終章・N「終結」
ドゴオオオオオオオン!!
妹紅「ぐはっ!?」
突然、上から球状の物体がのしかかって来た。
私は地に叩きつけられ、そのまま地に伏した。
炎は一瞬にして、消火した。
何だ……!?一体何が……!
「……間に合ったわね。」
……この声は……!
「ここに来る最中によーく聞こえたわよ。貴方の制止を求む皆の声が。」
私は僅かに顔を上げた。
……金髪のヘカーティア……!
月ヘカーティア「後少し遅かったら、貴方は大切な仲間を燃やし尽くしていたでしょう。1人の神の為に。」
…………
……最もだ。
私は諏訪子の事しか頭に無かった。
諏訪子さえ助けられればそれで良いと。
……だが、私には他にも仲間がいる。
藍。フラン。狸の旦那。ぬえ。
それに、こいし、太鼓の付喪神、秘神。
……そして、ヘカーティア。
……危なかった。
ホントに、危なかった。
後少し、後少しで、私は皆の命を奪ってしまうところだった。
……私は……馬鹿だ。
足音が聞こえる。
段々と大きくなっていく。
藍「……全く。危ないじゃないか。」
フランドール「殺す気かしら?」
マミゾウ「必死の声も聞かんもんじゃから、どうしようかと思ったわい。」
ぬえ「命大事にだよ!皆のも、自分のも!」
……命。
私にとっては、使い捨てのものだ。
……だが、皆にとっては……
……たった1つのもの。
それを、私はこの手で消し去ってしまうところだった。
妹紅「……み……んな……。」
さっきの炎と叩きつけによるダメージに必死に耐えながら、私は言った。
妹紅「……す……まな……かっ……た……」
そこで、私の何度目かの命は尽きた。
ぬえ「……え?妹紅?妹紅!?」
マミゾウ「案ずるな。直に戻ってくる。」
フランドール「忘れたの?不老不死。」
ぬえ「忘れた……というか聞いたっけなあ。」
藍「……不老不死……とはいえ、自暴自棄で一途過ぎだ、妹紅は。」
……ボッ
ボォォォ……
命の炎は再び、燃え盛る。
ボォォォォォ!!
炎の中に1人、私がいた。
ぬえ「おお……こんな感じで復活するんだ……。正体見たり!」
マミゾウ「正体不明の妖怪がよう言うわい。……なあ、妹紅殿。」
妹紅「……何だ。」
マミゾウ「確かにお前さんは儂等の命を脅かした。だが、目は覚めたようじゃな。もう儂等はお前さんを止めたりはせんよ。……また暴走でもしない限り、な。」
妹紅「あ、ああ。……済まない。」
マミゾウ「謝るのはもう止せ。今はこうして皆生きている。それで良いじゃないか。」
妹紅「……そうだな。」
私は微笑んでみせた。
妹紅「また、旦那と一戦交えたいな。」
マミゾウ「ほう、やるかい?次はどうやって化かそうかのう。ふぉっふぉっふぉ。」
妹紅「……フッ。」
マミゾウとの会話が終わった後、藍とフランが私の元へと来た。
藍「全く……まあ、私達ももう許しているから、気にする事は無いよ。」
フランドール「……よく考えたら、貴方って不老不死だから、私が壊しても良かったのかも?」
妹紅「……そうだったのかもな。まあ、私はお前達に感謝しか無い。ありがとう。」
藍「感謝するなら地獄の女神にするんだな。お前を直接御したのだからな。」
妹紅「……でも、お前達も私の為に精一杯叫んでくれたんだろ。これに感謝せずにどうするんだよ。」
藍「……そうか。」
フランドール「ふふっ。気分が良いわね。」
私は藍とフランの元を後にし、ヘカーティアの元へと向かった。
が、その時だった。
ギィィィ……
妹紅「ん?扉?というと……。」
扉の開く音が聞こえる方向を向く。
「……おや、終わったのか?遅かったか。」
「えー!?つまんなーい」
そこには、こいしと秘神が居た。
妹紅「お、こいしじゃないか。」
こいし「あ、妹紅!もー、お楽しみとっちゃったのー!?」
妹紅「え?え?」
こいし「私ねー、このおばさんに『楽しい遊びが待ってるぞ』って言われて喜んでここに来たのよ?でも何も無いじゃない!貴方が良いとこど」
隠岐奈「うるさい。」
こいし「りぃぅ!?」
隠岐奈がこいしの口を塞ぐ。
隠岐奈「さて、教えてくれないか。何があったかを。」
妹紅「掻い摘んで話すよ。」
