第25話「疑い」
月の私が臨戦態勢に入っている……
地球の私はまだ合流してしていないようだし、何があったのかしら……
氷華「……どうした?」
ヘカーティア「ああゴメン、今別の私が戦っているみたいでさ。」
氷華「何だと?私は何もしていないが……はっ!?」
氷華は何かに驚いた。
ヘカーティア「どうしたの?」
氷華「私の大剣がいつの間にか消えている……、まさか!?」
ヘカーティア「……そういえば持ってないわね。で、何かマズい事でも?」
氷華「ああ、大いにマズい事だ。」
ヘカーティア「と言うと?」
氷華「私の裏切りに気付いた濤淵が、私の大剣を操り、藤原妹紅達に攻撃したのかもしれない。」
ヘカーティア「何ですって!?」
大剣を操った……!?
濤淵って奴の能力がますます分からなくなって来るわね。
あの水晶玉の能力は濤淵の能力の一部らしいから、能力を奪ったり膂力を封じたり出来るとして、物体を操る……?
奴はそんなに万能な能力を持っているのかしら。
ヘカーティア「ねえ氷華、濤淵の能力って何なの?」
氷華「……奴の能力は私にも良く分からない。ただ、濤淵は色々な事を平然とやってのける。お前達に見せたものだけじゃなく、誰かを操ったり、理性を崩壊させたり、挙句の果てには手を使わずに殺傷さえ出来る。」
ヘカーティア「なっ……!?」
そんな事も……!
……つくづく恐ろしいわね、濤淵は。
私でさえ、怖気付くもの。
ヘカーティア「ふう、恐ろしい話を聞かせて貰ったわ。」
氷華「お前が恐ろしいと言うとはな。まあ無理も無いか……。」
ヘカーティア「……さて、私達もそろそろ合流しましょう。貴方の事もしっかり皆に話すから安心しなさい。」
氷華「済まないな。私からも説明させて貰うが。」
ヘカーティア「それはご勝手に。さて……」
私と氷華は妹紅達の元へと行こうとしていた。
……しかし、そんな必要は無かった。
妹紅「ヘカーティア!」
ヘカーティア「あら妹紅、来てくれたのね。」
妹紅の後ろには、地球の私と吸血鬼と狐に、私が倒した狸と鵺までもが居た。
妹紅「今すぐそいつから離れろ!そいつは諏訪子と太鼓の付喪神を斬ったんだ!」
ヘカーティア「諏訪子と付喪神が……!?」
地球ヘカーティア「ええ、諏訪子は私が着いた時には酷い傷を負っていたわ。付喪神の方は、ここに来る途中で斬られて倒れているのを見つけた。2人共、月の私が看病をしているわ。」
ヘカーティア「そうなの……でも、諏訪子と付喪神を斬ったのは氷華じゃ無いわ。」
フランドール「あら、氷華を庇うのかしら?」
ヘカーティア「いいえ、そう言う訳じゃ無い。彼女は言うなればスパイなのよ。とある神様を救う為の。」
マミゾウ「とある?一体誰じゃ。」
ヘカーティア「それは知らないわ。でも、本当よ。」
皆の表情は曇っていくばかりであった。
妹紅「へえ、諏訪子を斬った奴の話を信じるのか、お前は。」
ヘカーティア「斬ったのは氷華の大剣でしょ?氷華には大剣を遠隔操作出来る力は無いわ。」
妹紅「じゃあ誰が操ったんだよ。」
ヘカーティア「濤淵……と言って分かるかしら?」
妹紅「聞いたことが無いな。」
藍「ああ、氷華が言っていた。」
ヘカーティア「そいつが氷華が救いたい神様を利用しているのよ。」
ぬえ「そいつには会った事はあるの?」
ヘカーティア「いえ、無いわ。」
妹紅「なら何故そいつが大剣を操ったって分かる?」
……食い下がって来るわね。
……諏訪子が斬られたんだものね、気持ちは分かるわ。
……でも、誤解は解かなきゃね。
ヘカーティア「……氷華が言っていたからよ。」
妹紅は呆れた様にため息を吐いた。
妹紅「はあ、そんなに氷華を庇いたいのか。」
ヘカーティア「だから庇っているんじゃ……」
妹紅「もうたくさんだ。お前を倒してでも氷華を倒してここを出る。」
地球ヘカーティア「ちょっと待ちなさ……」
妹紅「待つか!」
妹紅は地球の私の手を振り払った。
……これはもう話を聞かないわね。
……全く、一途なんだから。
ヘカーティア「……仕方ないわね。話を聞けない子には、お仕置きしなくちゃね!」
妹紅「上等だ!かかって……」
氷華「待て!」
後ろから氷華が大声で止めた。
ヘカーティア「氷華?」
氷華「……私がやる。」
ヘカーティア「え?」
妹紅「ほう、直々に出て来るか。諏訪子を斬った犯人さんよ。」
……私が言った事をまるで信じていないわね……
諏訪子が関わるとこうまで変わるのか。
ヘカーティア「氷華、ここは私に任せて……」
氷華「いや、ここは私が戦った方が良い。疑われているのは私だ。無理も無いが、誤解は誤解だ。なら、自分の手で解くまでだ。」
妹紅「誤解ねえ。私にはお前が嘘を吐いている様にしか思えない。」
氷華「まあそうなるだろうな。だが嘘では無い……と言っても無駄だろうな。なら……力づくで分からせるまでだ!」
妹紅「私達はお前を倒してここから出る!諏訪子を助ける為にな!」
……妹紅。
……諏訪子を助けたい気持ちは分かるわ。
……だけど、氷華の気持ちも……
……分かってあげて。
続く