終章・T「永遠に続け、不死の絆」
ザッパアアアアン!!
なっ……!?
突如、この空間を大波が襲った。
その水で、私の炎はあっという間に鎮火された。
私は驚いたが、既に生きる気力を失っており、そのまま地に伏した。
すると、大波を起こした主が、私の元へとやってきた。
諏訪子「……妹紅の……馬鹿っ……!」
諏訪子は、私の頭を軽く小突いた。
私は返事など、出来なかった。
諏訪子「何で……何で……私達の命よりも娯楽を優先するの……!?」
……何も、言えなかった。
諏訪子「……あの頼れる妹紅は何処に行ったの……!?……あの優しい妹紅は、何処に行ったの……!?」
……ひたすら、後悔が募るばかりだった。
……いっそこのまま殺してくれ……なんて、届く筈も無い願いを込めた。
諏訪子「……起きてよ。」
……私の体には、力が入らなかった。
諏訪子「……起きてよ!」
……私は返事すら出来なかった。
諏訪子「……まさか、このまま永遠にここで倒れてるなんて言わないでしょうね……!」
…………
さっきまでの私なら、そうしていた。
……だが。
妹紅「…………っ」
……体が動いた。
……体を起こせた。
……私は、立てた。
諏訪子「……妹紅……!」
……詫びよう、全力で。
……それで済むとは到底思っていない。
……私はただ、私の心の中の後悔を、今ここで吐き出したかった。
妹紅「…………諏訪子。」
私は諏訪子を見る。そして、私は目を瞑る。
妹紅「……藍。……フラン。……狸の旦那。……ぬえ。……こいし。……太鼓の付喪神。……秘神。……魔理沙。……ヘカーティア。」
私は、ゆっくりと目を開ける。
そこには、後悔と謝罪の涙が溢れていた。
妹紅「……済まなかった……。」
……欲。
……それは常に人を取り巻く。
……そして人は時に、欲を抑えきれずに周りを顧みなくなってしまう。
……残るのは、後悔のみ。
……私はこの1000年以上の中を生きて、初めて、欲という物の怖さを知った。
……同時に、私はやはり「人」なんだなと。
諏訪子「……その言葉が聞けて、嬉しいよ。…………大丈夫だよ。」
諏訪子も、いっぱいの涙を浮かべ、軽く笑ってみせる。
妹紅「…………ありがとう。」
……私はまた一つ、「生きる事」の良さを知った。
……気が付けば、私の周りに仲間達がいた。
藍「……良かったよ、元に戻って。」
フランドール「……壊さずに済んだわね。まあ、良かったわ。」
マミゾウ「……そんな辛気臭い顔をするな。……儂はもうお前さんを赦している。」
ぬえ「……裏切ったかと思ったけど、そうじゃ無いみたいだね。とにかく、我に返って良かったよ。」
こいし「……私は通りすがりなんだけど……まあ、おかえり?」
雷鼓「……何とかなったわね。」
隠岐奈「……良くぞ戻って来てくれた。私と雷鼓とはあまり面識が無いだろうが、逆に言えば、そういう者からもお前は心配されているという事だ。」
魔理沙「……なんか、凄く雰囲気が重いな。……まあなんだ、正気に戻って良かったぜ。」
ヘカーティア「全く……苦労させるんだから……。ご覧の通り、皆はもう貴方を赦している。だから、安心して、戻って来なさい。」
……皆。
妹紅「本当に、ありがとう。」
詫び切れるはずも無い。
あれだけ、皆を傷付けたのだから。
だが、そんな私を皆は赦してくれた。
私は、皆が……大好きだ。
氷華「取り込み中済まない。幻想郷への帰り道を作った。……私も、色々と済まない事をしたな。」
妹紅「良いさ。……私に比べれば全然だ。」
藍「……妹紅。もう気にする事は無いぞ。一度悔やんだのなら、その分笑え。気持ちが楽になるだろう。」
妹紅「藍……ありがとう。」
私は満面の笑みを浮かべた。
フランドール「さあ、帰りましょう。きっと皆が心配しているわ。」
藍「橙にも謝らなければ。暫く一緒に居てやれなくて済まないと。」
こいし「私ほとんど出てないー」
ぬえ「私も活躍少なかった様な気がするんだけど?ねえ、マミゾウ。」
マミゾウ「ふぉっふぉっふぉ。次の機会じゃな。」
魔理沙「私なんてお前らと会って間も無いぞ。私の出番こそもっと欲しかったぜ。」
雷鼓「まあ、そんな時もあるわよ。さて、帰ったらライブの練習をしなくちゃね。」
隠岐奈「っと、氷華よ。私は自分で帰れるから先に帰るぞ。……皆も、さようなら。」
氷華「分かった。……また、会う時が来たらその時はよろしく頼む。」
秘神は扉を開け、その中へと入って行った。
ヘカーティア「純狐とクラウンピースは何してるかしら……。あ、妹紅。それに諏訪子。……色々あったけど、何だかんだ楽しかったわ。ありがとね。」
諏訪子「うん。私も楽しかったよ。辛い事もあったけど……。」
妹紅「……悪かった。」
諏訪子「気にしないで。これも人生、でしょ?まあ、私は神様だけど。」
妹紅「……フッ。」
私は笑った。つられて諏訪子とヘカーティアも笑った。
氷華「さて、そろそろ転送するぞ。」
妹紅「……待った。」
氷華「え?」
妹紅「……氷華。」
私は氷華の手を取り、握手する。
妹紅「お前にも、守る者は居るのか?」
氷華「あ、ああ。私の唯一無二の神が居る。」
妹紅「神か。私と一緒だな。」
私は諏訪子の方を見て微笑む。
諏訪子は笑顔で返す。
妹紅「その神、全力で守ってやれよ。」
氷華「……ああ!」
この「不滅の繋がり」。
これを信じて私はこの先を生きる。
妹紅「皆、済まないな、待たせてしまった。じゃあ氷華、改めて頼む。」
氷華「分かった。……転送!」
氷華の掛け声と同時に、周りの景色が変わる。
……恐らく、今回の経験が無ければ、私はまた人を傷付けていたかもしれない。
だが、私は欲というものの恐ろしさを身に染みる程味わった。
私はもう、欲に踊らされない。
ともかく、今回の異変は特別だった。
ありがとう、氷華。
……いつかお前と、共に戦ってみたいよ。
……そして、生きるという事に退屈を感じなくなった。
……今までの私なら、異変が終わったらすぐに気が抜けて、死にたがっていただろう。
だが、そんな私はもういない。
今の私は、全力で生きたいと思っている。
それが、人間というものだ。
少しして、私は迷いの竹林へと戻った。
なるほど、皆それぞれが氷の世界へ入ったところに戻されたのか。
……しかし、疲れたな……
寝るか……
「あら、妹紅。戻ってきたのね。」
……どうやら、そんな暇も無いようだ。
仕方ないな、付き合ってやるか。
妹紅「何だ、また殺されたいのか。今の私は気分が良いからな、千回程殺してやるよ!」
なあ、輝夜!!
Next Phantasm……
TRUE END