……氷華が実は敵じゃなかった事。
……私が危うく皆を焼き尽くすところだった事。
主にその2点に関して話した。
隠岐奈「ふむ……つまり、お前は勝手に思い上がって人殺しまでし掛けたと。やはり人間だな。」
妹紅「……ああ。」
隠岐奈「おっと、深刻な顔をするな。終わったのだろう?皆の顔を見る限り、もうお前は許されている。あまり気を重くするなよ。」
妹紅「……分かった。」
こいし「いーひーはーふぇーふぃーふぁーいー (いーきーがーでーきーなーいー)」
隠岐奈「っと、もう良いぞ。」
こいし「ぷはあっ!はあっ、はあっ、あー生き返った気分!」
隠岐奈「……全く、うるさい奴だ。」
隠岐奈は微笑みながらそう言った。
隠岐奈「さて、私は先に帰るぞ。」
妹紅「そうか、自分で帰れるのか。分かった。」
隠岐奈「ではな、さようなら。」
妹紅「ああ、またな。」
扉はゆっくりと閉まり、戸は消えた。
ふと、後ろを向くと、赤髪と青髪のヘカーティアが居た。
妹紅「うおっ!?……あ、ヘカーティア。さっきは……ありがとう。」
ヘカーティア「やったのは私じゃ無いけどね。まあ私っちゃ私だけど、月の私ね。」
妹紅「お、おう。」
地球ヘカーティア「太鼓の付喪神は見つかったわよ。傷だらけだけど。諏訪子も危ないし、そろそろ帰りましょうか。」
妹紅「そうだな。早くしないと。」
私は氷華の元へ急いで向かった。
氷華「……」
妹紅「氷華……そうか、お前が一番……」
氷華「……大丈夫だ。大事には至らなかったからな。」
妹紅「……済まなかったな。話を聞いてやれなくて。」
氷華「……さっきのお前を見てて、とても人間らしいなって思ったよ。私にもあんな感じで誰かを守ろうとしてみたいなって。」
妹紅「守る……そういえば、お前には守るべき神が居るって。」
氷華「ああ。私の唯一無二の神だ。」
妹紅「……しっかり、守ってやれよ。私みたいに、誰かを犠牲にし掛けずに、な。」
氷華「……ああ!」
私と氷華は、握手を交わした。
月ヘカーティア「お取り込み中失礼。そろそろ帰らないとマズいわよ。」
妹紅「っと、そうだな。氷華、頼んだぞ。」
氷華「分かった。では……」
「待ってくれーー!」
氷華が転送しようとした時、声が響いた。
その声の主は、あの魔法使いだった。
こいし「あー!魔理沙ー!」
魔理沙「ん?何だ?耳鳴りか?」
こいし「もしもし、今貴方の後ろにいるの。」
魔理沙「うおっ!?……何だお前か。ビックリさせるなって。」
こいし「へへー」
魔理沙「お、フランに藍、妹紅にぬえ、マミゾウにヘカーティアまで居るじゃないか。……ん?おいヘカーティア、お前が抱えてるのって……。」
月ヘカーティア「ええ、諏訪子よ。傷だらけだけど。」
魔理沙「大丈夫か……?それに雷鼓まで……!」
雷鼓「何とか……ね。」
魔理沙「何があったかは知らないが、とにかく早く戻ろうぜ!」
地球ヘカーティア「そうね。氷華、お願い。」
氷華「あ、ああ。改めて……転送!」
……周りの景色が変わる。
……これで帰れるのか。
……長かったな……
……でも何故だ。
何かが足りない気がする。
私は何かを分かっていない。
……恐らく。
何かは分からない。
ただ、それは非常に重要である事は何となく分かる。
……私はそれを知らない。
……何故だろう。
……それを知らない事によって、「再び誰かを傷付けてしまうんじゃないのか」って思ってしまう。
……ああ、また退屈な日々が始まる。
……また、殺し合いの日々が始まる。
……何の変哲も無い、私達の日々。
……そんな日々を送るなら……
……死んだ方がマシだ。
……私はそんな複雑な気持ちで、迷いの竹林へと着いた。
……これ以上考えても何も無いな。
……寝るか……。
「あら、帰って来たのね。」
……まあ、寝れないよな。
……仕方ない、やってやるか。
妹紅「はあ……あまり気分が乗らないが、殺されたいなら良いさ。……お前も私を……殺してくれよ!」
……でも、私達は死なない。死なないが故に殺し合う。延々と。
ああ、実に退屈だ。だが……
それもまた、良いのかもな。
……そうだろ、輝夜!
NORMAL END