第2話「霰の滝」
藤原妹紅vs或金氷華
私は先手を切って、氷華の左腕辺りへ一撃を加えた。その後、間髪入れずに近接攻撃を3,4発程与え、一旦退がると同時に炎弾を放った。
すると、氷華は即座に私に肉薄し、その大剣を振りかざした。
私は咄嗟に斬撃を避け、更に5,6発程蹴りを入れた。
妹紅「手応えが無いな。どうした?手加減は無用だ。」
そう言う私の声に、氷華は嘲笑うように返した。
氷華「おっと、良いのか?そうしたらお前はあっという間に死ぬぞ?」
妹紅「何だと?……っ!」
私は思わず炎を纏って突撃しようとしたが、それこそ死を招く事だと理解し、思い留まった。
妹紅「チッ…不老不死じゃない事がここまで不便だとはな…。これじゃ力を出し切れない…。」
私は念願の死ぬ事が出来る普通の人間になれたのに、今は逆にそれが枷となって炎を纏う事が出来ない。
氷華「諦めるか?」
妹紅「……誰がいつそう言った?」
かと言って、ここで引き退がる訳にもいかない。
妹紅「炎を纏わずとも、お前を倒してやるよ!」
私は手に妖力を集中させ、特大の炎の玉を作り出した。
氷華「……なるほどねえ。」
氷華は何かに頷いたようだが、私の気には留めなかった。
妹紅「はああぁぁぁ!」
私は炎の玉を氷華目掛けて投げつけた。
氷華「そんな素直な軌道の炎の玉に当たるはずがないだろう?」
氷華は避けようとした。だが、私はそこで逃す程馬鹿ではない。
妹紅「なら、無理矢理当てるまでだ。」
私は、氷華の周りに炎の渦を発生させた。
氷華「これで捕まえたと?甘いな、この程度じゃ…」
妹紅「この程度な訳無いだろ?」
私は複数の札を渦目掛けて放ち、引火させた。
氷華「なっ……!?」
妹紅「……無差別発火の符。」
札はたちまち連鎖爆発を起こし、氷華を包み込んだ。そして、そこへ特大の炎の玉が直撃した。
妹紅「ふぅ……ぐっ」
痛み。熱。普通の人間になってそれらが今までよりもとても鮮明に感じた。
先程の戦いを端で見ていた諏訪子が走ってこちらへと来た。
諏訪子「大丈夫?凄い戦いだったねえ。」
妹紅「……ああ。やはり不便だ、この身体は。満足に戦えない。」
諏訪子「私も坤を創造する能力が使えなくなって、ほとんど何も出来なくなっちゃった。私の祟り神達が私に呼応しなくなってねえ。戦うとしても、この鉄の輪で何とかするしかない。」
諏訪子は何処からか取り出した鉄の輪を握りしめてそう言った。
妹紅「そうか……。」
私がそう呟いた時だった。
ズズ……ドォォン……
妹紅「!? な、何だ!?」
諏訪子「……もしかして、まだ氷華が……!」
「御名答。」
ゴゴゴゴゴ……!
途端、地鳴りが大きくなり、頭上から特大の氷が落ちて来た。
妹紅「なっ!?」
諏訪子「危ないっ!」
諏訪子が鉄の輪で氷を破壊した。
妹紅「……その輪、かなりの威力だな……。」
諏訪子「まあね。でも、これだけじゃ済まないみたい……。」
上を向くと、いずれもかなりの大きさの氷が雨の様に降ってくるのが見えた。
妹紅「何だと!?」
諏訪子「流石にこの量はどうにも出来ない。逃げるよ!」
妹紅「あ、ああ!」
「……霰の滝。」
声が響く。刹那、氷の雨が地面へと達した。
妹紅「ぐあっ!?」
諏訪子「ひゃあ!?」
私達は逃げ切れ無かった。そのまま地面に伏した。
意識が朦朧としている時、再び声が響く。
「残念だったな。良い攻撃だったが、私には効かない。何故なら私は……」
そこで私は意識を失った。
続く