけど、破壊出来なかったの。」


例外は無しか。……いや、諏訪子が多少例外か。ここに来てすぐは能力を使えていたようだからな。氷華は流石は神と言っていたから、恐らくは神やそれに匹敵する者は能力が一時的に使えるのだろう。


妹紅「やはりか……。……私もだ。本来は不老不死なのだが、能力が使えない影響で死ぬ人間となった。」

フランドール「人間が不老不死に?へえ、そんな事も出来るんだ。」

妹紅「まあな。だが、非常に退屈だ。でも……」

フランドール「でも?」

妹紅「……いや、何でもない。」


確かに退屈だ。だが、最近は異変で暇を潰せている。それに今、明らかに感じた。「死にたくない」と。理由なんて分からない。だが、確かに感じた。


フランドール「ふーん、まあいいや。ねえ、そろそろ移動しよ?」

妹紅「……ああ、そうだな。」


私は立ち、フランと共に歩き出した。




道中にて。

妹紅「そうだ、さっきの話の続きだが、フランは邪魔な氷を破壊出来なかったと言ってたよな?」

フランドール「ええ。でも、最終的には破壊したわ。」

妹紅「へえ、どうやったんだ?」

フラン「それはね……」


その時、フランの足が止まった。私は察した。フランは私にその答えを実践しようと思ってるのだと。フランの眼は再び狂気に満ちる。私はすぐに止めようとしたが、遅かった。


フランドール「こういう事よ!」


ズバァン!


ドゴォォン!



私は……無事だった。振り返ると、フランの前に氷の山が積まれている。


フランドール「今丁度何かの気配を感じたの。そしたら、動く氷だった。」

妹紅「動く……氷……?」


私は耳を疑ったが、よく考えてみれば、横の氷の壁には傷こそあれど、フランの背丈程はある山を積める程の傷は付いていない。つまりは、そういう事なのだろう。


フランドール「姿を見る前に壊しちゃったから、どんなのだったかは覚えて無いけどね。」

妹紅「動く氷か……、恐らく奴の……」

フランドール「奴?」

妹紅「ここを創り上げた奴だ。こんな氷の世界を創れるぐらいだから、動く氷なんて容易なのだろう。」

フランドール「ふーん。」

妹紅「しかし、凄い威力だな。その剣……なのか?」


フランの右手に握られていたのは、剣とも杖とも言い難い、奇妙な形をした黒い物だった。


フランドール「剣よ。こんな形だけど。」

妹紅「そ、そうなのか。」

フランドール「これはね、レーヴァテインって言うの。能力は封じられたけど、これは問題無く振るえる。」

妹紅「……そう言えば、私も不老不死こそ無くなったが、炎は普通に扱えた。纏えはしないが。今纏ったら死ぬからな。」

フランドール「もしかしたら、『申告した能力だけ』封印されるのかしらねえ。」


幻想郷では、能力は申告制となっている。そこで申告した能力が封印されていると言うわけだ。私は「老いる事も死ぬ事も無い程度の能力」と申告した。炎の能力に関しては申告はしていない。となると、フランと諏訪子も申告した能力だけが封印されているという事か。


妹紅「そうかもな。だとしたら、残っている能力を存分に振るわないとな。」

フランドール「ええ、そうね。どんな奴が来たとしても、返り討ちにしてやりましょう。」

妹紅「ああ。」


私は快く返事をした。

……諏訪子、無事で居てくれ……。



続く

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